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怒りの咆哮

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狩野明。四天王の一人だということはわかっていたが、そんな人物がなぜ真治を助けてくれたのがわからない。


「そう言うお前は黒井風助。何度か戦ったのを覚えてる」


黒井が武器を構えていても、狩野が武器を取り出す様子はない。


「く、黒井さん! この人が俺を助けてくれた人ですよ! 武器をしまって!」


「バカを言うんじゃねぇぞ! 例えそうだとしても、警戒するのは当然だろうが! 後ろの二人は武器を構えてるんだ、いつ殺られるかわからねぇぞ!」


一触即発のこの状況。


真治達がここにいることを誰にも知らせない為の方法は二つ。


この三人を殺すか、誰にも言わないように説得するかだが、美優と真冬とは一度戦っている。


「黒井の言ってる事は正しいよ。私もきっとそうする。だから……戦いたいなら相手をしてあげるけど、どうする?」


武器を取り出していない狩野の言葉で、真治肌を撫でるかのような、ゾワッとする殺意が通り過ぎた。


ナイトと一人で戦っていたから、強いのはわかっていたが、まさか真治と同じくらいの歳の女の子が、こんな強烈な殺気を放てるとは。


どうすると言われても、真治にしてみれば狩野は恩人で、出来れば戦いたくはない相手だった。


だから、いつ飛び掛かってもおかしくない状態の黒井は怖くてたまらなかっただろう。
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