ある夏の日に君と出会った

おとめ

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「蒼護っていくつなの?」
「24かな?生きてたら38かな」
「じじいじゃん。」
「失礼な。見た目は子供、頭脳は」
「変わってねーだろうな」
栗色の髪がまだ若々しく、笑みを浮かべたままの蒼護が皺の増えている姿は想像に難がある。
「まだイケるかな?」
 本当に蒼護の発言は手に余る。何と返したら良いか、これが年の差というものなのか。
「冗談、じょーだん。もうそんなお話出来るようなオトシゴロじゃないよ」
「変わったのな、蒼護も俺も」
「何言ってんの。安春はこれからじゃん」
「…」
「…」
当たり前のように言われると冗談なのか本心なのか見当がつかない。しかし多分今まで蒼護が真面目に安春に対して生きていることを羨んでいる発言は無かった。
「…またそうやって、からかいやがって」
隣に座る蒼護の肩を掴み、ぐいと引き寄せると、妖艶な雰囲気に包まれた。
「…生きてたら、俺らどうなったんだろ」

「…まだ俺も血の気あるんだなぁ」

安春は思わず笑ってしまった。
「そーご、ほんと笑わせないで」
安春のツボに入り、蒼護の余り有るブラックジョークに爆笑してしまう。そんな笑いとる霊がいるか?安春は顔を背けくっくと笑いながらも、蒼護の体を安春の膝の上に乗せた。(霊だからか難なくというかとても軽い)

「わっ」
「こっちのせりふだっつーの」
また爆笑してしまう。


 そしてひとまず安春のツボが落ち着いた頃、まだ時間も夕暮れ時だったので日の入りをぼんやりと見ながら話を続ける。夜になったら蒼護の体はどんな風に見えるのだろう?

安春のふとした疑問は頭の片隅に置かれる。

「生きてたころ何してたの?」
「大学卒業して、すぐだからなぁ。社会人デビューちょっとした頃だよ」
「ふぅん…、社会人かぁ。想像つかねー」
「安春は温厚だからなー。きっと誰とでもうまくやれるよ」
「…温厚?そーでも無いけど」
そんな風に取れるのは蒼護が相手だから。…そう思ったが口には出さない。

お互い沈黙が続いた。あっという間に日が暮れる。そろそろ帰ろう、安春はそう思った。
「また来ていい?」
「またぁ?しょうがないなー」
安春はまた顔を背けて笑いを堪える。
「じゃ、また明日」
「うん、またね」
次は絶対に。安春は心に決めて体を起こす。
「あっ、ちょっといきなり立たないでよ」
そんな捨て台詞を後に手を振りながら蒼護に見送られた。
歩きながら、振り返ると蒼護はまだ手を振っていた。


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