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第7話 それは機械か神様か
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魔導産業革命。
それは私たち世界を征した王国が迎えた黄金時代であり、その礎となった大拡散時代を支えることになった、工業生産を飛躍的に高めた一連の技術と産業の爆発的な進歩を総称した呼び方です、と学校では習いました。
その中心的な技術は、石炭と水と魔導を駆使した動力である魔導蒸気機関《マギスチームエンジン》です。
水を熱して沸騰させた際に爆発的に膨張する力を魔導で制御して歯車やピストンを動かすことで竜の力の何十倍、何百倍という竜力《りゅうりき》を発揮する機械が、世界を変えたのです。
つまりは、世界でも王国にしか存在しないはずの最新の動力機関のはずです。
それがなぜ、こんな辺鄙な地の果ての砂漠の片隅の神様に備わっているのでしょう?
「間違いないわ・・・これは・・・魔導蒸気機関・・・なぜ・・・こんなところに・・・」
「あの・・・聖女様?少し離れませんか?」
土地神様は、少なく見積もってもあたしの数倍の高さがあります。
重さにいたっては何百倍あるかもわかりません。
もしも動き出した土地神様がつまづいて倒れかかってきたりしたら、のしパンのように平べったくなってしまうでしょう。
「あっ・・・でも何か動いたわ」
聖女様の指摘に土地神様を見上げると、顔の口にあたる部分がぱかりと開き「シュシュー、シュシュー」と、なにやら拍子をつけて蒸気を吹いたのです。
「・・・何でしょう?」
「さあ・・・」
私たちが首を傾げると、土地神様も同じように首を傾げて「シュシュシュー」と、少し甲高い拍子で蒸気を吹き出しました。
「・・・ひょっとして、なにかお話をされているのでは?」
「そんなこと、あるのでしょうか?」
「神様ですもの」
「でも、魔導蒸気機関を積んでますよね?」
「そうよねえ・・・」
土地神様が神様であれば、何かの不思議力で動いたり喋ったりしても不思議はないかもしれません。世の中には聖女様のように不思議な力を持つ人や存在がいるわけですから。
「でも、お話したいように見えるわよ?」
「そこですよ!」
あたしがどうしても理解できない、受け入れられない点は。
「魔導蒸気機関で動くものが、ものを考えたり話したりするものでしょうか?」
それは人間が最も尊い存在とする神殿の教えに反する、生命への冒涜ではないでしょうか?
「それはね・・・」
「それは・・・?」
神殿の教えを是とするのか。あるいは否とするのか。
深遠な生命の問答に、この辺境の地で答えが出ようとしているのか。
ごくり、と自分が緊張のあまり唾を飲み込む音が耳に響きました。
聖女様はいつもの調子で、穏やかに微笑んで答えられました。
「お話ししてみればわかるのじゃない?」
「はあ・・・まあ・・・そうですね」
話せば分かる。話さないとわからない。
言われてみれば当然のことです。
思わず膝の力ぬけて座り込んでしまうところでした。
「えっ・・・」
「きゃっ」
見上げると、土地神様の顔が思ったよりかなり近いところにあります。
「お話に加わりたいのかもしれませんね?」
「そう・・・でしょうか」
あたし達が話しているところに加わりたかったのか、膝と手をついて這うような姿勢になって姿勢を極限まで低くした土地神様の開いた口がよく見えます。
奥は暗くなっているのよく見えませんが、歯はありません。何やら複雑なパイプのようなものがはしっているように見えます。本当に魔導蒸気機械のようです。
「あれは・・・?」
そうして観察していると、小さな取っ手のハンドルを見つけました。
人がつかんで回すのにちょうど良さそうなサイズです。
「ちょっと失礼しますね」
考えてみれば土地神様の背骨の大きな歯車もさんざん回したのですから、小さなハンドルをつかんで回すぐらい何てことありません。
あたしは躊躇なく土地神様の口の中に右腕をつっこむと、ハンドルをぐりぐりと勢いよく回し始めました。
すると、先ほどまで「シューシュー」と蒸気の音しかしなかった口から「マギスチームエンジン」と明瞭な音が発されたのです!
「しゃ、しゃべったーーーーーっ!!」
驚きのあまり、あたしは10フィートも飛び退いて尊崇する聖女様を巻き込んで三回も転がる、という不敬を犯しました。
それは私たち世界を征した王国が迎えた黄金時代であり、その礎となった大拡散時代を支えることになった、工業生産を飛躍的に高めた一連の技術と産業の爆発的な進歩を総称した呼び方です、と学校では習いました。
その中心的な技術は、石炭と水と魔導を駆使した動力である魔導蒸気機関《マギスチームエンジン》です。
水を熱して沸騰させた際に爆発的に膨張する力を魔導で制御して歯車やピストンを動かすことで竜の力の何十倍、何百倍という竜力《りゅうりき》を発揮する機械が、世界を変えたのです。
つまりは、世界でも王国にしか存在しないはずの最新の動力機関のはずです。
それがなぜ、こんな辺鄙な地の果ての砂漠の片隅の神様に備わっているのでしょう?
「間違いないわ・・・これは・・・魔導蒸気機関・・・なぜ・・・こんなところに・・・」
「あの・・・聖女様?少し離れませんか?」
土地神様は、少なく見積もってもあたしの数倍の高さがあります。
重さにいたっては何百倍あるかもわかりません。
もしも動き出した土地神様がつまづいて倒れかかってきたりしたら、のしパンのように平べったくなってしまうでしょう。
「あっ・・・でも何か動いたわ」
聖女様の指摘に土地神様を見上げると、顔の口にあたる部分がぱかりと開き「シュシュー、シュシュー」と、なにやら拍子をつけて蒸気を吹いたのです。
「・・・何でしょう?」
「さあ・・・」
私たちが首を傾げると、土地神様も同じように首を傾げて「シュシュシュー」と、少し甲高い拍子で蒸気を吹き出しました。
「・・・ひょっとして、なにかお話をされているのでは?」
「そんなこと、あるのでしょうか?」
「神様ですもの」
「でも、魔導蒸気機関を積んでますよね?」
「そうよねえ・・・」
土地神様が神様であれば、何かの不思議力で動いたり喋ったりしても不思議はないかもしれません。世の中には聖女様のように不思議な力を持つ人や存在がいるわけですから。
「でも、お話したいように見えるわよ?」
「そこですよ!」
あたしがどうしても理解できない、受け入れられない点は。
「魔導蒸気機関で動くものが、ものを考えたり話したりするものでしょうか?」
それは人間が最も尊い存在とする神殿の教えに反する、生命への冒涜ではないでしょうか?
「それはね・・・」
「それは・・・?」
神殿の教えを是とするのか。あるいは否とするのか。
深遠な生命の問答に、この辺境の地で答えが出ようとしているのか。
ごくり、と自分が緊張のあまり唾を飲み込む音が耳に響きました。
聖女様はいつもの調子で、穏やかに微笑んで答えられました。
「お話ししてみればわかるのじゃない?」
「はあ・・・まあ・・・そうですね」
話せば分かる。話さないとわからない。
言われてみれば当然のことです。
思わず膝の力ぬけて座り込んでしまうところでした。
「えっ・・・」
「きゃっ」
見上げると、土地神様の顔が思ったよりかなり近いところにあります。
「お話に加わりたいのかもしれませんね?」
「そう・・・でしょうか」
あたし達が話しているところに加わりたかったのか、膝と手をついて這うような姿勢になって姿勢を極限まで低くした土地神様の開いた口がよく見えます。
奥は暗くなっているのよく見えませんが、歯はありません。何やら複雑なパイプのようなものがはしっているように見えます。本当に魔導蒸気機械のようです。
「あれは・・・?」
そうして観察していると、小さな取っ手のハンドルを見つけました。
人がつかんで回すのにちょうど良さそうなサイズです。
「ちょっと失礼しますね」
考えてみれば土地神様の背骨の大きな歯車もさんざん回したのですから、小さなハンドルをつかんで回すぐらい何てことありません。
あたしは躊躇なく土地神様の口の中に右腕をつっこむと、ハンドルをぐりぐりと勢いよく回し始めました。
すると、先ほどまで「シューシュー」と蒸気の音しかしなかった口から「マギスチームエンジン」と明瞭な音が発されたのです!
「しゃ、しゃべったーーーーーっ!!」
驚きのあまり、あたしは10フィートも飛び退いて尊崇する聖女様を巻き込んで三回も転がる、という不敬を犯しました。
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