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怒りの咆哮

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二人のやり取りを見て、申し訳なさそうに奈央が呟いた。


その負い目を感じているというのは真治は気付いてはいたが、当然言えるわけもなかったのだ。


「何言ってるんですか。足手まといだなんて二度と言わないでくださいよ。俺は大切な人を守りたくて強くなったんですから」


傍から見れば、口説いているようにも聞こえるその発言に、黒井は苦笑いを浮かべた。


「何それ。俺がいるのに告ってるわけ? そういうのは二人きりの時にやってよ。俺が邪魔者みたいじゃん」


黒井にそう言われ、急に恥ずかしくなり顔を真っ赤にする真治。


それは奈央も同じようで、少し照れてるようだ。


「ち、ちが……へ、変な意味じゃないですからね!? 純粋に奈央さんを……」


真治が慌てて弁解しようとしたが、何かピリッとした気配を感じて動きを止めた。


(なんだ? 今のは)


ほんの微かに、肌に刺激を感じて辺りを見回したが、変わった様子はない。


「はいはい、純粋に奈央ちゃんが好きなのはわかったから。ほら、ガチャを引きながら歩くよ。時間は有効に使わないと」


「いや、違う……もう良いです」


何を言っても聞いてくれそうにない黒井には、下手に弁解しても意味がなさそうだ。


こんな大人にはなりたくないなと思いながら、中央部に向かって歩いた。
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