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第二十二話 そうか、そうだったんだ
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次に見えた光景は、学校だった。
城ケ崎には見覚えのない学校の中の風景だ。どこか知らない教室に自分はいる。
「ここは、一体……?」
歩いている寺嶋の姿が目に入った。
寺嶋は長袖の制服を着ていた。
一緒に来ていた彼は、半袖で私服だったはずだ。
慌てて周囲を見回すと、自分と一緒に来た半袖私服の寺嶋が戸惑っている姿を見つけることができた。城ケ崎はほっと胸を撫で下ろす。
どうやら、長袖の方の彼は幻影のようだ。
なぜだかわからないが、自分たちは過去に起こったことを見ているようだと城ケ崎は理解した。
長袖の寺嶋は今の寺嶋とそんなに見た目が変わらないようだから、つい最近の出来事なのだろうと推察する。いや、よくよく見ると今よりもほんの少し幼い顔立ちをしているだろうか。
「信じてくれないか、君は悪霊に憑りつかれているんだ!」
過去の寺嶋は、生徒の一人に一生懸命に話しかけていた。
周囲の他の生徒たちは、距離を取って遠巻きにしている。
悪霊に憑かれている人が信じてくれなくて、いじめを受けたという時の話かと城ケ崎は思い至った。
彼は助けたくて一生懸命なのに、信じてもらえなかったなんて酷い話だ。
なんて思っていると、気がつく。
青白い「手」が伸びてきている。
憑りつかれていると指摘された生徒の身体へと、今まさに「手」が長い長い腕を伸ばしている。
こんなに「手」が長かったなんて。
そういえば、この「手」はどこから伸びてきているのだろう。
寺嶋は「手」しか見たことがないと言っていた。「手」の先に何があるのか、今ならば見えるのではないだろうか。
城ケ崎は腕の先を目で追った。
「え……?」
理解できなかった。
「手」は、寺嶋の背中から伸びていた。青白い「手」が、寺嶋の背中から生えているのだ。
――どうして、ソウから「手」が?
城ケ崎は、今の寺嶋に視線を移した。
彼の顔色は青褪めて、紙のように白くなっていた。
「……そう、か。そうか、そうだったんだ。は、はは。ははははは!」
「ソウ? どうしたんだ?」
青褪めた顔をしているのに、彼の顔は笑顔を浮かべている。
どう見ても普通ではない様子が気にかかって、そばに駆け寄る。
「はは、ははは。こんなの、タタリくん以外の何者でもないじゃないか」
「ソウ!」
両肩に手を置いて、揺さぶる。
それでも彼が正気を取り戻した様子はない。
「ソウ、一体全体……」
その時、ふっと手の中の感触が消えた。
目の前にいたはずの彼も消えていた。
周囲を見回すが、どこにも姿がない。
いつの間にか周囲の光景もどこかの学校の教室ではなく、元の廃墟めいた祠の前に戻っていた。
「ソウ、ソウ! どこにいるんだ!」
大声で呼びかけるが、返事はない。
額を汗が伝う。
――守ると決めたのに。
「ソウ、お願いだから返事をしてくれ!」
明るく陽光が照らす山の中、どこにも彼の姿はなかった。
「ソウ、中にいるのか!」
廃墟めいた祠の中へと、足を踏み入れてみた。
内部は薄暗くてよく見えなかったが、そんなに広さはない。中に彼がいないことは、すぐにわかった。
「ソウ、ソウ、そんな……守ると誓ったのに」
彼がいなくなってしまった。
守ると誓ったのに、何もできなかった。
絶望が胸の内を満たす。
『レイ……』
その時、彼の声が聞こえた気がした。
「ソウ、どこにいるんだ!」
祠の外から聞こえた気がして、慌てて飛び出す。
『レイ、助けて……』
「ああ、今助けるとも!」
声の聞こえた方角へと全速力で駆ける。
その方向に何があるか、確かめようとすらせずに。
城ケ崎は藪の中へと突っ込んだ。
「馬鹿者!」
突然の大音声。
城ケ崎は吃驚して、思わず立ち止まった。
「その先は崖だ!」
「え……?」
見れば、藪の向こうには崖が広がっていた。
あと少しでも進んでいたら、転がり落ちて真っ逆さまだった。
死んでもおかしくなかった状況だったことを認識して、どっと汗が噴き出す。
「まさか二人だけで祠に来るとはな。とんだ愚か者どもだ」
振り返ると、寺嶋の父親がいた。
僧服の上に、大ぶりな数珠をまとっている。
「ソウのお父さん! ソウが、消えて……!」
「わかっている。とりあえず、寺に戻るぞ」
寺に戻るという言葉が信じられず、衝撃を受ける。
「戻るですって? だって、ソウが……!」
「崇は今すぐにどうにかなったりはせん。それよりも、当てられているこの状況で無目的にうろつけばすぐに死ぬぞ」
「なにか、知っているんですか?」
寺嶋の父親の言葉は、わからないことだらけだ。
父親は城ケ崎の言葉に答えず、ちらりと一瞥して背中を向ける。
「待ってください!」
ついていかざるを得ない。
城ケ崎は僧服の後ろ姿を追った。
城ケ崎には見覚えのない学校の中の風景だ。どこか知らない教室に自分はいる。
「ここは、一体……?」
歩いている寺嶋の姿が目に入った。
寺嶋は長袖の制服を着ていた。
一緒に来ていた彼は、半袖で私服だったはずだ。
慌てて周囲を見回すと、自分と一緒に来た半袖私服の寺嶋が戸惑っている姿を見つけることができた。城ケ崎はほっと胸を撫で下ろす。
どうやら、長袖の方の彼は幻影のようだ。
なぜだかわからないが、自分たちは過去に起こったことを見ているようだと城ケ崎は理解した。
長袖の寺嶋は今の寺嶋とそんなに見た目が変わらないようだから、つい最近の出来事なのだろうと推察する。いや、よくよく見ると今よりもほんの少し幼い顔立ちをしているだろうか。
「信じてくれないか、君は悪霊に憑りつかれているんだ!」
過去の寺嶋は、生徒の一人に一生懸命に話しかけていた。
周囲の他の生徒たちは、距離を取って遠巻きにしている。
悪霊に憑かれている人が信じてくれなくて、いじめを受けたという時の話かと城ケ崎は思い至った。
彼は助けたくて一生懸命なのに、信じてもらえなかったなんて酷い話だ。
なんて思っていると、気がつく。
青白い「手」が伸びてきている。
憑りつかれていると指摘された生徒の身体へと、今まさに「手」が長い長い腕を伸ばしている。
こんなに「手」が長かったなんて。
そういえば、この「手」はどこから伸びてきているのだろう。
寺嶋は「手」しか見たことがないと言っていた。「手」の先に何があるのか、今ならば見えるのではないだろうか。
城ケ崎は腕の先を目で追った。
「え……?」
理解できなかった。
「手」は、寺嶋の背中から伸びていた。青白い「手」が、寺嶋の背中から生えているのだ。
――どうして、ソウから「手」が?
城ケ崎は、今の寺嶋に視線を移した。
彼の顔色は青褪めて、紙のように白くなっていた。
「……そう、か。そうか、そうだったんだ。は、はは。ははははは!」
「ソウ? どうしたんだ?」
青褪めた顔をしているのに、彼の顔は笑顔を浮かべている。
どう見ても普通ではない様子が気にかかって、そばに駆け寄る。
「はは、ははは。こんなの、タタリくん以外の何者でもないじゃないか」
「ソウ!」
両肩に手を置いて、揺さぶる。
それでも彼が正気を取り戻した様子はない。
「ソウ、一体全体……」
その時、ふっと手の中の感触が消えた。
目の前にいたはずの彼も消えていた。
周囲を見回すが、どこにも姿がない。
いつの間にか周囲の光景もどこかの学校の教室ではなく、元の廃墟めいた祠の前に戻っていた。
「ソウ、ソウ! どこにいるんだ!」
大声で呼びかけるが、返事はない。
額を汗が伝う。
――守ると決めたのに。
「ソウ、お願いだから返事をしてくれ!」
明るく陽光が照らす山の中、どこにも彼の姿はなかった。
「ソウ、中にいるのか!」
廃墟めいた祠の中へと、足を踏み入れてみた。
内部は薄暗くてよく見えなかったが、そんなに広さはない。中に彼がいないことは、すぐにわかった。
「ソウ、ソウ、そんな……守ると誓ったのに」
彼がいなくなってしまった。
守ると誓ったのに、何もできなかった。
絶望が胸の内を満たす。
『レイ……』
その時、彼の声が聞こえた気がした。
「ソウ、どこにいるんだ!」
祠の外から聞こえた気がして、慌てて飛び出す。
『レイ、助けて……』
「ああ、今助けるとも!」
声の聞こえた方角へと全速力で駆ける。
その方向に何があるか、確かめようとすらせずに。
城ケ崎は藪の中へと突っ込んだ。
「馬鹿者!」
突然の大音声。
城ケ崎は吃驚して、思わず立ち止まった。
「その先は崖だ!」
「え……?」
見れば、藪の向こうには崖が広がっていた。
あと少しでも進んでいたら、転がり落ちて真っ逆さまだった。
死んでもおかしくなかった状況だったことを認識して、どっと汗が噴き出す。
「まさか二人だけで祠に来るとはな。とんだ愚か者どもだ」
振り返ると、寺嶋の父親がいた。
僧服の上に、大ぶりな数珠をまとっている。
「ソウのお父さん! ソウが、消えて……!」
「わかっている。とりあえず、寺に戻るぞ」
寺に戻るという言葉が信じられず、衝撃を受ける。
「戻るですって? だって、ソウが……!」
「崇は今すぐにどうにかなったりはせん。それよりも、当てられているこの状況で無目的にうろつけばすぐに死ぬぞ」
「なにか、知っているんですか?」
寺嶋の父親の言葉は、わからないことだらけだ。
父親は城ケ崎の言葉に答えず、ちらりと一瞥して背中を向ける。
「待ってください!」
ついていかざるを得ない。
城ケ崎は僧服の後ろ姿を追った。
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