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襲い来る野獣
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しおりを挟む沼沢と戦ったことは黒井には話していないはずだが、それなのにその名前を出したということは、本当に真治の中に沼沢を感じたのだろうか。
「確かに沼沢と戦いました。でも、戦ったからって動きを真似出来るってわけじゃないと思うんですけど」
「でも、津堂の動きを真似しただろ? 恐らくその武器の特性の一つじゃないかな? 真治君が日本刀の力を引き出しつつあるんだ」
それはつまり、強い敵と戦えば戦うほど、真治も強くなるということだろうか。
このような死闘を繰り返さなければならないのならば、命がいくつあっても足りそうにない。
強い敵と戦って、初見で勝てた試しなどない真治には、死を覚悟しなければ強くなれないと感じた。
ハンデを与えられた黒井は別として、沼沢にも、津堂にも殺されたわけだから。
「強いやつと戦い続ければ……もっともっと強くなる」
それでも、強くなれれば守りたい人を守れるようになるし、池田みたいな極悪非道は人間が出て来ても、仲間を守り切る事が出来るかもしれないと頭を悩ませた。
「まあ、そう言う事だね。ところで、奈央ちゃんを助けなくて良いのかい? その為にあいつと戦ったんじゃないの?」
そう言って、黒井は地面に落ちている肉塊を指差した。
「そ、そうだ! 奈央さん!」
黒井との話に集中しすぎて、目的を忘れそうになっていた真治は慌てて大正記念館の方を見た。
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