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襲い来る野獣

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「……優だろな? 落ち着いて。俺だよ、覚えてないか?」


刺激しないように、落ち着かせるように、ゆっくりと語り掛けると、優は必死に思い出すように顔を顰める。


「え、えっと……光希と遊んでた人? ち、違うよね……う、うーん。わ、私を助けてくれた人に似てるけど、あの人は南軍だからこんな所にいるわけないし……」


視線をフラフラ泳がせながら、今にも泣き出しそうな表情を受かべて。


でも、言葉の中に覚えていてくれたことを知り、真治はホッと安堵の吐息を漏らした。


「恵梨香さんと吹雪さんがいないとわからないか? ほら、俺の手首は赤色だろ?」


そう言って優に手首を見せると、驚いた表情に変わり、先程まで目に溜めていた涙をポロリとこぼしたのだ。


「う、嘘……ほ、本当に少年? 真治なの?」


震える手を伸ばして、真治の頬を撫でる。


「しょ、少年だ……ずっと、ずっと会いたかった! 夢じゃないよね!」


そう言い、首に手を回してグイッと引き寄せた優。


「お、おい……お前、パンツを上げろよ……」


急に抱きしめられて、今度は真治の方が困惑していた。


「だって、だって……真治が助けてくれなかったらどうなってたか……本当にありがとう」


あの時真治は何も出来ずに見ているだけだったのだが、優がそう思ってるなら良いのだろう。
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