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怒りの咆哮

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戻って来たら、奈央の墓に参りに来ると約束をして、中年とフレンド登録をした。


「安心してくれ真治くん。何をすれば人の信用を得て、何をすれば人の信用を失うということは理解している。自分が何をすべきかはわかっているつもりだ」


この中年は街に来たばかりの時に、戦いを避けて逃げようとしていた。


争いを好まない、この街には似つかわしくない人柄なのだろうと知っているから。


「任せたよ……見届けたいけど、俺は仲間を助ける為に行かなきゃ」


人が死んでも、悲しんで泣いている暇さえ与えてくれない。


この街はつくづく残酷だと思い知らされる。


「ああ、任せてくれ。それにしても真治くん……見違えたね。最初はそこらにいる気弱な高校生に見えたが……こうも変わるものか」


そんなに変わったかと真治は自分の身体を見詰めて。


だが、変わったところで人一人守れないのでは、変わる意味はなんだと思ってしまう。


「俺は何も変わってないですよ。ただ、人を殺すことに抵抗がなくなった殺人鬼になっただけです」


「いやいや、そうじゃない。だって、人が死んでこんなに悲しんでいるじゃないか。キミは殺人鬼なんかじゃないよ」


黒井から奈央の亡骸を受け取ったおっさんは、力強く、俺にそう言った。


「……奈央さんを、よろしく」


これ以上いると別れるのが辛くなる。


真治は黒井の背中を押して、街の中央部へと歩き出した。




「奈央さん……さようなら」



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