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狂い始める歯車
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しおりを挟む「猿江恩賜公園だったらここからそんなに遠くねぇ。決まりだな。ほら、ボウズが彼女を運んでやらないと。自分の手で送りたいだろ」
「そ、そうですね……」
理沙との別れが近付いている。
立ち上がって、デパートの入り口へと向かう足取りも重い。
恵梨香を助けて目的を果たした後、真治に残ったのは、好きな人を失った虚しさだけ。
中に入り、理沙が横たわる場所まで三人で歩く。
エスカレーターのある広い空間。
長椅子に、眠るように横たわっている理沙を見て……再び真治の胸に悲しみが湧き上がった。
「香月か。津堂じゃ、こんな潰され方をしないだろうからな。ちょっと待ってな。運ぶにしても、このままじゃ運びにくいだろ」
そう言って名鳥は、二階へと向かった。
「少年。私を助けようとして、この少女は……」
状況だけを見ればそうなのだが、決してそうじゃない。
自分が強ければ、香月に殺されることはなくて、理沙が真治を見掛けてデパートの中に入って来ても死ぬことはなかったんだと悔やみ続ける。
「俺の弱さが理沙を殺したんです。恵梨香さんのせいじゃありません」
そこからは何も言わずに、名鳥が戻って来る間、真治は理沙の頬を撫でていた。
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