猫山さんは犬上さんが好きでたまらない

歌華

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あの頃の憧れ

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俺が生まれたとき両親と兄や姉は俺の容姿を見てビックリしたらしい。
何せうっすら生えていた髪の毛が真っ白だったから。俺は世に言うアルビノで生まれてきてその奇異な容姿に良く苛められたんだ。
そんな時必ず俺を守ってくれた人がいた。

「やーい!白髪~!ジジイ~!」
「うるさい!」
俺はその体質から妖力ようりょくが強く、喧嘩は強かったが嫌いだった。「手は出来るだけ出すな」と父にキツく言われていたためいつもからかわれて、苛められた。
「やめろよ!真白ましろが可哀想だろ!」
いつも俺の肩を持つのは犬上いぬがみ真琴まことと言う男の子だった。真琴とは同じ病院で生まれた。真琴が一月生まれで、俺が二月生まれだった。真琴は昔から体が大きく鼻が利いた。
「チッ!真琴だ!覚えてろ!」
「いこーぜ!」
そう言っていじめっ子達は真琴の迫力に負けて去っていくのだった。
「真白!真白の事は俺が必ず守ってやるからな?俺は真白が猫のいちぞくでも守ってやる!」
真琴には言っていた。自分の猫山ねこやま家は猫神の一族だって。その力は今でも健在で力の強い子供が生まれる確率が高い事も言ってた。そして中には自分のような奇異な体質を持つ人間も少なからず居た。
それを話した時真琴は自分のせい犬上についても少しだけ教えてくれて。犬上は犬神様の子孫で犬神をまつっているらしい、しかしその力は薄まり力の弱い一族と言われていた。真琴自身も特に妖力の強い感じはしなかったが。根が真面目で正義感が強くコツコツと自身の能力を高めていた。そして真琴は人一倍鼻が利いた。俺の匂いで感情を察してくれたりもよくあることだった。
「真琴、ありがとう」
「何言っているんだ!これからは一緒に帰ろうな!」
「ありがとう!」
俺達はこうして高校まで一緒に同じクラスでずっと一緒だった。

***

高校に入ると俺は教員に髪を黒く染めろと入学し登校して直ぐ言われた。
「猫山!なんなんだその髪は!」
「え?地毛なんですけど?」
「嘘を付くな!人間の髪がそこまで白く生まれるわけないだろ!」
「でも、髪染めると父に怒られますんで」
それを聞くとその教員は酷く怒った。
「お前なぁ!いくら金持ちの家でもやって良いこととだめなことの区別くらい「その辺にしてくれません?」
教員と俺のいがみ合いに割って入ったのは勿論真琴だった。なにせ一緒に登校しているんだ。俺の事情も知っている。
「犬上っ!」
真琴は頭も良く体格も良かったせいもあり教員がすくむ程だった。俺のいつもの隠れ場だった。
「真白には真白の事情ってものがありますよね?それ考えないで、頭ごなしに真白に言うのやめて貰えません?」
「しかし校則が・・・・・・」
「ここって確か髪の色派手じゃないなら自由ですよね?じゃないと真白だってこんな教師のいる高校なんて選びませんし真白は本当に地毛なんですよ?なんなら小学校と中学の写真持ってきましょうか?」
迫ってくる言葉と威圧にすっかり小さくなる教員。
「わかった、行きなさい」
しまいには顔色を悪くして。木陰で休んでいた。少し可哀想だったが、大きくなるに連れて俺と一緒に居たこともあり真琴の本来持っていた少ない妖力が強く大きなものになっていることを真琴は知っているのだろうか?
「ッス、行くぞ真白」
「う、うん」
校門を突破して俺は真琴に耳打ちをする。
「真琴、妖力強くなったの?威圧感半端ないんだけど?」
「え?そんなに酷かった?なんか真白の事言われると腹立ってさ」
「あ、ありがと・・・・・・」
「それに、真白の良いところも知らないで髪の色だけで判断して欲しくなかったし」
俺も頭の悪い方ではなかったし、自慢じゃないが猫なので体育は得意だ。真琴はなんか小学校の頃に始めた柔道に夢中になっているみたいだけど。全国で何回も優勝している真琴ですら本気で相手をすれば俺には敵わなかった。
でも家の名に傷が付くのを気にしない親だったが格式が高く自分で喧嘩などすれば家の名に恥じることにも成りかねないと思うと喧嘩が出来なかった。

「真琴ってさ。狼の血も流れているのかな?」

高校三年になった頃だろうか?そんなことを訊いてみた。
「俺は真白は猛獣系の猫科な気がしているよ」
「そうかなぁ?」
「お前らってさ」
「「ん?」」
一緒に屋上でそんな会話をしていると同じクラスの奴らに
「仲良いよな」
「ホント!距離近いよね!」
「あ~そうかな?」
俺がはぐらかすと。真琴は然り気無く。
「俺は真琴の癖やほくろの数も知っている」
「はあ!?」
マジ?知られてた?
「恋人かよ!」
「ちげーわ!!」
恥ずかしくて俺は追い払ったけど。
『俺はそうだと思うけど』
「なんか言った?」
クラスメイトがギャーギャー騒いでて真琴の声聞き逃した!
「なんでもない。俺達、親友だしな!」
「なーんだ!そこまでの関係なんだ?」
女子が少し残念そうだったのはなんでだろう?そうして高校三年の春が終わり。
進学を決めたのはお互い自分でだった。真琴は柔道推薦で大学に行くし。俺はやりたいことなかったけど、父の仕事の手伝いする事に成るだろうから、経営とか専門に学びたいからと言って今まで一緒だったものが二つに分かれた。


あの時俺も恋人だと良いなって思ったんだ。真琴に「好きだよ」って言いたかったんだ。でも言えなくて辺なプライドみたいなものが邪魔して肝心なことを肝心な時に伝えそびれた。
このまま大人に成っていくんだと思った。俺の中から体の一部が心が欠けた。
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