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テケテケ&音楽室の怪

十九曲目

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「キョウジくん、私達だって悲しくないわけじゃないんだよ。でも、ここから出ないと皆殺されちゃう……もっと悲しいことになっちゃうんだよ」


「……あ、ああ。ご、ごめん。僕ばかりが辛いと思い込んでた。そうだよね……ここにいる皆、同じ思いをしているのに」


キョウジにとって、ヤスダの涙は意外だった。


クラスでも少し変わっているけど、スポーツが得意で人望があり、自分とは何もかも違うと思っていたヤスダが、人を想って涙していたのだから。


学ランを脱ぎ、キョウジの横で屈んでヒナタの遺体にそれを被せるヤスダ。


「……助けられなくてすまなかったヒナタさん。そしてキョウジ。これ以上の死者を出さない為に手を貸してくれ。残った皆で、学校から脱出したいんだ」


ヤスダになぜ人望があるのかが、キョウジには今わかった。


この人は、人のことを想って行動出来る人なんだと。


何のためらいもなく学ランを脱ぎ、ヒナタの遺体に被せたが、自分はどうだろうと。


ただ悲しんでいただけで、ボタンのひとつも外さずにしっかりと着ている。


それが少し恥ずかしくて、自分が嫌になっていた。


「とりあえず、ここだとテケテケがやって来たらすぐに見付かっちゃうから、そこの教室に入って状況の整理をしよう。気持ちを落ち着ける為にもね」
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