異世界転生した僕、実は悪役お兄様に溺愛されてたようです

野良猫のらん

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第四十五話 討伐隊、出発

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 冒険者たちが広場に集結している。
 遂に討伐決行の日が来たのだ。

「よろしくお願いします」
「はい……!」

 イザイアはメイジの少年の傍にいる。
 少年の箒の後ろに乗せてもらい、飛びながらイザイアの光魔術をゾンビフェニックスに当てる算段だ。
 彼女以外にも飛行魔術が使える者には積極的に飛んで攻撃してもらおうと思っている。

「箒に跨るなんて久しぶりね」

 ソーサラーの女冒険者が楽しそうに微笑している。
 冒険者たちはちっとも臆してはいないようだ。なんて頼もしいのだろう。
 皆指にグロスマン商会から買った火耐性リングを嵌めている。

「これがグロスマン商会から買った新しいビデオだ。本当にこの魔導具デバイスを起動させるだけの魔力はあるのだろうな?」

 ロベールがクライヴに新型のビデオを手渡している。
 剣士なのであまり今回の攻略では役割のないクライヴが地上から戦闘の様子を撮影してくれることになっているのだ。

「ああ、大丈夫だ。今回のこのビデオとやらはリアルタイムで映像をそっちの水晶玉に映し出すんだろう? オレたちの討伐が失敗したらすぐにそっちに伝わるから逃げる時間が稼げるワケだ」
「成功すると信じてるけどね」

 今回グロスマン商会から買った新型のビデオはリアルタイムで生中継がされる。対になる水晶玉があり、そちらに映像が映し出されるのだ。なんでも僕たちのイヤリングにも使われている共鳴石を応用した最新の魔導具デバイスらしい。

「それにしてもエーミールたちはまだか……」

 ヒーラーボールはまだ届いていない。
 隣村からこの村まで来る途中の道のりでヒーラーボールを満載した馬車がぬかるみにハマって身動きが取れなくなったと連絡があり、エーミールや他の従業員たちが馬を走らせて迎えに行ったのだ。
 彼らはまだ戻って来ていない。

「冒険者の皆さん、ヒーラーボールが届きました!」

 その時、エーミールと他の従業員が馬を走らせて飛び込んできた。
 広場で馬を止めると、馬に括り付けた荷物からヒーラーボールを取り出すと代金も受け取らずに次々に冒険者たちに配り出す。

「あのいつも冷静で何食わぬ顔をしているキルンベルガーが、あんなに汗だくになって……」

 ロベールはエーミールの行いにジンときているかのように呟いた。
 それにしてもロベール、エーミールの名字ちゃんと覚えてるんだね。僕なんて何百週もゲームしてるのに忘れちゃってたよ。

 ヒーラーボールを大方配り終わった頃、僕はエーミールに声をかけに行った。

「ご苦労だった。ヒーラーボールの代金は後ほど城からまとめて払おう」
「いいえ、お代はいりません」
「なんだと……!?」

 僕はエーミールの言葉に仰天した。

「元々本店の倉庫で燻っていたような品です。それに領主様には新型のヴィデ・オブスキュラを大枚叩いて購入していただきましたし、何よりこの討伐戦で冒険者の死者数を抑えることが私どものためにもなるのです。冒険者たちは、この村の大事な資産です……! 『本当に有能な商人は互いが得をする提案を提示することができる』、私のモットーです。そして今回の場合、ヒーラーボールを無料で提供することこそがお互いが最も得する取引である。そのように考えたまでです」

 エーミールは荒い息を整えるかのようにカチャリとメガネを直した。

「ありがとう。感謝する……!」
「これからも当商会と変わらぬお付き合いをお願いいたします」

 エーミールはニコリと微笑む。

「これで討伐の準備が整った……! 諸君、準備はいいか……!」
「オォ―ッ!!!!」

 鬨の声が上がる。
 ――――フロアボス討伐隊、出発である。
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