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怒りの咆哮

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「キミ……確か真治君。好きな人には会えたの? その為に東軍に来たのんじゃなかったの?」


真治が生と死の境をさまよっている時に、勝手に話をされていたことを思い出した。


当初とは目的が変わってしまったが、概ね間違ってはいない。


「いえ……仲間が捕まってしまってですね。助けに行かなきゃならないんですよ。もう10日も前になるから、早く行かないと」


当然のように普通に話しているが、言っても大丈夫なことだったのかと少し頭を悩ませた。


ステルス機能をオンにしているとはいえ、南軍の人間だとわかってしまったわけで、下手に隠すよりは本当のことを言った方が良いかもしれないという判断からだったが。


「……それで、懲りもせずにまた中央部を越えて来たの? あっちから歩いて来たってことは、そう言うことなんでしょ? またナイトにやられるかもしれないのに」


「は、はは。あの時は助けてくれてありがとうございました。まあ、今回は何とか……」


と、真治自身も引きつっているとわかる笑顔を浮かべたその時だった。


黒井が、ランスとソードブレイカーを取り出し、腰を落として構えたのだ。


ここにいることを知られるなと言った張本人が臨戦態勢とは。


「ちょっと……何してるんですか黒井さん!」


慌てて黒井を止めようとしたが、その目は目の前の女子高生を睨み付けていた。


「お前こそ何をしてる! 誰と話しているかわかっているのかよ! こいつは狩野明なんだぞ!」
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