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この度めでたく番が現れまして離婚しました。
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「これで残務処理は終了だ。
晴れて君は離婚し、独身にもどったわけだ」
番が現れて早一か月とちょっと。鈴音は離婚した。わりと早いほうでしたというのは、専門家の評であった。結構、ごねたり、拒んだりなど色々あって半年が平均らしい。
獣人的には法的効力がなくとも、番が現れた時点で契約婚は破棄されたことになっているらしく、その間に事実婚状態になっても構わないらしい。
鈴音が婚姻したときも実はそうだったかもしれないなと今更ながらに思う。わりと良い家柄にさらわれていったので。
「お疲れさまでした」
「お疲れさまでした」
お互いに言い合って少し笑う。そして、飲み物を一口。
今日は番茶を用意した。それに合うお菓子も用意している。
もちろん鈴音は珈琲なのだが。
「さて、ここで話があるんだが」
「なんです?」
今なら何でも気分良く聞けると軽い気持ちで鈴音は答えた。
「結婚しないか?」
「……いまなんて?」
「結婚。
俺も身内が結婚しろと煩い。君は保護者なく、一人で大金を手に入れたから色々面倒が起こるだろう。例えば怪しい投資などの勧誘や知らない親戚が金を貸してくれというとか。
だからといって実家には帰りたくない。
結婚したほうが都合がいい」
「今、離婚したばかりです」
「そうだな。再婚禁止期間があるからひとまずは婚約しておいて、一年後に結婚でどうだ」
どうだ、って。
なにをまかり間違ってそんなことを言い出したのか。響は真顔である。真剣そのものすぎて、茶化すのもはぐらかすのも気が引けた。
「どうして?」
「ガッツあるなと思って」
「……そこ」
「俺相手でも曲げないし、婚家でもあんまりな扱いなのにめげてなさそうだし、むしろ、もぎ取ってやるくらいの闘志がいい」
「……さようですか。
おことわ」
「俺の家に猫がいて」
「え、猫?」
確か前に二匹いると聞いた。それがなにか? と思えば、スマホを操作して鈴音に見せる。
「三毛とぶち」
彼が見せてきたスマホを鈴音は強奪した。くらりと眩暈がする。
ぶさかわとあざとさを極めた美猫がそこにいた。うちのエカテリーナちゃんを加えれれば楽園がすぐそこに。
「結婚しましょう!」
気がつけば鈴音はそう宣言していた。
響は微妙な顔をしているが気にしない。
「私が、猫ちゃんたちを幸せにし、幸せになるのです!」
「俺も勘定に入れて欲しいが」
「え? 別にビジネス結婚でしょ? 私、猫様の下僕になりますのよ。あなた添え物」
「………いまは、それでいいことにする」
「あら?」
少しは本当に好きだったりするのであろうか。鈴音は首をかしげたが、気にしないことにした。些事である。
「それで、いつ、同居します?」
「まてまて、話が早い。まずは、うちの子と面会してだな」
「そうですね……。気に入ってくれると良いのですけど」
しゅんとした鈴音に響は慌てたように大丈夫だからと声をかける。
優しげな様子になんだか今までと違うなと思いながらも猫好きに悪い人はいないからと鈴音は納得した。
「で、いつ会います?」
「普通にデートとかしないのか?」
「貢物を選ぶための買い物なら妥協します」
仕方ないなぁと言いたげなため息をつかれたが、鈴音は聞いてなかった。
「あ、でも、エカテリーナちゃんをお留守番させたことないから同伴でよいですか?」
渋々頷かれたのは納得がいかない。うちのお嬢様は寂しがり屋なのです、といいたいところだが勝手に下僕を増やしそうな貫禄がある。
同伴をしたいのはエカテリーナちゃんの世話のために鈴音の代わりの誰かを入れることになるのを避けたいためだ。
鈴音には見られて困るようなものはちょっとだけある。家探しされると困るというところだ。
「うちのは大きいから連れていけない」
「お留守番できるなんて偉いですね。二匹なら寂しくないんでしょうか」
「煽りあってけんかはする」
「あらあらあらー」
彼はそういえばといって、ペットカメラの映像を見せる。鈴音はその様子ににやにやが止まらない。
「うにゃ、うにゃう」
その鈴音の様子をみたのかエカテリーナちゃんが不満そうに膝に乗ってくる。あら? と鈴音が思っているうちに覗き込みたしたしと画面を叩く。
それを至福の表情で眺める鈴音。さらにそれを不思議生物のように眺める響。
奇妙な沈黙があった。別に気まずくはないなと鈴音は思った。
「ところで一つ大事なことを聞き忘れていたのですが、貴方、獣人ですか?」
結婚相手について何も知らないというのも危険ではある。鈴音は一応尋ねておいた。何かあったときに嘘をついたのねと泣く準備は出来ている。
「獣人ではないね」
「別種の異形ですか。ちなみに年齢は?」
「百を超えたあたりで数えるのをやめた。今年何年だったかな」
「紅心歴1495年です」
「百四十五歳くらい」
「ほぼ二百歳ですね」
納得いかんという表情で見返されたが、鈴音は私は24なんですけどといったら黙った。
「ロリコンといわれるだろうか」
響が真面目な顔で何を考え込んでいるのかと思えば、鈴音の想定の斜め上どころか迷子になるくらいの事を言い出した。
「一般的に人間女性の適齢期なので、人間感覚で良ければ普通ですよ」
ただし、別種族の感覚ではわからない。種族が違うと時々、ペットか何かと思ってるんじゃないかというときがある。
響が、え、あんなペットと結婚すんの? という目で見られる可能性はないわけではない。
「君にそう思われないなら良しとしよう。
日程の調整ができたらまた連絡する」
「お待ちしています」
がしっとビジネスな握手をして彼は立ち去りました。
「……さて、エカテリーナちゃん。あっちのおうちのイケメンはどうですか? 侍らす女王様目指します? 姫扱いの、あ、いらない。わかりました。では最高待遇のお部屋を用意しましょう」
こうして鈴音は離婚し、新たなる猫とついでの夫(候補)を手に入れたのである。
晴れて君は離婚し、独身にもどったわけだ」
番が現れて早一か月とちょっと。鈴音は離婚した。わりと早いほうでしたというのは、専門家の評であった。結構、ごねたり、拒んだりなど色々あって半年が平均らしい。
獣人的には法的効力がなくとも、番が現れた時点で契約婚は破棄されたことになっているらしく、その間に事実婚状態になっても構わないらしい。
鈴音が婚姻したときも実はそうだったかもしれないなと今更ながらに思う。わりと良い家柄にさらわれていったので。
「お疲れさまでした」
「お疲れさまでした」
お互いに言い合って少し笑う。そして、飲み物を一口。
今日は番茶を用意した。それに合うお菓子も用意している。
もちろん鈴音は珈琲なのだが。
「さて、ここで話があるんだが」
「なんです?」
今なら何でも気分良く聞けると軽い気持ちで鈴音は答えた。
「結婚しないか?」
「……いまなんて?」
「結婚。
俺も身内が結婚しろと煩い。君は保護者なく、一人で大金を手に入れたから色々面倒が起こるだろう。例えば怪しい投資などの勧誘や知らない親戚が金を貸してくれというとか。
だからといって実家には帰りたくない。
結婚したほうが都合がいい」
「今、離婚したばかりです」
「そうだな。再婚禁止期間があるからひとまずは婚約しておいて、一年後に結婚でどうだ」
どうだ、って。
なにをまかり間違ってそんなことを言い出したのか。響は真顔である。真剣そのものすぎて、茶化すのもはぐらかすのも気が引けた。
「どうして?」
「ガッツあるなと思って」
「……そこ」
「俺相手でも曲げないし、婚家でもあんまりな扱いなのにめげてなさそうだし、むしろ、もぎ取ってやるくらいの闘志がいい」
「……さようですか。
おことわ」
「俺の家に猫がいて」
「え、猫?」
確か前に二匹いると聞いた。それがなにか? と思えば、スマホを操作して鈴音に見せる。
「三毛とぶち」
彼が見せてきたスマホを鈴音は強奪した。くらりと眩暈がする。
ぶさかわとあざとさを極めた美猫がそこにいた。うちのエカテリーナちゃんを加えれれば楽園がすぐそこに。
「結婚しましょう!」
気がつけば鈴音はそう宣言していた。
響は微妙な顔をしているが気にしない。
「私が、猫ちゃんたちを幸せにし、幸せになるのです!」
「俺も勘定に入れて欲しいが」
「え? 別にビジネス結婚でしょ? 私、猫様の下僕になりますのよ。あなた添え物」
「………いまは、それでいいことにする」
「あら?」
少しは本当に好きだったりするのであろうか。鈴音は首をかしげたが、気にしないことにした。些事である。
「それで、いつ、同居します?」
「まてまて、話が早い。まずは、うちの子と面会してだな」
「そうですね……。気に入ってくれると良いのですけど」
しゅんとした鈴音に響は慌てたように大丈夫だからと声をかける。
優しげな様子になんだか今までと違うなと思いながらも猫好きに悪い人はいないからと鈴音は納得した。
「で、いつ会います?」
「普通にデートとかしないのか?」
「貢物を選ぶための買い物なら妥協します」
仕方ないなぁと言いたげなため息をつかれたが、鈴音は聞いてなかった。
「あ、でも、エカテリーナちゃんをお留守番させたことないから同伴でよいですか?」
渋々頷かれたのは納得がいかない。うちのお嬢様は寂しがり屋なのです、といいたいところだが勝手に下僕を増やしそうな貫禄がある。
同伴をしたいのはエカテリーナちゃんの世話のために鈴音の代わりの誰かを入れることになるのを避けたいためだ。
鈴音には見られて困るようなものはちょっとだけある。家探しされると困るというところだ。
「うちのは大きいから連れていけない」
「お留守番できるなんて偉いですね。二匹なら寂しくないんでしょうか」
「煽りあってけんかはする」
「あらあらあらー」
彼はそういえばといって、ペットカメラの映像を見せる。鈴音はその様子ににやにやが止まらない。
「うにゃ、うにゃう」
その鈴音の様子をみたのかエカテリーナちゃんが不満そうに膝に乗ってくる。あら? と鈴音が思っているうちに覗き込みたしたしと画面を叩く。
それを至福の表情で眺める鈴音。さらにそれを不思議生物のように眺める響。
奇妙な沈黙があった。別に気まずくはないなと鈴音は思った。
「ところで一つ大事なことを聞き忘れていたのですが、貴方、獣人ですか?」
結婚相手について何も知らないというのも危険ではある。鈴音は一応尋ねておいた。何かあったときに嘘をついたのねと泣く準備は出来ている。
「獣人ではないね」
「別種の異形ですか。ちなみに年齢は?」
「百を超えたあたりで数えるのをやめた。今年何年だったかな」
「紅心歴1495年です」
「百四十五歳くらい」
「ほぼ二百歳ですね」
納得いかんという表情で見返されたが、鈴音は私は24なんですけどといったら黙った。
「ロリコンといわれるだろうか」
響が真面目な顔で何を考え込んでいるのかと思えば、鈴音の想定の斜め上どころか迷子になるくらいの事を言い出した。
「一般的に人間女性の適齢期なので、人間感覚で良ければ普通ですよ」
ただし、別種族の感覚ではわからない。種族が違うと時々、ペットか何かと思ってるんじゃないかというときがある。
響が、え、あんなペットと結婚すんの? という目で見られる可能性はないわけではない。
「君にそう思われないなら良しとしよう。
日程の調整ができたらまた連絡する」
「お待ちしています」
がしっとビジネスな握手をして彼は立ち去りました。
「……さて、エカテリーナちゃん。あっちのおうちのイケメンはどうですか? 侍らす女王様目指します? 姫扱いの、あ、いらない。わかりました。では最高待遇のお部屋を用意しましょう」
こうして鈴音は離婚し、新たなる猫とついでの夫(候補)を手に入れたのである。
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