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怒りの二宮金次郎像

三十三冊目

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その瞬間、アンナとキョウスケは思い出した。


自分達が友達と思っていたカミキ、そして友達だと思っていたAが同一人物で、さらに自分達がいじめの末に事故とはいえ殺してしまったクラスメイトだということを。


トイレで上から水を掛け、バットで殴り、自転車の後輪を顔で止めさせてカッターナイフで皮膚を切る。


今になって思えば、なぜあんなことをしていたのかがわからない。


きっと、周囲に対して強く見せたかったのと、逆らわないカミキを「いいおもちゃが手に入った」くらいにしか思っていなかったのだろう。


「学校は色んな念や想いが集まる場所なんだ。古くからあるこの二宮金次郎像も、学校に渦巻くそういった念を取り込んでいたに違いない。僕の恨みや憎しみが、死ぬ間際にそれと混ざり合って力を貸してくれたんだ。永遠にキミ達を苦しめる呪いとしてね」


カミキが冷たくそう言い放つと、授業中だというのに学校からゾロゾロと二宮金次郎像の顔の生徒達が出て来たのだ。


明らかに在籍している生徒達よりも多く、無限に湧いて出てくるとも思えるその大量の生徒達が、アンナとキョウスケを取り囲む。


「何……何が起こるの……やめてよ。私達は友達……じゃ、なかった?」


不思議な気分だった。


前にも同じセリフを言ったことがあるような気がしていたから。


いや、セリフだけではない。前にも同じ光景を見たような気がする。
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