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理科準備室の人体模型

二十二枚目

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少しして、ドアを開けて何かが入って来る気配があった。


ベチャッ、ベチャッと、液体が床で弾けるような音が聞こえる。


フーフーという息遣いが、キョウがが身を潜める板の向こう側から聞こえる。


それが、狭めた通路に入って行ったと判断した瞬間、キョウは板を押しながら通路の中に入った。


ドンッという衝撃が板に加わり、抵抗しているのか、そこからなかなか先に進まない。


「ぐうっ!  僕の力ではこれ以上は!」


「じゃあ後は俺に任せろ!」


その声が聞こえたと同時に、棚の上に乗っていたセイヤと、人体模型が入っていた箱が人体模型目掛けて落下した。


キョウの力では押し負ける可能性がある。


ただ箱を上から落としても、回避されたりセイヤが殺されてしまう可能性があったから。


板を押させて、逃げられない状況を作り出したのだ。


さらには床に、箱の蓋を敷いていて、上から押さえ付けるだけで箱の中に戻せるという作戦だった。


上から箱が降ってくるとは思わなかったのか、人体模型からボキッと何かが折れるような音が聞こえたが、セイヤは止めなかった。


グイッと箱に引っ掛かった人体模型を後ろに引き倒し、そのまま箱を被せたのだ。


想像以上に上手く行って、ホッと胸を撫で下ろしたキョウとセイヤ。


「ど、どうだ化け物が!  そのまま永遠に眠ってろ!」


ソラミも、安心して椅子に座ると、ゆっくりと意識が遠のいて行くのがわかった。


セイヤが床に倒れそうになる瞬間、不可解な物が目に映ったのだ。


それは……微かに笑って自分を見下ろすキョウの顔。


その態度の理由は、セイヤにはわからなかった。
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