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襲い来る野獣

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随分無茶苦茶な言い分ではないか。


恐怖したと言われたとて、真治は黒井に対して殺意など湧かないわけで、戦ったとしても恐怖を味わえるとは思えないのだ。


だが、遊び感覚で殺されるというのはたまったものではない。


ここで真治が死ねば、奈央がどうなってしまうのか。


それを考えると死ぬわけにはいかなかった。


「良い目をするようになった。あの時、死神の金魚のフンだった高校生とは思えない。戦う前に聞こうか、お前の名前を」



ランスを軽く振り、その尖端を真治に突き付けた黒井が睨み付ける。


「……高山真治。ただの高校生ですよ」


日本刀をランスに向けて構えると、黒井はニヤリと口角を上げて唇をペロリと舐めた。




「俺は黒井風助。ただの会社員だ!!」




そう言うと同時に、ランスを構えて高速で黒井が迫る。


恵梨香と戦った時よりも速く、真治に死が迫る。


「くっ! 速い!」


身体を少しずらすのがやっとで、右の脇を鋭い武器の尖端が通過する。


長期戦は実力で劣る真治には不利でしかなく、一撃で仕留めるという選択肢しかない。


強引に方向転換をし、ランスを構えた黒井が再び真治に迫る。


その勢いを利用して攻撃を加えようと、首に刃を滑らせた。


すれ違っただけで首が飛ぶ。


だが、そんな考えは、南軍の荒獅子には通用しないことを知る。


黒井が構えた左手のソードブレイカーが、日本刀を受け止めたのだ。
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