33 / 171
第一部 リューナジア城編
第三十三話 『金』と『カガク』の世界に
しおりを挟む
「ハハハ、この世界が剣と魔法の世界ですか! 言い得て妙ですな!」
僕の啖呵に、マクシミリアンは本当に愉快なことを聞いたとばかりに哄笑を漏らした。
「お二方とも大した傑物のようだ! それで殿下の発明品の数々、『カガク』と言いましたかな? 既存の世界を壊すほどの代物……よろしい、気に入りました!」
彼の素を剥き出しにした口が裂けたような笑みが浮かべられる。
「我々で『剣』と『魔法』の世界を『金』と『カガク』の世界に塗り替えてやりましょうぞ!」
マクシミリアンは高らかに僕たちのパトロンになることを宣言したのだった。
そもそもこのマクシミリアンという男は根っからの商人だ。
あくまでも商売ではなく行商が好きな僕とは少し方向性が違う。
彼は頭から爪の先まで金を稼ぐことしか考えていない。
そんな彼にとって僕たちのパトロンになる理由など「金が稼げる」の一点だけで充分な筈なのだ。
実際、設計図を見せた段階で完全に餌に食らい付いた顔を見せていた。
あの時点で既にマクシミリアンの頭の中では僕たちに出資することは決定事項になっていた筈だ。
であるにも関わらず彼が「もう既に稼業が安定しているのでパトロンになる理由はないです~」みたいなことを宣っていたのは、交渉の為だ。
『ですがどうしてもパトロンになって欲しいというのであればこちらの条件を呑んでもらいましょうか』、とか何とか言ってあちら側に有利な条件で契約を締結させる為だろう。主に利益の分配などに関して。
まったく、つくづく食えない男だ。
こちらが強気に「じゃあ他のパトロンにする」と言い出しかねないリスクのある危険な一手だが、そこはマクシミリアンのことだ、最初僕たちを侮っていたのだろう。舌先三寸でどうにでも僕たちを丸め込めると思っていたに違いない。
僕だけではマクシミリアンの興味をそそることは出来なかったし、お兄ちゃんだけでもいいように食い物にされていただろう。
これは僕たち二人で勝ち取った勝利だ。
「カレンの言っていたことの真偽を確かめた後でなくていいのか?」
ウィルフリートが片眉を上げて尋ねる。
「それはそれとして調査は行います。しかしその結果がどうあれ、貴方がたとは是非手を組みたい。私、貴方がたの事が気に入ってしまいましたので!」
マクシミリアンは呵々と大笑する。
こうして僕たちはマクシミリアンをパトロンにすることに成功したのだった。
僕の啖呵に、マクシミリアンは本当に愉快なことを聞いたとばかりに哄笑を漏らした。
「お二方とも大した傑物のようだ! それで殿下の発明品の数々、『カガク』と言いましたかな? 既存の世界を壊すほどの代物……よろしい、気に入りました!」
彼の素を剥き出しにした口が裂けたような笑みが浮かべられる。
「我々で『剣』と『魔法』の世界を『金』と『カガク』の世界に塗り替えてやりましょうぞ!」
マクシミリアンは高らかに僕たちのパトロンになることを宣言したのだった。
そもそもこのマクシミリアンという男は根っからの商人だ。
あくまでも商売ではなく行商が好きな僕とは少し方向性が違う。
彼は頭から爪の先まで金を稼ぐことしか考えていない。
そんな彼にとって僕たちのパトロンになる理由など「金が稼げる」の一点だけで充分な筈なのだ。
実際、設計図を見せた段階で完全に餌に食らい付いた顔を見せていた。
あの時点で既にマクシミリアンの頭の中では僕たちに出資することは決定事項になっていた筈だ。
であるにも関わらず彼が「もう既に稼業が安定しているのでパトロンになる理由はないです~」みたいなことを宣っていたのは、交渉の為だ。
『ですがどうしてもパトロンになって欲しいというのであればこちらの条件を呑んでもらいましょうか』、とか何とか言ってあちら側に有利な条件で契約を締結させる為だろう。主に利益の分配などに関して。
まったく、つくづく食えない男だ。
こちらが強気に「じゃあ他のパトロンにする」と言い出しかねないリスクのある危険な一手だが、そこはマクシミリアンのことだ、最初僕たちを侮っていたのだろう。舌先三寸でどうにでも僕たちを丸め込めると思っていたに違いない。
僕だけではマクシミリアンの興味をそそることは出来なかったし、お兄ちゃんだけでもいいように食い物にされていただろう。
これは僕たち二人で勝ち取った勝利だ。
「カレンの言っていたことの真偽を確かめた後でなくていいのか?」
ウィルフリートが片眉を上げて尋ねる。
「それはそれとして調査は行います。しかしその結果がどうあれ、貴方がたとは是非手を組みたい。私、貴方がたの事が気に入ってしまいましたので!」
マクシミリアンは呵々と大笑する。
こうして僕たちはマクシミリアンをパトロンにすることに成功したのだった。
76
あなたにおすすめの小説
【完結】我が兄は生徒会長である!
tomoe97
BL
冷徹•無表情•無愛想だけど眉目秀麗、成績優秀、運動神経まで抜群(噂)の学園一の美男子こと生徒会長・葉山凌。
名門私立、全寮制男子校の生徒会長というだけあって色んな意味で生徒から一目も二目も置かれる存在。
そんな彼には「推し」がいる。
それは風紀委員長の神城修哉。彼は誰にでも人当たりがよく、仕事も早い。喧嘩の現場を抑えることもあるので腕っぷしもつよい。
実は生徒会長・葉山凌はコミュ症でビジュアルと家柄、風格だけでここまで上り詰めた、エセカリスマ。実際はメソメソ泣いてばかりなので、本物のカリスマに憧れている。
終始彼の弟である生徒会補佐の観察記録調で語る、推し活と片思いの間で揺れる青春恋模様。
本編完結。番外編(after story)でその後の話や過去話などを描いてます。
(番外編、after storyで生徒会補佐✖️転校生有。可愛い美少年✖️高身長爽やか男子の話です)
たとえば、俺が幸せになってもいいのなら
夜月るな
BL
全てを1人で抱え込む高校生の少年が、誰かに頼り甘えることを覚えていくまでの物語―――
父を目の前で亡くし、母に突き放され、たった一人寄り添ってくれた兄もいなくなっていまった。
弟を守り、罪悪感も自責の念もたった1人で抱える新谷 律の心が、少しずつほぐれていく。
助けてほしいと言葉にする権利すらないと笑う少年が、救われるまでのお話。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。
はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。
2023.04.03
閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m
お待たせしています。
お待ちくださると幸いです。
2023.04.15
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。
m(_ _)m
更新頻度が遅く、申し訳ないです。
今月中には完結できたらと思っています。
2023.04.17
完結しました。
閲覧、栞、お気に入りありがとうございます!
すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる