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第四話 カッコいいギルマスに拾われる
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「最近、この辺りでガラの悪い連中に被害を受けたという報告が多くてな。パトロールしていたのだ」
パトリックと名乗った男は、剣を鞘に納めながら説明した。
「君、怪我は? 家まで送ろう」
「家はないです、旅人なので……」
彼は安心させるように微笑みを向けてくれる。
俺が男に襲われていたことに彼が触れないでいてくれるので、助かったという心地になる。
「ならば宿まで送ろう」
「宿もまだ取ってないんです。町に着いたばかりで」
町について早々、怪しい男たちについていって襲われた事実が情けない。
俺はぼそぼそと答えた。
「そうか……ならば、とりあえず私のギルドに来るかい?」
「は、はい!」
彼の親切な提案に、俺は一にも二にもなく頷いた。
どこだろうとこの寂れた裏路地よりはずっと良い場所に違いなかった。
◆
冒険者ギルド、シルバークロウ。
その一室に俺は通され、身体を清めるための清潔な布とお湯を用意してもらい、一人にしてもらった。
男たちに素肌を触られた感触を忘れたかった俺は、ありがたく身体を拭かせてもらった。
ソファに埋もれるように座ってぼうっとしていると、ノック音。
ドアを開けると、パトリックの顔がそこにあった。
「お腹は減っているかな? パンとスープを持ってきたのだが」
スープの温かそうな匂いが香る。
途端に、ぐううと腹が鳴ったように感じられた。
「お腹、減ってます。ありがたいです」
俺の返答に彼はくすりと微笑み、室内に入ってきた。
テーブルの上にパンとスープの載った盆を置いてくれる。
「いただきます!」
手を合わせ、俺はパンとスープにありがたく手をつけた。
「君はこれからどうするつもりなんだ?」
あらかた食べ終わった頃、パトリックが優しく尋ねてきた。
「あの、ここって冒険者ギルドなんですよね?」
「ああ、そうだとも」
「……俺、ここで働きたいです!」
彼が冒険者ギルドのマスターだと名乗った時から、これは幸運だと思っていた。
冒険者ギルドというからには、冒険者の働く場所のはずだ。
職を得て、冒険者のイロハをいろいろと知るチャンスだ。
「それはあまりおすすめできないな」
だが、彼は首を横に振った。
「なぜですか!?」
「冒険者というのは憧れるような職業ではない。憧れや一攫千金狙いだけで冒険者を目指そうと思っているのならば、やめた方がいい。冒険者というのは、家も家族も故郷もない流れ者が日銭を稼ぐために残された最後の手段だ」
パトリックは、穏やかな声で諭す。
「だから、です。この世界には、家も家族も故郷もないので……」
俺は俯きながら自嘲めいた笑みを浮かべる。
異世界転生だなんだと浮かれていたけれど、頼れる人が誰もいない状況でスタートってよくよく考えると結構なハードモードだなと。
今さら現実が見えてきた。
「それは……すまない。そうだな、冒険者を目指す者にはみな事情がある。私が愚かだった」
俺の言葉を聞いて、彼が申し訳なさそうに眉を下げた。
「そんな、謝らないでください!」
「『シルバークロウ』は出自や人種その他の事情に関わらず、実力のある冒険者ならば採用してきた。なのに君には門前払いするような言動を取ってしまった。謝らせてほしい」
彼は頭を下げた。
真面目な人だ。彼の態度を見て、異世界転生さえすればバラ色人生スタートだと浮かれていた少し前の自分が恥ずかしくなった。
今の俺に頼れる人がいないのは事実だが、俺は彼の思っていたような『憧れだけで冒険者を志望するおのぼりさん』そのものだった。
「だから、君が本気ならばギルドの入団試験を受けてもらいたい。君がうちでやっていけるだけの実力があると分かれば、是非とも歓迎したい」
「是非とも受けさせて下さい!」
いずれにせよ、巡ってきたチャンスは物にしなければ。
「そういえば君、名前は?」
「俺はレイヤ。上倉レイヤです」
「レイヤくんか。君にこのシルバークロウの入団試験を課そう!」
パトリックさんはにこりと笑った。
パトリックと名乗った男は、剣を鞘に納めながら説明した。
「君、怪我は? 家まで送ろう」
「家はないです、旅人なので……」
彼は安心させるように微笑みを向けてくれる。
俺が男に襲われていたことに彼が触れないでいてくれるので、助かったという心地になる。
「ならば宿まで送ろう」
「宿もまだ取ってないんです。町に着いたばかりで」
町について早々、怪しい男たちについていって襲われた事実が情けない。
俺はぼそぼそと答えた。
「そうか……ならば、とりあえず私のギルドに来るかい?」
「は、はい!」
彼の親切な提案に、俺は一にも二にもなく頷いた。
どこだろうとこの寂れた裏路地よりはずっと良い場所に違いなかった。
◆
冒険者ギルド、シルバークロウ。
その一室に俺は通され、身体を清めるための清潔な布とお湯を用意してもらい、一人にしてもらった。
男たちに素肌を触られた感触を忘れたかった俺は、ありがたく身体を拭かせてもらった。
ソファに埋もれるように座ってぼうっとしていると、ノック音。
ドアを開けると、パトリックの顔がそこにあった。
「お腹は減っているかな? パンとスープを持ってきたのだが」
スープの温かそうな匂いが香る。
途端に、ぐううと腹が鳴ったように感じられた。
「お腹、減ってます。ありがたいです」
俺の返答に彼はくすりと微笑み、室内に入ってきた。
テーブルの上にパンとスープの載った盆を置いてくれる。
「いただきます!」
手を合わせ、俺はパンとスープにありがたく手をつけた。
「君はこれからどうするつもりなんだ?」
あらかた食べ終わった頃、パトリックが優しく尋ねてきた。
「あの、ここって冒険者ギルドなんですよね?」
「ああ、そうだとも」
「……俺、ここで働きたいです!」
彼が冒険者ギルドのマスターだと名乗った時から、これは幸運だと思っていた。
冒険者ギルドというからには、冒険者の働く場所のはずだ。
職を得て、冒険者のイロハをいろいろと知るチャンスだ。
「それはあまりおすすめできないな」
だが、彼は首を横に振った。
「なぜですか!?」
「冒険者というのは憧れるような職業ではない。憧れや一攫千金狙いだけで冒険者を目指そうと思っているのならば、やめた方がいい。冒険者というのは、家も家族も故郷もない流れ者が日銭を稼ぐために残された最後の手段だ」
パトリックは、穏やかな声で諭す。
「だから、です。この世界には、家も家族も故郷もないので……」
俺は俯きながら自嘲めいた笑みを浮かべる。
異世界転生だなんだと浮かれていたけれど、頼れる人が誰もいない状況でスタートってよくよく考えると結構なハードモードだなと。
今さら現実が見えてきた。
「それは……すまない。そうだな、冒険者を目指す者にはみな事情がある。私が愚かだった」
俺の言葉を聞いて、彼が申し訳なさそうに眉を下げた。
「そんな、謝らないでください!」
「『シルバークロウ』は出自や人種その他の事情に関わらず、実力のある冒険者ならば採用してきた。なのに君には門前払いするような言動を取ってしまった。謝らせてほしい」
彼は頭を下げた。
真面目な人だ。彼の態度を見て、異世界転生さえすればバラ色人生スタートだと浮かれていた少し前の自分が恥ずかしくなった。
今の俺に頼れる人がいないのは事実だが、俺は彼の思っていたような『憧れだけで冒険者を志望するおのぼりさん』そのものだった。
「だから、君が本気ならばギルドの入団試験を受けてもらいたい。君がうちでやっていけるだけの実力があると分かれば、是非とも歓迎したい」
「是非とも受けさせて下さい!」
いずれにせよ、巡ってきたチャンスは物にしなければ。
「そういえば君、名前は?」
「俺はレイヤ。上倉レイヤです」
「レイヤくんか。君にこのシルバークロウの入団試験を課そう!」
パトリックさんはにこりと笑った。
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