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トイレの花子さん

十個目

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干からびた死体が横たわる小さなタイルの床。


全身から汗が噴き出し、荒い呼吸がメグミの喉を渇かせる。


本当は入りたくないし、出来ることなら他の人が入ってほしい。


どうして断れなかったんだと、自分の弱さを恨みながら、ゆっくりと指定された個室へと入って行った。


「ね、ねえ。これどうすればいいの?  個室に入っても特に何も起こらないけど……もう出ていい?」


和式便器を跨いで、不安そうに尋ねるが、それに対する答えを誰も知らないのだ。


正しいのか、間違っているのかなどわかるはずがなかった。


「間違い……ってことでいいのかな?  正解だったら……どうなるの?」


コハナがそう呟いたが、本当に誰も何も知らないのだ。


「何もないなら出てきなよ。多分間違ってるってことなんだろうからさ」


と、アイラがそう言った次の瞬間。


バタンッ!  と勢いよく個室のドアが閉じ、カチャンという音と共に鍵がかかったのだった。


「ひっ!  な、何!?  メグミ!  あんた冗談はやめてよ!」


その音に驚いた四人は身をすくめ、ショウコが怒鳴ったが……。


「わ、私何もしてない!  何なのこれ……開かない!  開かないよ!」


当のメグミも何が起こっているのかわからず、慌てた様子で鍵を開けようと必死に力を込める。


そんな中、ミラが震える声と指で、ある物を指し示したのだ。
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