悪逆第四皇子は僕のお兄ちゃんだぞっ! ~商人になりたいので悪逆皇子の兄と組むことにします~

野良猫のらん

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第二部 セルフィニエ辺境伯領編

第百六話 ホウレンソウは大事!

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 お兄ちゃんの部屋は僕の部屋の結構近くだった。
 公爵家の嫡男だということになっているから、皇族に次ぐ立派な客室を充てがわれたのだろう。

「人前ではオレのことを名前で呼んだ方がいいだろうな。誰にでもあの苦しい言い訳が効くとは思えない」

 部屋に入るなり前置きもなく話し出すお兄ちゃん。
 お兄ちゃんは時々それまでずっと話が続いていたみたいに突然喋り出すことがあるので、僕はもう慣れた。

「え、じゃあウィルフリートって呼ぶの?」
「それがいいだろう」
「お兄ちゃんのこと呼び捨てにするのなんか変な気分だよ……」

 僕が難色を示すと、お兄ちゃんは片眉を上げた。

「慣れろ。身分が違えば当たり前のことだ」

 大人同士ならばたとえ下の身分でも相手を敬ってさんとか様付けするかもしれないけど、子供同士だったら呼び捨てが自然かもしれない。
 お兄ちゃんに協力する為にもここはお兄ちゃんを呼び捨てにするしかないだろう。

「じゃあせめてウィルって縮めて呼んでいい?」

 上目遣いに尋ねた後で、失言だったかなと思い至る。
 第一皇子がお兄ちゃんを呼ぶ時の呼び方と一緒じゃないか。
 きっとお兄ちゃんにとっては不快な呼ばれ方だろう。

「ウィル、ウィルか……悪くない」

 ところがお兄ちゃんは口の中で転がすように愛称を呟くと、上機嫌そうにニヤリと笑った。
 何だかよく分からないが不快ではなさそうなので、人前ではお兄ちゃんのことをウィルと呼ぶことにした。

「ところでそろそろ本題に入ろうよ。なんですぐにお兄ちゃんも南に来るって教えてくれなかったの!?」

 僕は怒ってますと示す為に頬をぷくっと膨らませてお兄ちゃんを睨み付けた。

「……え? 言ってなかったか?」
「聞いてないよ、一言も! お兄ちゃん、報連相が足らない!」

 どうやらドッキリの為とかではなく、本気でとっくのとうに僕に伝えているものと思っていたらしい。
 一見完璧に見える兄にもこういう抜けているところがある。
 情報が勝手に自分の中で完結してしまうのだ。頭がいい人特有の特徴なのだろうか。

「ホウレン……? それは、いや、すまん。そうか、それであんなに心細そうだったのか。てっきりたとえ一週間程度であってもオレから離れるのは寂しいのだとばかり……」
「もー!」

 僕のあの悲壮感をお兄ちゃんは兄弟離れできない幼子のぐずつきみたいに思っていたらしい。
 まったく、お兄ちゃんたら! ぷんぷん!
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