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恋人(偽)と一匹
ミリアの長い一日 1
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※時間は少々前に戻ります。殺害計画の途中で別れたあたりからです。
砦の外は暗かった。裏口を抜けて、森と呼べるところまでたどり着いてミリアは振り返った。
外壁の上に焚かれた火でおぼろげに砦の輪郭がわかる。先ほど出てきた門は閉じらているが、門番はまだ壁にもたれて夢の中だ。
もう、外にいるのだ。あの場所に、ミリアルドを置いてきた。人形とはいえ、自分と同じ形のモノを壊してしまう。自分の一部を失うような気がして、やはり落ち着かない。
長く伸ばした髪も今では肩を越す程度で、頼りなさを感じた。
「うむ? どうかしたのか?」
白猫は首をかしげてミリアを見上げてくる。
「大丈夫かしら」
「さぁ。まあ、無事くらい祈ってやればいい。ここではまだ見つかる。奥へ」
立ち止まったミリアに白猫は森の奥へと進むように促す。森の中は暗いが、猫自体が発光しているようで、淡く白いため苦労はなかった。
無言で森の奥へと進む。足下は悪いはずなのに、不思議と足を取られるようなところはなかった。
「本来は道を使いたいところではあるが、目立つのもこまるであろう?」
ミリアに否はなかった。
しばらく進んだところで、白猫がぴたりと足を止める。もう、振り返っても砦は見えなかった。
「この先は、我、本来の姿になるが悲鳴はあげないように」
白猫はミリアの了承を得ずに姿を変えることにしたようだ。
一瞬で、白いものが大きくなった。
「……かわいい?」
大きくなってもあまり変わっていない。小さな猫が、大きな猫になった。いや、巨大な猫になった。全長は既にミリアの身長を超えているだろう。
この国にはいないが、絵で見た虎などというもののに似ている。ただし、小さいころには可愛い歯は今では凶器にしか見えない。
「む? かわいいかのぅ? 美しいとか神々しいといわれるのだが。崇拝とかしても良いぞ」
その口からはみゃうなどという可愛い声ではなく、低く唸るような声が聞こえる。それには威厳があるような気もした。
最初からこの姿で見ていたら畏怖したかもしれない。
が、どうしても子猫であった姿がちらついて、えっへんとドヤ顔をしているようにしか思えない。
「毛並みはそのままですね」
「うむ。さて行くかの」
ミリアは肯いてその後を付いていこうと思った。
「いや、乗って欲しいのだ」
「乗るの?
聖獣に?
ミリアの困惑をよそに白猫は得意げだった。
「我はふかふかで乗り心地が良いぞ!」
それはまるで、子供が自慢の宝物を見せてくるようなものようでミリアは小さく笑った。
「それでは、堪能します」
「うむ!」
機嫌良く、白猫はミリアを背に乗せた。確かにふかふかで心地良い。どんなに綺麗にしても多少は獣臭さがありそうだが、全くそんなことはなかった。
安定的な歩き方で足場の悪そうな森の中でも怖くなるようなこともない。どうしているのかわからないが、ぼんやりとあたりが明るかった。
ゆらりゆらりと揺れて、眠気を誘う。
「眠っても良いぞ。安全運転には自信がある」
「ありがとうございます」
睡魔はすぐそこまでやってきていた。
砦の外は暗かった。裏口を抜けて、森と呼べるところまでたどり着いてミリアは振り返った。
外壁の上に焚かれた火でおぼろげに砦の輪郭がわかる。先ほど出てきた門は閉じらているが、門番はまだ壁にもたれて夢の中だ。
もう、外にいるのだ。あの場所に、ミリアルドを置いてきた。人形とはいえ、自分と同じ形のモノを壊してしまう。自分の一部を失うような気がして、やはり落ち着かない。
長く伸ばした髪も今では肩を越す程度で、頼りなさを感じた。
「うむ? どうかしたのか?」
白猫は首をかしげてミリアを見上げてくる。
「大丈夫かしら」
「さぁ。まあ、無事くらい祈ってやればいい。ここではまだ見つかる。奥へ」
立ち止まったミリアに白猫は森の奥へと進むように促す。森の中は暗いが、猫自体が発光しているようで、淡く白いため苦労はなかった。
無言で森の奥へと進む。足下は悪いはずなのに、不思議と足を取られるようなところはなかった。
「本来は道を使いたいところではあるが、目立つのもこまるであろう?」
ミリアに否はなかった。
しばらく進んだところで、白猫がぴたりと足を止める。もう、振り返っても砦は見えなかった。
「この先は、我、本来の姿になるが悲鳴はあげないように」
白猫はミリアの了承を得ずに姿を変えることにしたようだ。
一瞬で、白いものが大きくなった。
「……かわいい?」
大きくなってもあまり変わっていない。小さな猫が、大きな猫になった。いや、巨大な猫になった。全長は既にミリアの身長を超えているだろう。
この国にはいないが、絵で見た虎などというもののに似ている。ただし、小さいころには可愛い歯は今では凶器にしか見えない。
「む? かわいいかのぅ? 美しいとか神々しいといわれるのだが。崇拝とかしても良いぞ」
その口からはみゃうなどという可愛い声ではなく、低く唸るような声が聞こえる。それには威厳があるような気もした。
最初からこの姿で見ていたら畏怖したかもしれない。
が、どうしても子猫であった姿がちらついて、えっへんとドヤ顔をしているようにしか思えない。
「毛並みはそのままですね」
「うむ。さて行くかの」
ミリアは肯いてその後を付いていこうと思った。
「いや、乗って欲しいのだ」
「乗るの?
聖獣に?
ミリアの困惑をよそに白猫は得意げだった。
「我はふかふかで乗り心地が良いぞ!」
それはまるで、子供が自慢の宝物を見せてくるようなものようでミリアは小さく笑った。
「それでは、堪能します」
「うむ!」
機嫌良く、白猫はミリアを背に乗せた。確かにふかふかで心地良い。どんなに綺麗にしても多少は獣臭さがありそうだが、全くそんなことはなかった。
安定的な歩き方で足場の悪そうな森の中でも怖くなるようなこともない。どうしているのかわからないが、ぼんやりとあたりが明るかった。
ゆらりゆらりと揺れて、眠気を誘う。
「眠っても良いぞ。安全運転には自信がある」
「ありがとうございます」
睡魔はすぐそこまでやってきていた。
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