白銀殿下と疎まれオメガの契約婚

野良猫のらん

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第十二話 さなかに*

 「あっ、あ、ぁ、あぁ……ッ!」
 
 もう四半刻は経っただろうか。ずっとエドゥアールに啼かされてしまっている。
 
 すっかり解れた後ろに、彼の指が複数本挿入っている。時折前も弄られ、数回達してしまっている。
 感じる度に、ぎゅっと彼の手を握り締めた。すると彼も握り返してくれるのだ。その度に胸の内の想いが、口から零れ出そうになってしまった。口にせずに済んでいるのは理性によるものではない。単に先に嬌声が口から出てしまうだけだ。
 
「あンっ、エドゥ、ほしい……っ!」
 
 もはや彼の名前をきちんと呼ぶ余裕もない。涙目で、いっそ早く中に出してくれとこい願った。
 
「指じゃ、なくて……っ!」
「そうだね、私もそろそろ限界かもしれない」
 
 湿った音を立てて、指が引き抜かれた。内側を満たす圧迫感が急に減り、秘部が寂しげに口を開け閉めする。
 
 指の代わりに、熱いモノを押し当てられる。何度も受け入れてきたモノのはずなのに、今日は一層熱さと質量を感じる。抱きたい、という欲望を感じて腹の奥がまた疼く。
 
 乱れてしまってもいいのだ。彼は受け入れてくれる。
 
「エドゥアール、もう片方の手も……」
「ああ」
 
 手を伸ばすと、すぐに握ってくれた。
 両手を繋ぐと安堵感が胸の内に満ちる。リュシアンは穏やかな気持ちで、押し込まれる剛直を受け入れた。
 
「……ッ!」
 
 生理的な涙が流れる。でも痛みはない。
 
「大丈夫か?」
 
 彼の問いかけに、こくこくと頷いた。
 それからまっすぐに彼を見つめた。銀青色の瞳には、金色の瞳が満月めいて映っている。
 
「うごいて……」
 
 小声でねだった。
 内側で熱が脈打っているのを感じる。
 
「ああ」
 
 彼はただ短く答えて、律動を始めた。
 
「あっ、あぁ……っ!」
 
 腰を引いて、奥まで再び進む。あくまでも穏やかな動きなのに、指で愛撫され尽くして敏感になった身体に快感が走る。
 
「あっ、あっ、んっ、ぁ……っ!」
 
 彼が動く度に、喘いでしまう。彼に愛撫されて初めて知った身体の内側の性感帯を、彼自身が擦り上げていく。その度に快感が生じて、声が出てしまう。
 
「エドゥ、エドゥ、ぁ……っ!」
 
 速さを増していく律動に、彼の名を呼んでしまう。性的快感が、胸の内の恋しさや愛しさや切なさをぐちゃぐちゃに掻き混ぜて、無性に名前を呼びたくさせる。
 
「リュシアン、リュシアン……ッ!」
 
 肉を打つ乾いた音が響くほどに、激しく腰が打ち付けられる。時折雫が降り注いでくるのを感じるのは、彼の汗だろうか。
 貪るような律動の最後、額と額がぶつかりそうなほどに彼は身体を折り、最奥まで穿った。
 
 瞬間、頭の中で白い火花が散った。
 
「ひぅ……エ、ドゥ……」
 
 達した瞬間に、ぐっと肉壁が彼自身を強く握り締めた。最奥まで熱く濃い熱が、並々と注がれていった……。

 
 束の間、意識を失っていたのかもしれない。気がつけば接合が解かれていて、エドゥアールが身体を拭いてくれていた。彼はまだ裸で汗だくなので、そう時間は経っていないことが見て取れる。
 
「エドゥアール……」
 
 性交後の倦怠感を残したまま、少し掠れた声で名を呼んだ。するとエドゥアールは、リュシアンが意識を取り戻したことに気がついたようだ。
 
「すまない。今晩は無理をさせてしまったな。少し、調子に乗りすぎてしまった。今後はもう二度と、このようなことがないようにする」
 
 彼は開口一番に、なぜか謝罪の言葉を口にした。
 
「え?」
 
 不快な行為だったとは一言も言ってないのに、何を一人で先走っているのだろう。
 
「本当にすまなかった」
 
 リュシアンの身体を清め終わったら、そのまま去ってしまいそうな雰囲気だ。
 
「待て」
 
 リュシアンは慌てて彼の腕を掴んだ。
 
「たしかに、ちょっと加減してほしいとは思ったよ。でも……別に嫌じゃないから!」
 
 何を叫んでいるのだろう自分は。顔が真っ赤になるのを感じたが、勘違いさせぬようにと彼から視線を外せなかった。
 
「本当か?」
「本当に嫌だったら、最中にお前を蹴ってるよ。俺はか弱くなんかない」
 
 彼はぱちぱちと長い睫毛を瞬かせる。
 
「ふ、ふふ……たしかにそうだな。君を本気で怒らせたら、たしかに蹴られそうだ」
 
 彼はくすくすと笑い出した。蹴られそうだと肯定されたのは複雑だが、安心させられたならば何よりだ。
 
「では、これからはもう少し君に触れたい。許してもらえるだろうか」
「ああ」
 
 囁くような声音に、どうしても顔が熱い。
 貪るような交わりを思い出す。あれは欲ゆえだろうか。それとも、彼も少しは自分に想いを抱いてくれているのだろうか。
 
 期待に心が揺れた。
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