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襲い来る野獣

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「亜美、もう少しだけ待ってな」


「う、うん」


きっと、何が起こったのかは亜美にはわかっていないだろう。


亜美の身長では、カウンターが邪魔をしてテーブル席は見えないのだから。


日本刀を構えたまま、残りの一人が入ったトイレの前。


男子トイレ……いや、女子トイレだ。


いつもの癖で男子トイレに入ろうとした真治だったが、こっちではないと考え直し、女子トイレのドアノブに手を掛けた。


不用心にも鍵が掛かっていないようで、ドアノブが回る。


この街では、鍵など大した意味を持たないのか、それともこちらで起こったことに気付いていて、待ち構えているのか。


呼吸を整えてドアを開けた真治は、トイレの中に飛び込むと同時に、便器に腰を下ろしている女の子に日本刀を向けた。


「え」


女の子が小さな声を上げる。


暗い店内とは違い、電気が付いている個室。


日本刀を向けた女の子は……南軍で、オークション会場で助けた女の子だった。


パンツを下げた状態で、何が起こったかわからない様子で真治を見ている。


「あ、わわわっ! お、お願い! 殺さないで! お、お金あげるから……な、なんだったらやらせてあげるから!」


混乱して、何が何だかわからずに懇願する女の子……優。


その姿を見て、真治は日本刀を優から離した。
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