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7話 告訴状
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「お呼びでしょうか?」
執事長からお父様が呼んでいると伺い、執務室に訪れた。
「ああ」
いつもの数倍、声が低く重苦しい。なんだか呼吸がしにくいような感覚に襲われる。唾を飲む音が響く。
お父様が、執務机に手紙を置いて鞭が閉まってある引き出しを開け、金具が着いた特別製の鞭を取り出した。恐怖でと思わず後退りしそうな足を必死で動かすまいと力を込めた。なぜなら以前、後退りした際に酷く暴力を振るわれたからだ。
「なぜこんなものが屋敷に届いたんだ?」
「わかりません」
なんのことかわからないのに、回答できるわけもない。
「ドムニエル大公家から告訴状が届いた。罪状は窃盗罪、傷害罪、横領罪、姦通罪、脱税だ!!!!」
落ち着いていたお父様の声が次第に荒々しく大きな声になっていく度、恐怖が増していく。目頭に涙が溜まってく感覚を、目を瞬せ必死に我慢する。視界がぐにゃりと歪んで、どう立っているのかもわからない。
――なんでそんなものが……? 知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らないーー
「そんなこと知りません。私、やってません」
「嘘をつくなーーーー!」
ーーガンッ!!!
お父様が投げた置き時計がこめかみにぶつかった。お父様は私の髪を引っ張り床に転がした後、私の背中に鞭を何度も何度も何十分も打ち付けた。一時間くらい経っただろうか……鉄のような血の臭いが部屋に漂っている。
「うっ……う゛……うっ……うっ……う゛っ…」
最初は鞭で叩かれる度に大きく出た声も今は声を出すのもしんどい。背中が焼けるように熱い。それでも痛みは変わらず痛いままだ。今にも気を失いそうだけど、意識が途絶えればよく冷えた井戸を掛けられる。耐えて、耐えて、また耐えて……とうとう気を失ってしまった。
「うっ……」
少し身をよじるだけで、背中に太腿に頭が痛くて起き上がれない。それに寒い。ここはいつものお仕置き部屋である伯爵邸の外れにある納屋である。暗く、隙間風が入って来てまだ冬では無いのにとても寒かった。服は体罰を受けた当時のままで血が固まってゴワゴワとしている。なんで告訴状なんか……。この世界はことごとく私に厳しい。お義兄様が優しくしてくれたから、こんなしっぺ返しを受けんたんだ。良いことのあとはいつも怖かった。不幸が何倍にもなって降りかかりそうで。実際、いつもそうだったから。
また意識を失って、目が覚めると粗末なパンと水が置いてあった。死んだら、面倒だから、この程度の食事はいつも与えられていた。この屋敷では誰も助けてくれない。かつて私に優しくしてくれた3ばかりの使用人、乳母と同年代の下働きの下女に庭師、みんな罰を受けて出ていった。それを見てクビになりたくない使用人たちは、関わりたくないと私を遠巻きに見てるか、陰口や虐めて来くるかどちらかだった。
お義兄様はどちらだろうか? 今まで関わりなかったけども……また優しくされたかった。お義兄様の食べさせてくれた実美味しかったな。きっとあの時、どんなに酸っぱくても美味しく感じたんだろう。今まで何年間も泣かなかったのに枯れ果てた涙が滲む。また髪を撫でてほしいし、優しく微笑んでほしい。私の事など嫌いでも、優しくされたかった。ここから助けてくれるだろうか? 今まで何度も納屋に放り込まれたが、義兄様は1度も助けてくれなかった。ありもしないことに期待するのは馬鹿げている。でも暗闇で思い浮かべるのは、修道院から戻るときの出来事ばかりだった。
2日ぐらいだろうか……ドアの南京錠を開ける音がする。
ドアが開かれ、暗闇からいきなり明るい昼間の陽射しを浴びたが、逆光で見えない。シルエットの大きさから男性だろうか……
執事長からお父様が呼んでいると伺い、執務室に訪れた。
「ああ」
いつもの数倍、声が低く重苦しい。なんだか呼吸がしにくいような感覚に襲われる。唾を飲む音が響く。
お父様が、執務机に手紙を置いて鞭が閉まってある引き出しを開け、金具が着いた特別製の鞭を取り出した。恐怖でと思わず後退りしそうな足を必死で動かすまいと力を込めた。なぜなら以前、後退りした際に酷く暴力を振るわれたからだ。
「なぜこんなものが屋敷に届いたんだ?」
「わかりません」
なんのことかわからないのに、回答できるわけもない。
「ドムニエル大公家から告訴状が届いた。罪状は窃盗罪、傷害罪、横領罪、姦通罪、脱税だ!!!!」
落ち着いていたお父様の声が次第に荒々しく大きな声になっていく度、恐怖が増していく。目頭に涙が溜まってく感覚を、目を瞬せ必死に我慢する。視界がぐにゃりと歪んで、どう立っているのかもわからない。
――なんでそんなものが……? 知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らない知らないーー
「そんなこと知りません。私、やってません」
「嘘をつくなーーーー!」
ーーガンッ!!!
お父様が投げた置き時計がこめかみにぶつかった。お父様は私の髪を引っ張り床に転がした後、私の背中に鞭を何度も何度も何十分も打ち付けた。一時間くらい経っただろうか……鉄のような血の臭いが部屋に漂っている。
「うっ……う゛……うっ……うっ……う゛っ…」
最初は鞭で叩かれる度に大きく出た声も今は声を出すのもしんどい。背中が焼けるように熱い。それでも痛みは変わらず痛いままだ。今にも気を失いそうだけど、意識が途絶えればよく冷えた井戸を掛けられる。耐えて、耐えて、また耐えて……とうとう気を失ってしまった。
「うっ……」
少し身をよじるだけで、背中に太腿に頭が痛くて起き上がれない。それに寒い。ここはいつものお仕置き部屋である伯爵邸の外れにある納屋である。暗く、隙間風が入って来てまだ冬では無いのにとても寒かった。服は体罰を受けた当時のままで血が固まってゴワゴワとしている。なんで告訴状なんか……。この世界はことごとく私に厳しい。お義兄様が優しくしてくれたから、こんなしっぺ返しを受けんたんだ。良いことのあとはいつも怖かった。不幸が何倍にもなって降りかかりそうで。実際、いつもそうだったから。
また意識を失って、目が覚めると粗末なパンと水が置いてあった。死んだら、面倒だから、この程度の食事はいつも与えられていた。この屋敷では誰も助けてくれない。かつて私に優しくしてくれた3ばかりの使用人、乳母と同年代の下働きの下女に庭師、みんな罰を受けて出ていった。それを見てクビになりたくない使用人たちは、関わりたくないと私を遠巻きに見てるか、陰口や虐めて来くるかどちらかだった。
お義兄様はどちらだろうか? 今まで関わりなかったけども……また優しくされたかった。お義兄様の食べさせてくれた実美味しかったな。きっとあの時、どんなに酸っぱくても美味しく感じたんだろう。今まで何年間も泣かなかったのに枯れ果てた涙が滲む。また髪を撫でてほしいし、優しく微笑んでほしい。私の事など嫌いでも、優しくされたかった。ここから助けてくれるだろうか? 今まで何度も納屋に放り込まれたが、義兄様は1度も助けてくれなかった。ありもしないことに期待するのは馬鹿げている。でも暗闇で思い浮かべるのは、修道院から戻るときの出来事ばかりだった。
2日ぐらいだろうか……ドアの南京錠を開ける音がする。
ドアが開かれ、暗闇からいきなり明るい昼間の陽射しを浴びたが、逆光で見えない。シルエットの大きさから男性だろうか……
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