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第1章
一年後
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今回のクエストはビックハムスターの討伐、および周辺地域に新たな魔物が発生していないかの調査だ。クエスト達成時の報酬は、単位取得に必要な実績と、お小遣い程度の報奨金、そして魔物を倒し、人々を守ったという満足。
どれもモチベーションの維持に必要なことだった。
先ほど、死ぬという言葉を使ったのは空気が読めてなかっただろうか、と優衣は考えた。初参加の澪はただでさえ緊張しているのに、追い打ちをかけるようなことをしてしまったのだろうか、と。
他の後輩達も緊張したに違いない。だが優衣は頭を振って、後悔を吹き飛ばす。
魔物との戦いは常に危険と隣り合わせなのだ。
ビックハムスター程度の魔物であれば、優衣が安全を約束し、その通りに乗り切ることも可能だろう。だが魔物は年々強さを増しているという噂もある。戦っている最中、思わぬ強さに成長すこともあった。
相手がどれだけ弱くても安心できるものではない。優衣はいつも、魔物との戦いで気を抜いてはいけないと後輩に言い聞かせていた。無論、自分にも。
「魔物は移動していません」
出発点から五十メートルほど進んだあたりで、澪が報告する。
「ありがとう。わたし達が感知されたら魔物が動きはじめるから、見逃さないでね」
「はい」
後輩の返事と同じくして、木の陰から少年が現れた。右目に眼帯をつけた、鋭い隻眼の学園生。
榊玲央。優衣と同じく、今年が最終在籍念の剣士だ。
「麻衣が目視で魔物を確認した。事前報告どおりのビックハムスターだ」
隣で澪が体を硬くした。
「発見した場所で待機している。お前も見ておくか」
「うん」
玲央に答え、優衣は背後の後輩達を振り返った。
「ちょっと待っててね。魔物を確認してくるから」
茂みにひっかかて大きな音がでないよう、慎重に進む。だんだんと森は深くなり、後輩達の姿が木々の陰に隠れた頃、大きな岩の前に座っている少女を確認した。一眼レフのカメラを大事そうに抱えている。
「麻衣ちゃん、どう?」
「自分で見た方が早いでしょ。岩の向こう側にいるわよ」
五十嵐麻衣の言葉に従ってのぞきこむと、確かにビックハムスターがいる。森の中、出し抜けに木々が途切れた、広場のような場所だ。
「変わったとこはないわよ。全然。情報どおりっていうか、典型的なビックハムスターね。やたら舌をチロチロさせてるし、攻撃方法もアレと牙、爪でしょ。ま、いつもどおりでいいんじゃない」
「麻衣ちゃん達攪乱部隊は、木に登る?広場の中心からは距離あるけど」
「私の部隊の後輩ちゃ…ありす達なら大丈夫」
「じゃあ、作戦はそのままでいこうか。みんなに共有するね」
「待て、優衣」
玲央が後方集団に目をやる。
「クエストが初めての生徒がいたな。優衣の遠距離組だったが…様子はどうだ?」
「えっと…緊張してるけど、フォローするよ。そのためのわたし達なんだし」
ここにいる優衣、玲央、麻衣の三人は同じ年に入学した。年も同じで、今年卒業する友人同士である。彼らはもうすぐ、学園に定められた六年の授業課程を終える、最終在籍年度生徒。俗に言う最上級生だ。その仕事には後輩の育成も含まれる。
「わたし達、あと半年で卒業だよ?ちょっとでも下級生を育てて、安心してクエストをこなせるようにならないと」
どれもモチベーションの維持に必要なことだった。
先ほど、死ぬという言葉を使ったのは空気が読めてなかっただろうか、と優衣は考えた。初参加の澪はただでさえ緊張しているのに、追い打ちをかけるようなことをしてしまったのだろうか、と。
他の後輩達も緊張したに違いない。だが優衣は頭を振って、後悔を吹き飛ばす。
魔物との戦いは常に危険と隣り合わせなのだ。
ビックハムスター程度の魔物であれば、優衣が安全を約束し、その通りに乗り切ることも可能だろう。だが魔物は年々強さを増しているという噂もある。戦っている最中、思わぬ強さに成長すこともあった。
相手がどれだけ弱くても安心できるものではない。優衣はいつも、魔物との戦いで気を抜いてはいけないと後輩に言い聞かせていた。無論、自分にも。
「魔物は移動していません」
出発点から五十メートルほど進んだあたりで、澪が報告する。
「ありがとう。わたし達が感知されたら魔物が動きはじめるから、見逃さないでね」
「はい」
後輩の返事と同じくして、木の陰から少年が現れた。右目に眼帯をつけた、鋭い隻眼の学園生。
榊玲央。優衣と同じく、今年が最終在籍念の剣士だ。
「麻衣が目視で魔物を確認した。事前報告どおりのビックハムスターだ」
隣で澪が体を硬くした。
「発見した場所で待機している。お前も見ておくか」
「うん」
玲央に答え、優衣は背後の後輩達を振り返った。
「ちょっと待っててね。魔物を確認してくるから」
茂みにひっかかて大きな音がでないよう、慎重に進む。だんだんと森は深くなり、後輩達の姿が木々の陰に隠れた頃、大きな岩の前に座っている少女を確認した。一眼レフのカメラを大事そうに抱えている。
「麻衣ちゃん、どう?」
「自分で見た方が早いでしょ。岩の向こう側にいるわよ」
五十嵐麻衣の言葉に従ってのぞきこむと、確かにビックハムスターがいる。森の中、出し抜けに木々が途切れた、広場のような場所だ。
「変わったとこはないわよ。全然。情報どおりっていうか、典型的なビックハムスターね。やたら舌をチロチロさせてるし、攻撃方法もアレと牙、爪でしょ。ま、いつもどおりでいいんじゃない」
「麻衣ちゃん達攪乱部隊は、木に登る?広場の中心からは距離あるけど」
「私の部隊の後輩ちゃ…ありす達なら大丈夫」
「じゃあ、作戦はそのままでいこうか。みんなに共有するね」
「待て、優衣」
玲央が後方集団に目をやる。
「クエストが初めての生徒がいたな。優衣の遠距離組だったが…様子はどうだ?」
「えっと…緊張してるけど、フォローするよ。そのためのわたし達なんだし」
ここにいる優衣、玲央、麻衣の三人は同じ年に入学した。年も同じで、今年卒業する友人同士である。彼らはもうすぐ、学園に定められた六年の授業課程を終える、最終在籍年度生徒。俗に言う最上級生だ。その仕事には後輩の育成も含まれる。
「わたし達、あと半年で卒業だよ?ちょっとでも下級生を育てて、安心してクエストをこなせるようにならないと」
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