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第一部 リューナジア城編
第五十二話 お医者さんに会いに行く
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「ここか……まさか城下町にこんなボロ家があるとはな」
馬車から降りた僕たちは、目的地の医者の家の外観が想像上のそれとあまりにもギャップがあることに慄いていた。
そこには汚れて寂れた小さな家が一軒ポツリと立っているだけだった。
「うわっ」
突然つま先に刺激を感じて飛びのくと、放し飼いにされている鶏が続けて二度、三度と僕の足を突っつこうとしてきた。
「しっ、しっ」
お兄ちゃんに追い払われ、鶏はコッコッと鳴きながら遠ざかっていった。
「なんか、お医者さんのお家にしては随分……牧歌的だね」
「ああ、これは予想外だ」
僕の言葉を選んだ表現に、お兄ちゃんは呆然とした様子で頷いた。
「まあ件のブラックウェル氏は間違いなくここにいる筈だ」
ブラックウェル氏というのが例の論文を書いた人の名だ。
お兄ちゃんは意を決してドアをノックした。
……反応はない。
「いないのかな?」
「そしたら無駄足になってしまうな」
お兄ちゃんはさらに力を込めてノックした。
ドン、ドン、ドン。
「ッるっせェぞ!」
突然ドアが乱暴に開き、お兄ちゃんは危うくドアに強かに顔を打ち付けるところだった。
ドアを開けて出てきたのは、髪をツンツンに尖らせた粗暴そうな若い男だった。
どう見ても医者とは思えない。
それどころか、僕はその男に見覚えがあった。
「ああー!! いつも変な物を買っていく人っ!」
「あぁ?」
そいつはタソトキで行商人プレイをしていた時に時折見かけた客だった。
客なんて各地に何人もいるから大半はあまり記憶してないのだが、このツンツン頭の男はいつも変な物を買っていくのでよく印象に残っていた。
激レアな薬草とか、生きたネズミだとかの意味不明な物をよく買っていくのだ。たまたま拾っただけのよく分からない動物の骨を買い求めてきたこともあった。
イケメンと言えなくもない華のある顔つきをしているし、もしかしたら攻略対象の一人なのかもしれないとは思ったが、深くは詮索しなかった。
だから名前も職業も何も知らないままだった。多分ググれば分かることだったろう。
まさかこいつが医者、なのか……!?
「カレン、まさか知り合いなのか?」
「俺はこんなガキなんざ知らねえよ」
僕の呟きを聞いたお兄ちゃんの問いに僕が答える前に男の方が答えた。
ううん、見た目通りの粗暴な口調。
医者どころか薬学のやの字も知らなさそうな男だ。
「う、ううん、何でもない。間違えた」
ふるふると首を横に振って誤魔化した。
その言葉に男が反応する。
「なんだ、間違いで来たのか?」
「いえ、オレたちは医師のシア・ブラックウェル氏に会いに来ました」
今にもドアを閉じてしまいそうな男に、兄が慌てて口を挟む。
だが男はその言葉に大きく眉を顰めた。
「シア・ブラックウェルなら俺だが、俺は医者なんかじゃねえ――――死霊術士だ」
馬車から降りた僕たちは、目的地の医者の家の外観が想像上のそれとあまりにもギャップがあることに慄いていた。
そこには汚れて寂れた小さな家が一軒ポツリと立っているだけだった。
「うわっ」
突然つま先に刺激を感じて飛びのくと、放し飼いにされている鶏が続けて二度、三度と僕の足を突っつこうとしてきた。
「しっ、しっ」
お兄ちゃんに追い払われ、鶏はコッコッと鳴きながら遠ざかっていった。
「なんか、お医者さんのお家にしては随分……牧歌的だね」
「ああ、これは予想外だ」
僕の言葉を選んだ表現に、お兄ちゃんは呆然とした様子で頷いた。
「まあ件のブラックウェル氏は間違いなくここにいる筈だ」
ブラックウェル氏というのが例の論文を書いた人の名だ。
お兄ちゃんは意を決してドアをノックした。
……反応はない。
「いないのかな?」
「そしたら無駄足になってしまうな」
お兄ちゃんはさらに力を込めてノックした。
ドン、ドン、ドン。
「ッるっせェぞ!」
突然ドアが乱暴に開き、お兄ちゃんは危うくドアに強かに顔を打ち付けるところだった。
ドアを開けて出てきたのは、髪をツンツンに尖らせた粗暴そうな若い男だった。
どう見ても医者とは思えない。
それどころか、僕はその男に見覚えがあった。
「ああー!! いつも変な物を買っていく人っ!」
「あぁ?」
そいつはタソトキで行商人プレイをしていた時に時折見かけた客だった。
客なんて各地に何人もいるから大半はあまり記憶してないのだが、このツンツン頭の男はいつも変な物を買っていくのでよく印象に残っていた。
激レアな薬草とか、生きたネズミだとかの意味不明な物をよく買っていくのだ。たまたま拾っただけのよく分からない動物の骨を買い求めてきたこともあった。
イケメンと言えなくもない華のある顔つきをしているし、もしかしたら攻略対象の一人なのかもしれないとは思ったが、深くは詮索しなかった。
だから名前も職業も何も知らないままだった。多分ググれば分かることだったろう。
まさかこいつが医者、なのか……!?
「カレン、まさか知り合いなのか?」
「俺はこんなガキなんざ知らねえよ」
僕の呟きを聞いたお兄ちゃんの問いに僕が答える前に男の方が答えた。
ううん、見た目通りの粗暴な口調。
医者どころか薬学のやの字も知らなさそうな男だ。
「う、ううん、何でもない。間違えた」
ふるふると首を横に振って誤魔化した。
その言葉に男が反応する。
「なんだ、間違いで来たのか?」
「いえ、オレたちは医師のシア・ブラックウェル氏に会いに来ました」
今にもドアを閉じてしまいそうな男に、兄が慌てて口を挟む。
だが男はその言葉に大きく眉を顰めた。
「シア・ブラックウェルなら俺だが、俺は医者なんかじゃねえ――――死霊術士だ」
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