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聞こえぬ死燕の足音

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身体は重いが、日本刀を持った時の速度は失われているわけではないから、弓長には何が起こったのかさえわからなかっただろう。


日本刀を構え直す余裕さえなかった真治は、弓長に身体を預けるようにしてぶつかった。


「ぶふっ!」


床に倒れ、背中を強打してようやく声を上げる。


そんな弓長から離れて何とか床を転がり、身体を起こして片膝を付く。


「ク、クソがっ! 一体何をしやがった!」


死にかけだと思っていた男の予想外の行動に驚いたか、弓長が慌てて起き上がる。


だが、真治にとっては、今の体当たりは想像以上に身体に負担が掛かったようで、まだ死にはしないとしても、次に同じ事が出来るかどうかはわからない。


こんなことなら、日本刀を突き付けている時に飛び込んで、一撃で貫くべきだったと後悔し始める。


「もう許さねぇ! 遊びはここまでだ! ぶっ殺して……」


と、弓長が怒りに満ちた表情を真治に向けたその時だった。


横から、弓長の脇腹に金槌が打ち付けられた。


「お兄ちゃんをいじめちゃダメなんだから!」


亜美が武器を取り出して、弓長にそれを叩き付けたのだ。


威力はほとんどないはずだが、どうやら腰骨に当たったらしく弓長は顔を歪めて亜美の方を見た。
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