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第5話 歩いた!?歩いた!
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「・・・・・・あれ?」
翌朝、いつものように土地神様の掃除に来たあたしは困惑を隠せませんでした。
「場所・・・・・・違わない?」
土地神様は崖のあった場所から明らかに何十歩も離れて・・・移動していました。
掃除のために組んだ足場からもかなり離れてしまっています。
何だかポーズも違っています。
まるで歩き続けたのが途中で力つきたような、躍動感のあるポーズで止まっているのです。
極めつけは足跡です!
連日の雨で延びてきた草にはしっかりと、あたしの腕で一抱えもするような大きく四角い足跡と轍《わだち》が残っています。
「土地神様は、歩かれたようですね」
「いやいやおかしいでしょう!!」
水の聖女様には奇跡は日常茶飯事なのかもしれませんが、庶民のあたしの常識が理解を拒否します。
「だって、土地神さまですよ!」
「神様だって信者に説くように自らの足で歩きます」
「そういう話ではなくてですね!」
問題なのは、金属の塊であるはずの像が夜のうちに人知れず動いたことです。
何かの怪物であったら修道院を襲撃するかもしれません。
そうなったら夜もおちおち眠っていられません。
「まさか。鉄の土地神様がわたくし達の何を食べるというのです。鉄の部分などどこにもありませんよ?」
「それは・・・そうですが」
「そもそも、修道院には向かっていないようですね」
言われてみれば、足跡は修道院とは別方向に向かっているように見えます。
「どこに向かっているのでしょう?」
ここは砂漠と岩山の他は何もない土地です。
今でこそ連日の雨のおかげで緑の絨毯が敷かれたように一面の草花が生い茂っていますが、言ってみればそれだけです。
そのうちに良い牧草地にはなるかもしれませんが、土地神様の関心を引くような何か、があるとは思えません。
「川、ではないからしら?」
「川ですか」
半月前は荒れ地に引かれた糸のように細々とした流れであったものが、今では橋をかけなければ渡るのを躊躇する程の幅と勢いで流れています。
おかげで川には大きな魚も泳ぐようになり、ときどき夕食に彩りを添えてくれるようになりました。
聖女様のことですから、不思議な奇跡で土地神様の水に対する渇望を読みとったのかもしれません。
「それにしても不思議です。なぜ急に動き出したのかしら?」
聖女様は不思議そうに小首を傾げています。
「あっ!」
もしかすると。
「どうしたの、リリア?」
「あたし、掃除のときに背中の大きな歯車をいっぱい回したんです。ひょっとしたらそのせいかも・・・」
「あら。あれって回るの?」
「回ります。そりゃあもう、勢いよく」
「ちょっとやってみてもらってもいいかしら」
「わかりました!」
聖女様の命令であれば否やはありません。
あたしは慎重に縄をかけて土地神様に登ると「失礼します」と一声かけてから力一杯に背の歯車を回しました。
それはもう、グルングルングルンと。
何十回か回し続けると、ガクン、と振動がきました。
「わ、ほんとに動いた!」
あたしを背に乗せたままゆっくり、ゆっくりと間接部の小さな砂を吐き出しながら土地神様は川に向かって歩き始めたのです。
◇ ◇ ◇ ◇
「そろそろ雨が降ってもいいのに」
それが最近の王都住人の挨拶です。
こんなに雨が降らない期間が続くことは初めてです。
王都周辺の畑はすっかり萎れて、枯れ始めています。
慌てて灌漑工事を命じても、川の水量が不足しているのだから焼け石に水です。
「いったいなにが起きているのだろう」
困り果てた人々からは「そういえば」と最近の噂で、水の聖女様が王家に追放されてしまったらしい、と口の端に述べるようになってきました。
翌朝、いつものように土地神様の掃除に来たあたしは困惑を隠せませんでした。
「場所・・・・・・違わない?」
土地神様は崖のあった場所から明らかに何十歩も離れて・・・移動していました。
掃除のために組んだ足場からもかなり離れてしまっています。
何だかポーズも違っています。
まるで歩き続けたのが途中で力つきたような、躍動感のあるポーズで止まっているのです。
極めつけは足跡です!
連日の雨で延びてきた草にはしっかりと、あたしの腕で一抱えもするような大きく四角い足跡と轍《わだち》が残っています。
「土地神様は、歩かれたようですね」
「いやいやおかしいでしょう!!」
水の聖女様には奇跡は日常茶飯事なのかもしれませんが、庶民のあたしの常識が理解を拒否します。
「だって、土地神さまですよ!」
「神様だって信者に説くように自らの足で歩きます」
「そういう話ではなくてですね!」
問題なのは、金属の塊であるはずの像が夜のうちに人知れず動いたことです。
何かの怪物であったら修道院を襲撃するかもしれません。
そうなったら夜もおちおち眠っていられません。
「まさか。鉄の土地神様がわたくし達の何を食べるというのです。鉄の部分などどこにもありませんよ?」
「それは・・・そうですが」
「そもそも、修道院には向かっていないようですね」
言われてみれば、足跡は修道院とは別方向に向かっているように見えます。
「どこに向かっているのでしょう?」
ここは砂漠と岩山の他は何もない土地です。
今でこそ連日の雨のおかげで緑の絨毯が敷かれたように一面の草花が生い茂っていますが、言ってみればそれだけです。
そのうちに良い牧草地にはなるかもしれませんが、土地神様の関心を引くような何か、があるとは思えません。
「川、ではないからしら?」
「川ですか」
半月前は荒れ地に引かれた糸のように細々とした流れであったものが、今では橋をかけなければ渡るのを躊躇する程の幅と勢いで流れています。
おかげで川には大きな魚も泳ぐようになり、ときどき夕食に彩りを添えてくれるようになりました。
聖女様のことですから、不思議な奇跡で土地神様の水に対する渇望を読みとったのかもしれません。
「それにしても不思議です。なぜ急に動き出したのかしら?」
聖女様は不思議そうに小首を傾げています。
「あっ!」
もしかすると。
「どうしたの、リリア?」
「あたし、掃除のときに背中の大きな歯車をいっぱい回したんです。ひょっとしたらそのせいかも・・・」
「あら。あれって回るの?」
「回ります。そりゃあもう、勢いよく」
「ちょっとやってみてもらってもいいかしら」
「わかりました!」
聖女様の命令であれば否やはありません。
あたしは慎重に縄をかけて土地神様に登ると「失礼します」と一声かけてから力一杯に背の歯車を回しました。
それはもう、グルングルングルンと。
何十回か回し続けると、ガクン、と振動がきました。
「わ、ほんとに動いた!」
あたしを背に乗せたままゆっくり、ゆっくりと間接部の小さな砂を吐き出しながら土地神様は川に向かって歩き始めたのです。
◇ ◇ ◇ ◇
「そろそろ雨が降ってもいいのに」
それが最近の王都住人の挨拶です。
こんなに雨が降らない期間が続くことは初めてです。
王都周辺の畑はすっかり萎れて、枯れ始めています。
慌てて灌漑工事を命じても、川の水量が不足しているのだから焼け石に水です。
「いったいなにが起きているのだろう」
困り果てた人々からは「そういえば」と最近の噂で、水の聖女様が王家に追放されてしまったらしい、と口の端に述べるようになってきました。
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