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襲い来る野獣

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「お兄ちゃん、もう大丈夫なの?」


「ありがとうな。亜美が頑張ってくれたおかげだよ」


駆け寄って来た亜美の頭を撫でると、真治の腕を掴んでいた優がそっと離れた。


「……そ、そんな幼女が趣味なの真治。うわぁ……ドン引き」


何を勘違いしたのか、優が顔を引きつらせて真治を見詰める。


「何言ってんだよ。この子は保護者がいなくなって、放っておけないから一緒にいるんだよ。そんな趣味はないっての」


「お兄ちゃんはね、亜美にご飯買ってくれたり、公園に連れて行ってくれたりするの。家にも帰してくれるんだよ」


二人の説明で一応納得はしたようだが、それでもまだ少し警戒した様子。


「そ、そういうことね。相変わらず真治はお人好しだよね。この街で、一人になる子供なんて珍しくないのに。やっぱり真治は変わってるね」


それが普通だとは思いたくはないが、真治が見て来たこの街では確かに普通なのかもしれなかった。


普通のことをしていると思っていたが、それ自体がこの街では普通ではないのだ。


「そ、それでさ……優に頼みごとをしても良いかな?」


「うん? 頼みごとって……もしかしてやっぱりやりたくなったとか?」


頬を赤くしてそう言った優と、慌てた様子の真治、そして何のことだかわかっていない亜美。
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