19 / 31
沈黙せず
しおりを挟む
今日の夜会はいつもと違った。
グレースは名を呼ばれ会場に入ると二度見された。
今まではそれなりに視線が向けられることはあったものの入場者への礼儀だ。戸惑ったような視線が二度目にやってくることはほとんどない。
「どこかおかしいのではないかしら」
グレースは思わずつぶやく。布地としてみたときには気にならなかったが実際着たときは違った。腰の細さを強調するようなデザインだったのだ。さほど細くないのにいつもよりもきゅっと引き締まって見える効果は賞賛したいが、こうも視線を向けられると変だったのではないかと思い始めてくる。
「お美しいです」
声を潜めてフィデルが言う。会場ではしゃべらないと言っていたにもかかわらず。
「問題があれば、護衛として排除します」
「つーか、触ったらぶっ飛ばすし」
触る? どこを? と問い返す間もなく、知り合いから声をかけられた。学生時代の友人や学友とは今も交流があり、夜会でも話をすることはある。しかし、今日はいつになく熱心に見えた。
いつも素敵ですけど、今日のお召し物、どちらで? から始まり、その腰の細さはどこのコルセットを? 肌がきらめていますけど、なにをつけられたの? など、美容に関することばかり聞かれる。
新しい侍女の特殊技術で、と曖昧に返答するだけのグレースを不満げに見るものもいたが、ほかに言いようがない。
美容のプロ(男)と衣装のプロ(男)と歩き方のプロ(男)が大活躍した、などと話すのも支障があるだろう。本人たちも公表はちょっと……という立場である。
なお、歩き方のプロには歩きにくい靴でも走れる特殊技術も指南してもらっている。
それが一段落したところで、今度は男性が近寄ってきた。今までにないことである。
さらに口々に褒められてグレースは困惑した。
男性にとってグレースは魅力的ではないという自覚はあった。
美貌というわけでもなく、性格に可愛らしさもなく、地位も金もあるが婚約済み。それも他国の王子だ。あまりのリスクの高さに火遊びの誘いすらやってこなかった。
どういうこと? と思いながらも礼を返した。
他にも何か言いたげではあったが、グレースの背後を確認して早々に退散していっている。
「なにかしら」
「グレース様の魅力にいまさら気がついたのでは?」
フィデルがぼそぼそと返答したが、グレースにとっては納得できるものではなかった。ちょっと見てくれが良くなった程度で、危険を冒したいと思うわけがない。
以前と変わったところがあるはずだ。
「ああ、そういうこと」
他国に嫁がないのであれば、侯爵家の一人娘として婿を探すことになるからであろう。もし万が一、婚約が解消されなければ王妃だ。顔を売っておくのも悪くはないだろう。
そういうことにいまさら気がついたのかもしれない。
グレースとしてはそれには納得感がある。
「絶対わかってないですよね」
「あなた黙ってるって言ってなかった?」
「危なっかしくて、これなら」
フィデルはそう言って黙った。
これなら、なによ、と返す間もなく、ラッパの音が響いた。王族の入場の前には鳴らされるのである。建国以来の伝統であり、そのラッパも建国当時からあるという話だ。
今までなら普通に聞き流していたが、精霊の話を聞いた後となるとこれにも意味があるのではと勘繰ってしまう。
「うにゃ!」
ネコイチロウが鞄の中から応じている。
王が現れた時、ふわりと風が通り抜けた。清々しい森の匂いと共に。
夜会は穏やかに進んでいった。名目は王の生誕祭なので、お祝いのための列ができている。これは王都より遠い地域の者から優先される。年に何度も王都に来れないからだ。
贈り物は断られており、そこで競うこともない。
グレースは話しかけられるのも嫌で王族の近くで聞くともなしに聞いていた。祝いの言葉と国の繁栄を願うことの繰り返しであるが、意外とバリエーションがある。
耳を傾けているうちに声に重なる別の音があった。聞き取れそうで、少しだけ異音が混じり理解できない音はやけに耳に残る。
音に意識しているうちにわかりそうになる。あとちょっと、だ。
「グレース様」
ミラに呼ばれてグレースははっとした。もうその時にはもう音は音でしかなかった。意味もわからず、流れる風の音のようだった。
ひやりとした空気がグレースの周りを吹き抜ける。
「拙者、役目中のため、挨拶は後ほどにいたします。
おお、寛大な対応、さすが、……様。こちら我が主のグレース様で」
ネコイチロウが誰かにグレースを紹介していた。
「猫が鳴いたような」
そういいながらクリスが怪訝そうにあたりを見渡している。ミラは素知らぬ顔をしていたが、やや眉が寄っていた。
グレースも何も聞こえなかったふりをすることにした。
何だろうと首をひねるクリス。勝手に鞄がゆらゆらしていた。明らかに不審な動きだ。グレースは諦めて中身を出すことにした。
夜会で猫を装備。周囲どころか変な噂が駆け巡りそうではあるが、うごめくぬいぐるみを確認されるよりは多分ましである。
それ以外には問題は起きず、夜会は進む。
祝いの列も減りグレースはようやく並ぶことにした。順調に進み王へ祝いの言葉を伝えるが、あまり心は籠っていなかった。
王がもの言いたげに猫のぬいぐるみに視線を向けている。
「おじさま、可愛い護衛でしょう?」
「そうだな。護衛がいらないようだと良かったのだが」
「私は大丈夫です」
しかしなと続けた王は黙った。グレースの後ろになにか恐ろしいものでもみたように視線を向けたまま。
背後にいるのはミラとクリスではあるが、上の方を見ているわけではないのでクリスではないだろう。振り返ってみたい衝動を覚えつつ、グレースはなにかしらという表情で見返す。
「……後ろの侍女にもよろしく伝えてくれ。
くれぐれも、気をつけるように」
「承知しました」
そう返してグレースは王の前を退いた。まだ数人残っている。他国からの使者から書簡を受け取りもある。個人的やり取りという名目で内容が公開されることはない。
その使者とグレースはすれ違った。
ふわりと花の匂いがした。
嗅いだことのあるような匂いだが、なんだろうと振り返っても誰もいなかった。
「しばらく、離れます」
ミラはそういってしばしグレースから離れた。しかし、何かを見つけることもできず戻ってきた。かなり渋い表情で。
会場の隅でグレースは報告を聞く。異常はいまのところなにもないが、違和感だけはあるらしい。それで苛立っているというのかと思えば違ったらしい。
「俺が可愛すぎるので、あちこちで声をかけられ不快でした」
「……自分で言うところが、あなたらしいわね」
「技術への自信です。でも、ここまで可愛くする必要はなかったと思いました。次からは加減します」
なぜかグレースを直視しつつそう宣言した。
そうこうしているうちに室内では音楽が流れてきた。食事会という形の夜会もあるが、今日は踊るほうの夜会であったが、グレースはいつも通り踊らずに済ませるつもりだった。
婚約者がいるものは婚約者以外と踊らないものだ。そこにいないときは例外として認められることはあるが、いままでグレースに願うものはいなかった。
しかし、今日はとても誘われた。踊りの申し込みの列ができるほどである。
それを婚約中であることを理由に一律断ったが、思った以上に気疲れしてしまう。
「帰るわ。
そのほうが都合が良いでしょう?」
「ごった返す馬車留めで護衛するよりはとても気楽です」
クリスはそういうが心なしか心配そうではあった。
「侯爵閣下と同乗されては」
「お父様にはお父様のお仕事があるもの」
誕生祝いのための使者は、それだけで仕事を終わらせない。今日は隣国からも人が来ている。婚約者の手の者だろうから、会わないわけにもいかない。
グレースには挨拶にも来なかった。それだけで扱いの軽さがわかる。
「ですが……」
ためらうクリスを置いてグレースは先に歩き出した。廊下はがらんとしており、時折、警備ものが二人組で通り過ぎるだけだった。
夜会を途中で抜けるものはいるが、今日は特別な夜会である。普通は最後までいるだろう。
余計な誰かを巻き込むこともないだろう。
「何かあったら、担ぎます」
「お手柔らかに頼むわ」
クリスは余裕があったらと冗談めかして言っている。
フィデルがやけに静かだなと思って視線を向ければ、宙を睨んでいた。
「上司と口げんか中でありますぞ。ちょっと御屋形様にはお聞かせできない下品な感じです」
「なにについて?」
「精霊使いが発見できなかった無能とか罵っておりますな」
のんびりと言っているが、精霊様にそんな口をきくのかと思うとグレースでさえも引く。
「あれはわかってて泳がせているんであると思います、が?」
「へぇ? ネコイチロウ、わかったんだ?」
いつぞや聞いたような低い声が聞こえた。ひっとグレースは思わず悲鳴がこぼれた。若干トラウマである。
「ああ、それは、その。
ほ、ほら、いたですぞ」
慌てたようなネコイチロウの声。いたのは、二人組の警備の兵に見えた。しかし、二人の騎士はそれを敵とみなしたようだった。
今日は警備の都合で特別なリボンをつけているそうだ。付けていないものはすべて敵であるとグレースは先に教えられている。
「お嬢様は走る準備してください」
グレースは問い返さず指示された通りにドレスの仕掛けを引いた。
「先輩はちょっと時間稼ぎよろしく」
クリスはひらりと手を振った。任せろなのか、さっさと行けなのかは不明である。
「では、ネズミ捕り、行きますよ」
グレースは名を呼ばれ会場に入ると二度見された。
今まではそれなりに視線が向けられることはあったものの入場者への礼儀だ。戸惑ったような視線が二度目にやってくることはほとんどない。
「どこかおかしいのではないかしら」
グレースは思わずつぶやく。布地としてみたときには気にならなかったが実際着たときは違った。腰の細さを強調するようなデザインだったのだ。さほど細くないのにいつもよりもきゅっと引き締まって見える効果は賞賛したいが、こうも視線を向けられると変だったのではないかと思い始めてくる。
「お美しいです」
声を潜めてフィデルが言う。会場ではしゃべらないと言っていたにもかかわらず。
「問題があれば、護衛として排除します」
「つーか、触ったらぶっ飛ばすし」
触る? どこを? と問い返す間もなく、知り合いから声をかけられた。学生時代の友人や学友とは今も交流があり、夜会でも話をすることはある。しかし、今日はいつになく熱心に見えた。
いつも素敵ですけど、今日のお召し物、どちらで? から始まり、その腰の細さはどこのコルセットを? 肌がきらめていますけど、なにをつけられたの? など、美容に関することばかり聞かれる。
新しい侍女の特殊技術で、と曖昧に返答するだけのグレースを不満げに見るものもいたが、ほかに言いようがない。
美容のプロ(男)と衣装のプロ(男)と歩き方のプロ(男)が大活躍した、などと話すのも支障があるだろう。本人たちも公表はちょっと……という立場である。
なお、歩き方のプロには歩きにくい靴でも走れる特殊技術も指南してもらっている。
それが一段落したところで、今度は男性が近寄ってきた。今までにないことである。
さらに口々に褒められてグレースは困惑した。
男性にとってグレースは魅力的ではないという自覚はあった。
美貌というわけでもなく、性格に可愛らしさもなく、地位も金もあるが婚約済み。それも他国の王子だ。あまりのリスクの高さに火遊びの誘いすらやってこなかった。
どういうこと? と思いながらも礼を返した。
他にも何か言いたげではあったが、グレースの背後を確認して早々に退散していっている。
「なにかしら」
「グレース様の魅力にいまさら気がついたのでは?」
フィデルがぼそぼそと返答したが、グレースにとっては納得できるものではなかった。ちょっと見てくれが良くなった程度で、危険を冒したいと思うわけがない。
以前と変わったところがあるはずだ。
「ああ、そういうこと」
他国に嫁がないのであれば、侯爵家の一人娘として婿を探すことになるからであろう。もし万が一、婚約が解消されなければ王妃だ。顔を売っておくのも悪くはないだろう。
そういうことにいまさら気がついたのかもしれない。
グレースとしてはそれには納得感がある。
「絶対わかってないですよね」
「あなた黙ってるって言ってなかった?」
「危なっかしくて、これなら」
フィデルはそう言って黙った。
これなら、なによ、と返す間もなく、ラッパの音が響いた。王族の入場の前には鳴らされるのである。建国以来の伝統であり、そのラッパも建国当時からあるという話だ。
今までなら普通に聞き流していたが、精霊の話を聞いた後となるとこれにも意味があるのではと勘繰ってしまう。
「うにゃ!」
ネコイチロウが鞄の中から応じている。
王が現れた時、ふわりと風が通り抜けた。清々しい森の匂いと共に。
夜会は穏やかに進んでいった。名目は王の生誕祭なので、お祝いのための列ができている。これは王都より遠い地域の者から優先される。年に何度も王都に来れないからだ。
贈り物は断られており、そこで競うこともない。
グレースは話しかけられるのも嫌で王族の近くで聞くともなしに聞いていた。祝いの言葉と国の繁栄を願うことの繰り返しであるが、意外とバリエーションがある。
耳を傾けているうちに声に重なる別の音があった。聞き取れそうで、少しだけ異音が混じり理解できない音はやけに耳に残る。
音に意識しているうちにわかりそうになる。あとちょっと、だ。
「グレース様」
ミラに呼ばれてグレースははっとした。もうその時にはもう音は音でしかなかった。意味もわからず、流れる風の音のようだった。
ひやりとした空気がグレースの周りを吹き抜ける。
「拙者、役目中のため、挨拶は後ほどにいたします。
おお、寛大な対応、さすが、……様。こちら我が主のグレース様で」
ネコイチロウが誰かにグレースを紹介していた。
「猫が鳴いたような」
そういいながらクリスが怪訝そうにあたりを見渡している。ミラは素知らぬ顔をしていたが、やや眉が寄っていた。
グレースも何も聞こえなかったふりをすることにした。
何だろうと首をひねるクリス。勝手に鞄がゆらゆらしていた。明らかに不審な動きだ。グレースは諦めて中身を出すことにした。
夜会で猫を装備。周囲どころか変な噂が駆け巡りそうではあるが、うごめくぬいぐるみを確認されるよりは多分ましである。
それ以外には問題は起きず、夜会は進む。
祝いの列も減りグレースはようやく並ぶことにした。順調に進み王へ祝いの言葉を伝えるが、あまり心は籠っていなかった。
王がもの言いたげに猫のぬいぐるみに視線を向けている。
「おじさま、可愛い護衛でしょう?」
「そうだな。護衛がいらないようだと良かったのだが」
「私は大丈夫です」
しかしなと続けた王は黙った。グレースの後ろになにか恐ろしいものでもみたように視線を向けたまま。
背後にいるのはミラとクリスではあるが、上の方を見ているわけではないのでクリスではないだろう。振り返ってみたい衝動を覚えつつ、グレースはなにかしらという表情で見返す。
「……後ろの侍女にもよろしく伝えてくれ。
くれぐれも、気をつけるように」
「承知しました」
そう返してグレースは王の前を退いた。まだ数人残っている。他国からの使者から書簡を受け取りもある。個人的やり取りという名目で内容が公開されることはない。
その使者とグレースはすれ違った。
ふわりと花の匂いがした。
嗅いだことのあるような匂いだが、なんだろうと振り返っても誰もいなかった。
「しばらく、離れます」
ミラはそういってしばしグレースから離れた。しかし、何かを見つけることもできず戻ってきた。かなり渋い表情で。
会場の隅でグレースは報告を聞く。異常はいまのところなにもないが、違和感だけはあるらしい。それで苛立っているというのかと思えば違ったらしい。
「俺が可愛すぎるので、あちこちで声をかけられ不快でした」
「……自分で言うところが、あなたらしいわね」
「技術への自信です。でも、ここまで可愛くする必要はなかったと思いました。次からは加減します」
なぜかグレースを直視しつつそう宣言した。
そうこうしているうちに室内では音楽が流れてきた。食事会という形の夜会もあるが、今日は踊るほうの夜会であったが、グレースはいつも通り踊らずに済ませるつもりだった。
婚約者がいるものは婚約者以外と踊らないものだ。そこにいないときは例外として認められることはあるが、いままでグレースに願うものはいなかった。
しかし、今日はとても誘われた。踊りの申し込みの列ができるほどである。
それを婚約中であることを理由に一律断ったが、思った以上に気疲れしてしまう。
「帰るわ。
そのほうが都合が良いでしょう?」
「ごった返す馬車留めで護衛するよりはとても気楽です」
クリスはそういうが心なしか心配そうではあった。
「侯爵閣下と同乗されては」
「お父様にはお父様のお仕事があるもの」
誕生祝いのための使者は、それだけで仕事を終わらせない。今日は隣国からも人が来ている。婚約者の手の者だろうから、会わないわけにもいかない。
グレースには挨拶にも来なかった。それだけで扱いの軽さがわかる。
「ですが……」
ためらうクリスを置いてグレースは先に歩き出した。廊下はがらんとしており、時折、警備ものが二人組で通り過ぎるだけだった。
夜会を途中で抜けるものはいるが、今日は特別な夜会である。普通は最後までいるだろう。
余計な誰かを巻き込むこともないだろう。
「何かあったら、担ぎます」
「お手柔らかに頼むわ」
クリスは余裕があったらと冗談めかして言っている。
フィデルがやけに静かだなと思って視線を向ければ、宙を睨んでいた。
「上司と口げんか中でありますぞ。ちょっと御屋形様にはお聞かせできない下品な感じです」
「なにについて?」
「精霊使いが発見できなかった無能とか罵っておりますな」
のんびりと言っているが、精霊様にそんな口をきくのかと思うとグレースでさえも引く。
「あれはわかってて泳がせているんであると思います、が?」
「へぇ? ネコイチロウ、わかったんだ?」
いつぞや聞いたような低い声が聞こえた。ひっとグレースは思わず悲鳴がこぼれた。若干トラウマである。
「ああ、それは、その。
ほ、ほら、いたですぞ」
慌てたようなネコイチロウの声。いたのは、二人組の警備の兵に見えた。しかし、二人の騎士はそれを敵とみなしたようだった。
今日は警備の都合で特別なリボンをつけているそうだ。付けていないものはすべて敵であるとグレースは先に教えられている。
「お嬢様は走る準備してください」
グレースは問い返さず指示された通りにドレスの仕掛けを引いた。
「先輩はちょっと時間稼ぎよろしく」
クリスはひらりと手を振った。任せろなのか、さっさと行けなのかは不明である。
「では、ネズミ捕り、行きますよ」
41
あなたにおすすめの小説
白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話
鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。
彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。
干渉しない。触れない。期待しない。
それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに――
静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。
越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。
壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。
これは、激情ではなく、
確かな意思で育つ夫婦の物語。
王子、侍女となって妃を選ぶ
夏笆(なつは)
恋愛
ジャンル変更しました。
ラングゥエ王国唯一の王子であるシリルは、働くことが大嫌いで、王子として課される仕事は側近任せ、やがて迎える妃も働けと言わない女がいいと思っている体たらくぶり。
そんなシリルに、ある日母である王妃は、候補のなかから自分自身で妃を選んでいい、という信じられない提案をしてくる。
一生怠けていたい王子は、自分と同じ意識を持つ伯爵令嬢アリス ハッカーを選ぼうとするも、母王妃に条件を出される。
それは、母王妃の魔法によって侍女と化し、それぞれの妃候補の元へ行き、彼女らの本質を見極める、というものだった。
問答無用で美少女化させられる王子シリル。
更に、母王妃は、彼女らがシリルを騙している、と言うのだが、その真相とは一体。
本編完結済。
小説家になろうにも掲載しています。
【完結】花に祈る少女
まりぃべる
恋愛
花祈り。それは、ある特別な血筋の者が、(異国ではいわゆる花言葉と言われる)想いに適した花を持って祈ると、その花の力を増幅させる事が出来ると言われている。
そんな花祈りが出来る、ウプサラ国の、ある花祈りの幼い頃から、結婚するまでのお話。
☆現実世界にも似たような名前、地域、単語、言葉などがありますが関係がありません。
☆花言葉が書かれていますが、調べた資料によって若干違っていました。なので、少し表現を変えてあるものもあります。
また、花束が出てきますが、その花は現実世界で使わない・合わないものもあるかもしれません。
違うと思われた場合は、現実世界とは違うまりぃべるの世界と思ってお楽しみ下さい。
☆まりぃべるの世界観です。ちょっと変わった、一般的ではないまりぃべるの世界観を楽しんでいただけると幸いです。
その為、設定や世界観が緩い、変わっているとは思いますが、まったりと楽しんでいただける事を願っています。
☆話は完結出来ていますので、随時更新していきます。全41話です。
★エールを送って下さった方、ありがとうございます!!お礼が言えないのでこちらにて失礼します、とても嬉しいです。
“足りない”令嬢だと思われていた私は、彼らの愛が偽物だと知っている。
ぽんぽこ狸
恋愛
レーナは、婚約者であるアーベルと妹のマイリスから書類にサインを求められていた。
その書類は見る限り婚約解消と罪の自白が目的に見える。
ただの婚約解消ならばまだしも、後者は意味がわからない。覚えもないし、やってもいない。
しかし彼らは「名前すら書けないわけじゃないだろう?」とおちょくってくる。
それを今までは当然のこととして受け入れていたが、レーナはこうして歳を重ねて変わった。
彼らに馬鹿にされていることもちゃんとわかる。しかし、変わったということを示す方法がわからないので、一般貴族に解放されている図書館に向かうことにしたのだった。
【完結】捨てられた皇子の探し人 ~偽物公女は「大嫌い」と言われても殿下の幸せを願います~
ゆきのひ
恋愛
二度目の人生は、前世で慕われていた皇子から、憎悪される運命でした…。
騎士の家系に生まれたリュシー。実家の没落により、生きるために皇宮のメイドとなる。そんなリュシーが命じられたのは、廃屋同然の離宮でひっそりと暮らすセレスティアン皇子の世話係。
母を亡くして後ろ盾もなく、皇帝に冷遇されている幼い皇子に心を寄せたリュシーは、皇子が少しでも快適に暮らしていけるよう奮闘し、その姿に皇子はしだいに心開いていく。
そんな皇子との穏やかな日々に幸せを感じていたリュシーだが、ある日、毒を盛られて命を落とした……はずが、目を開けると、公爵令嬢として公爵家のベッドに横たわっていた。けれどその令嬢は、リュシーの死に因縁のある公爵の一人娘……。
望まぬ形で二度目の生を享けたリュシーと、その死に復讐を誓った皇子が、本当に望んでいた幸せを手に入れるまでのお話。
※本作は「小説家になろう」さん、「カクヨム」さんにも投稿しています。
【完結】前代未聞の婚約破棄~なぜあなたが言うの?~【長編】
暖夢 由
恋愛
「サリー・ナシェルカ伯爵令嬢、あなたの婚約は破棄いたします!」
高らかに宣言された婚約破棄の言葉。
ドルマン侯爵主催のガーデンパーティーの庭にその声は響き渡った。
でもその婚約破棄、どうしてあなたが言うのですか?
*********
以前投稿した小説を長編版にリメイクして投稿しております。
内容も少し変わっておりますので、お楽し頂ければ嬉しいです。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
【完結】ご期待に、お応えいたします
楽歩
恋愛
王太子妃教育を予定より早く修了した公爵令嬢フェリシアは、残りの学園生活を友人のオリヴィア、ライラと穏やかに過ごせると喜んでいた。ところが、その友人から思いもよらぬ噂を耳にする。
ーー私たちは、学院内で“悪役令嬢”と呼ばれているらしいーー
ヒロインをいじめる高慢で意地悪な令嬢。オリヴィアは婚約者に近づく男爵令嬢を、ライラは突然侯爵家に迎えられた庶子の妹を、そしてフェリシアは平民出身の“精霊姫”をそれぞれ思い浮かべる。
小説の筋書きのような、婚約破棄や破滅の結末を思い浮かべながらも、三人は皮肉を交えて笑い合う。
そんな役どころに仕立て上げられていたなんて。しかも、当の“ヒロイン”たちはそれを承知のうえで、あくまで“純真”に振る舞っているというのだから、たちが悪い。
けれど、そう望むのなら――さあ、ご期待にお応えして、見事に演じきって見せますわ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる