上 下
554 / 682
怒りの咆哮

system_0554

しおりを挟む
盾が黒井の身体の上を通り過ぎる。


それを狙っていたかのように、黒井は下からランスを突き付け、盾を持つ左腕を突き刺したのだ。


これは黒井との戦いで、真治が取った行動に似ている。


だが、それとは大きく違うのは、攻撃を確実にヒットさせているところだ。


この辺りは経験の差と言うべきか、さすがとしか言いようがない。


そして、ここが最大のチャンスだ。


下方からランスの攻撃を受けた左腕。


ここしかないと真治は飛び上がり、上方からランスと挟み込むように日本刀を振り下ろした。


ガツッという、鈍い音が手に伝わる。


しかし、その攻撃もナイトの強固な骨で止められてしまったのだと理解した。


肉は切断することが出来たが骨が硬すぎる。


「チッ! これでもダメかよ! どんな化け物なんだこいつは!!」


ランスを支えに後転し、大きく後方に飛び退いた黒井。


真治もナイトの腕を蹴って後退し、黒井の近くに着地した。


「でも、前よりもダメージを与えることは出来ています。本当にやれそうですね」


「そうかよ! 俺はもう諦めるか悩んだが、なかなか良い根性してるじゃねぇかよ! じゃあ一気に殺しに行くぞ!」


その言葉を聞いて、しまったと真治は己の愚かさを嘆いた。


このまま逃げられるチャンスだったというのに、余計なことを言ってしまったと。
しおりを挟む

処理中です...