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怒りの二宮金次郎像

二十五冊目

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三人に先行して、生徒玄関の傘立てに刺さっていた金属バットを手に取り、コウセイは二宮金次郎像に駆け寄った。


ミハネが死んだのはきっとこれのせいで、覚えてもいないAが死んだのもこれのせいで、わけのわからないことに巻き込まれているのもこれのせい。


全ての恨みを込めて、コウセイは金属バットを二宮金次郎像に向かって振り下ろした。


石像……なのだが、ギィンと金属音が響くだけで、そう簡単に破壊出来るものではない。


金属バットが弾き返されるたび、さらに怒りを込めて振り下ろす。


「壊れろ!  壊れろ!  たかが石像のくせに、俺達をおかしなことに巻き込みやがってよ!  何が二宮金次郎だ!  知らねえよ!  勉強してるから偉いのかよ!  昔の価値観を今の人間に押し付けるんじゃねえ!」


何度も何度も、何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も何度も。


怒りに任せて振り続けた金属バットは、次第に石像を破壊し始める。


コウセイの怒りと憎しみがそうさせたのか、徐々にではあるが、確実にボロボロと。


「は、はは。もう少しで全部ぶっ壊れるぜ!  何が呪いだ!  呪うもんなら呪ってみろや!」


振れば振るほど面白いように崩れる石像に、コウセイの手は止まらなかった。


このまま全部破壊してしまえば、もう何も起こらなくなると思って、ただ壊し続けた。
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