上 下
605 / 682
狂い始める歯車

system_0605

しおりを挟む
「じゃあ、とりあえず話を進めるか。明ちゃんの方はどうだった?」


やっとどうでもいい話が終わったと、真治は疲労した様子で頭を抱えてため息をついた。


デパートの外でも二人は見張っていた場所が違うのだろう。他の地点はどうなっていたのか、黒井が狩野に尋ねる。


「そうね。この辺りは東軍の中心地だから人通りが多くて、日中はデパートに買い出しに来る人もいる。香月が頻繁に出入りしていたけれど、それ以外は目立った動きはないわね」


津堂の名前が出なかったということは、姿を見ていないのだろう。


狩野の言葉は、見たままを伝えているようだった。


「俺の方はちょっと面白かったんだけど、北軍の『永田飛鳥ながたあすか』と『平山安芸ひらやまあき』って知ってる?」


北軍の人間となれば、東軍には馴染みがあるかもしれないが、南軍とは正反対の場所に位置しているわけだ。


総力戦でもそうそうお目に掛かれるものではないし、真治が知るはずもないのだが、それを知っている黒井はかなりの情報通だと言えよう。


むしろ、この街にいるからこそ、情報が大切なのかもしれないのだが。


「永田と平山なら知ってる。北軍の切り込み隊長みたいな二人だけど、それがどうかしたの?」


狩野は東軍だから、有名な人なら何度か戦ったことがあってもおかしくはない。


「その二人がデパートまで来てたんだけどさ、裏にある立体駐車場の辺りから津堂が出て来たんだよ」
しおりを挟む

処理中です...