悪逆第四皇子は僕のお兄ちゃんだぞっ! ~商人になりたいので悪逆皇子の兄と組むことにします~

野良猫のらん

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第一部 リューナジア城編

第十八話 お兄ちゃんと先生の共通点

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 ウィルフリートにももちろん家庭教師から受ける授業や何やかんやと予定がある。
 よって僕さえ暇になればいつでも兄の部屋に遊びに行けるという訳ではない。

 僕は暇を潰す為に乳母と一緒に日の当たる中庭をぽてぽてと散歩していた。
 普通の子供みたいに駆け回ったらすぐに体調を崩すから、老人の散歩のようにのろのろ歩くしかないのだ。
 牧歌的な時間が流れる。

「あ、おにーちゃんだー!」

 中庭から見える回廊を歩いている兄の姿を見つけ、僕はぱっと笑顔になった。
 兄も声に反応してこちらを見やる。
 彼も笑いかけてくれるかと思いきや、反対にすっと目元を鋭くして眉間に皺を刻んだ。
 どうしたのだろう、お兄ちゃんは今日は機嫌が悪いのだろうか。

「おにーちゃん!」

 ぽてぽてとゆっくりとした足取りで兄の元へ行く。
 すると彼の眉間の皺が解けて、しかめっ面は消えた。

「カレンか。今日は体調が良さそうだな」
「うん!」

 かすかに兄の口元には微笑が浮かんでいるように見える。
 どうやら別に機嫌が悪い訳ではなさそうだ。

「あのね、おにーちゃん。僕勉強がんばったんだよ!」
「カレン殿下は本日初めて家庭教師を伴っての授業をされたのですよ」

 隣の乳母が説明を言い添えてウィルフリートに微笑みかける。

「そうか。教師はどんな奴だ。意地悪なことをされたらすぐにオレに言え」

 兄は大真面目に尋ねる。
 お兄ちゃんは相変わらず心配症みたいだ。

「大丈夫だよ、おにーちゃん。ジルベール先生はとっても優しいんだよ」
「ほう? ジルベールという男か」

 噂をすれば何とやらか。
 ちょうどそのジルベールが廊下の角を曲がって姿を現したのが見えた。
 今は執事としてのお仕事をしている最中のようだ。

「ほら、あの人だよ! ジルベールせんせー!」

 ジルベールに向かっておーいと手を振って声をかける。
 彼は目を細めて声の方向を探すと、僕の姿を見つけたのか柔らかく微笑んだ。
 穏やかな足取りでこちらに歩み寄ってくる。

「……?」

 その一瞬のジルベールの表情の動きに酷く既視感を覚えた。
 声をかけるとぎゅっと目を細めてこちらの姿を探す動きはついさっきも見た気がする。
 そうだ、お兄ちゃんに声をかけた時だ。

 前世でもああいう仕草をする人間を見たことがあるような気がする。
 目が悪い人が遠くを見る時など、ああいう風に目を細めていなかっただろうか。

 あれ――――もしかしてウィルフリートお兄ちゃんもジルベール先生も近眼なのかな?
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