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狂い始める歯車

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「ぐはっ!」



抱き締めたら、どうにかなると思ったわけではなかっただろう。


もしかしたら攻撃を止めてくれるかもしれないという想いはあったようだが、予想を裏切って遠慮なく刺して来た。


それでも、真治の背中に短剣を突き立てて、ようやく動きは止まったみたいで。


ガタガタと震えている理沙は、短剣から手を離した。


真治の背中から金属の感覚が消えたと同時に、傷口から血が溢れ出すぬるい感覚が背中を伝う。


「大丈夫だって言っただろ? 俺が理沙を守るから……心配しなくて良いんだ」


何度も何度も、心の中で「頼む!」と叫び続けて、すがるように抱き締める理沙の身体。



「あ、ああ……真治。ごめん……」



その想いが通じたのか、ダラリと垂れ下がっていた腕が真治の背中に回されて、ギュッと強く抱き締めたのだった。


「良かった……もう大丈夫。俺を信じて、これからは俺が理沙を守るから」


「ごめんね……ごめんね。私、どうすれば良いか……」


抱き締めた事で我に返ったのか、それとも真治をを刺したことで罪悪感にさいなまれたのか。


元々優しい女の子だった。そして真治のことを誰よりも心配していた女の子だった。そんな真治を傷付けたことで正気を取り戻したのだろう。
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