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見知らぬ日常へ
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「それで? 中のパイロットは?」
「既にもぬけの殻です。パイロットは機体を放置して消えたものと」
「そうか……」
「滅炎のヒガン……」
「何者なのでしょうか?」
「分からん、が……」
「只者ではない……。 それだけは確かだ」
「そうですね」
「至急捜索に当たらせろ。彼には聞きたい事が沢山ある」
「そして……」
「出来れば礼もな」
「はい、ですが」
「アレは……。 一体何だったのでしょうか」
「……………………」
「どちらにせよ」
「事態は動いている」
「我々はそれを解き明かさなければならない」
「それが」
我々の役目なのだから。そんなお決まりの言葉を吐いて皇都守護の最高責任者である総司令。
沖田宗次(おきたそうじ)が締めくくる。
件の皇都事件から一夜。事態は収束に向かいつつある。
この事件は「花の変」と呼ばれ、その事件の異様な結末は人々の関心を集めている。
《世界を「花」にした事変》
民間人への被害者ゼロという形に終わったこの奇妙な事変はテロリスト総撤退の事実と。
新進気鋭の新兵器。「メタルナイト」の存在を世間に大きく広げるに至った。
メタルナイト・イフリート。そしてそれを操った謎の存在。
滅炎のイフリート
それは誰なのか。人々は今日もその言葉を気にかけながら新たな一日を始めようとしている。
生き残った国会議員達は即座にポストの振り分けを開始し新首相が決められ機能し始め。
皇都の商業活動も開始され各々の商店はその再開に色めき立っている。
テロリスト襲撃への被害が軽微なものに終わった事で人々はその日常を即座に取り戻しつつある。
そして。
「行ってきます母さん」
「ああ、うん行ってらっしゃい星火」
「えっと」
「大丈夫?」
「あ、いや」
「その、葵ちゃんの事……」
「ああ、葵ね」
「う、うん……」
「あはは、なに変な心配してるんだよっ! あいつの事は妹か何かだと思ってたって言ったじゃないかっ!」
「そ、そうなの?」
「でもいつもずっと一緒に学校行ってたし……」
「あいつもそういう歳頃だって事だろ? 恋人の一人くらい出来るさ」
「そう、よね……」
「そうやって皆大人になってくんだろ? 幼馴染と付き合うなんてそんなの幻想だよ」
「貴方は」
「葵ちゃんの事好きじゃなかった?」
「ああ、あいつの事は」
もう終わった存在。
「あいつはただ腐れ縁だっただけさ」
「でも新しい縁が出来たって言うなら、俺から卒業するのも良いだろう」
「だってあいつはもう高校生だし」
だから。
「だからそろそろ「そういうの」卒業しても良いだろ」
「だからって……」
「あんな事言う事は……」
「でも彼氏が居るのにずっと幼馴染と帰るなんて出来ないだろ?」
「だからこれで良いんだよ。変に気を使われるのも厄介だし」
「そうだけど……。 でも」
「学校」
「え?」
「学校が再開されて良かった」
「あっ」
「色々あったけど、また新しい日常が始まるって思うと」
「なんだかワクワクするねっ!!」
「……………………」
「そっか」
「分かった」
「それじゃあ」
「星火」
「行ってらっしゃいっ!!」
母はそう言って笑った。記憶の中で擦れていって母の面影は今自分の中で鮮明に蘇り現実となる。
かつて失った日常がそこにある幸福。そして違和感。
まだ慣れていない事も多いけど、少しずつ取り戻しつつある。そんな気がする。
例の事変。「花の変」と呼ばれる事件から一週間が経った。
あれからすぐさま機体を降り、避難所に移動して事無きを得た。
声色も替え、魔力係数も変えている以上早々バレる事はないだろう。
だから今はこうして日常に戻り、その中に入り込む事で事象を見守る事にしたのだ。
まだまだ分からない事も多い。下手に表立って行動するよりそれが良いと思った。
そうして一週間が過ぎ、ようやく学校が再開された。
15年ぶり。いや一度言ったものの、その時はまだ実感が無かった。
だが一週間が過ぎ現状にも慣れてきて、ようやく今新しい日常が始まっているという実感が湧いてきたのだ。
当時謳歌出来なかった学生時代。そんな気恥しいものが今更楽しめるのかは分からなかった。
だけど。
(それでも、それを得る事が「当然」なんだとしたら……)
それを得たいと思う。それが良いか悪いかは何度も考えた。でも今はそれをする事がベストなのだ。
だから。
(学生服……。こんな物をまた着る事になるなんてな)
「星火?」
「え?」
感慨深げに佇む自分の変化に戸惑いを感じたのか、母が語り掛けてくる。
「ああ、なんでもない。ただようやく学校が始まるんだなって考えると」
「今ある幸せがどれだけ幸福か。それが分かった気がしたんだ」
「なんだか年寄り臭い言葉ねー」
正解。心の中でそう微笑しつつ僕は玄関の扉を開け飛び出していった。
戸のその重さがなんだか慣れなくて、己の中にある年月が感じ少し戸惑った。
でも……。だけどそう、ここが僕の。
「せ、星火っ!!」
「彼氏くんを大事にしろって言っただろ」
「あっ……」
「ま、待って星火っ!!」
こうして僕は新しい日常へ飛び出していった。
全てが変わった日。全てがまだそこにある日常。
失った筈の全てが守れた事を実感しつつ、僕は日常へと戻る。
今は分からない事が多いけど、いずれそれが分かる日も来るのなら。
(僕は、どうなるんだろうな……)
不安とも期待とも取れる心のざわめきを心に秘めつつ、僕は向かう。
学園へ。かつて僕が通う筈だったあの場所へ。
きっとそこに。
(未来の答えがあると良いな)
足取りは軽い。ああ、15歳って。
その思考の続きを待たず、僕は全速力で向かっていった。
「星火……」
今日の朝日はいつにも増して眩しかった。
「既にもぬけの殻です。パイロットは機体を放置して消えたものと」
「そうか……」
「滅炎のヒガン……」
「何者なのでしょうか?」
「分からん、が……」
「只者ではない……。 それだけは確かだ」
「そうですね」
「至急捜索に当たらせろ。彼には聞きたい事が沢山ある」
「そして……」
「出来れば礼もな」
「はい、ですが」
「アレは……。 一体何だったのでしょうか」
「……………………」
「どちらにせよ」
「事態は動いている」
「我々はそれを解き明かさなければならない」
「それが」
我々の役目なのだから。そんなお決まりの言葉を吐いて皇都守護の最高責任者である総司令。
沖田宗次(おきたそうじ)が締めくくる。
件の皇都事件から一夜。事態は収束に向かいつつある。
この事件は「花の変」と呼ばれ、その事件の異様な結末は人々の関心を集めている。
《世界を「花」にした事変》
民間人への被害者ゼロという形に終わったこの奇妙な事変はテロリスト総撤退の事実と。
新進気鋭の新兵器。「メタルナイト」の存在を世間に大きく広げるに至った。
メタルナイト・イフリート。そしてそれを操った謎の存在。
滅炎のイフリート
それは誰なのか。人々は今日もその言葉を気にかけながら新たな一日を始めようとしている。
生き残った国会議員達は即座にポストの振り分けを開始し新首相が決められ機能し始め。
皇都の商業活動も開始され各々の商店はその再開に色めき立っている。
テロリスト襲撃への被害が軽微なものに終わった事で人々はその日常を即座に取り戻しつつある。
そして。
「行ってきます母さん」
「ああ、うん行ってらっしゃい星火」
「えっと」
「大丈夫?」
「あ、いや」
「その、葵ちゃんの事……」
「ああ、葵ね」
「う、うん……」
「あはは、なに変な心配してるんだよっ! あいつの事は妹か何かだと思ってたって言ったじゃないかっ!」
「そ、そうなの?」
「でもいつもずっと一緒に学校行ってたし……」
「あいつもそういう歳頃だって事だろ? 恋人の一人くらい出来るさ」
「そう、よね……」
「そうやって皆大人になってくんだろ? 幼馴染と付き合うなんてそんなの幻想だよ」
「貴方は」
「葵ちゃんの事好きじゃなかった?」
「ああ、あいつの事は」
もう終わった存在。
「あいつはただ腐れ縁だっただけさ」
「でも新しい縁が出来たって言うなら、俺から卒業するのも良いだろう」
「だってあいつはもう高校生だし」
だから。
「だからそろそろ「そういうの」卒業しても良いだろ」
「だからって……」
「あんな事言う事は……」
「でも彼氏が居るのにずっと幼馴染と帰るなんて出来ないだろ?」
「だからこれで良いんだよ。変に気を使われるのも厄介だし」
「そうだけど……。 でも」
「学校」
「え?」
「学校が再開されて良かった」
「あっ」
「色々あったけど、また新しい日常が始まるって思うと」
「なんだかワクワクするねっ!!」
「……………………」
「そっか」
「分かった」
「それじゃあ」
「星火」
「行ってらっしゃいっ!!」
母はそう言って笑った。記憶の中で擦れていって母の面影は今自分の中で鮮明に蘇り現実となる。
かつて失った日常がそこにある幸福。そして違和感。
まだ慣れていない事も多いけど、少しずつ取り戻しつつある。そんな気がする。
例の事変。「花の変」と呼ばれる事件から一週間が経った。
あれからすぐさま機体を降り、避難所に移動して事無きを得た。
声色も替え、魔力係数も変えている以上早々バレる事はないだろう。
だから今はこうして日常に戻り、その中に入り込む事で事象を見守る事にしたのだ。
まだまだ分からない事も多い。下手に表立って行動するよりそれが良いと思った。
そうして一週間が過ぎ、ようやく学校が再開された。
15年ぶり。いや一度言ったものの、その時はまだ実感が無かった。
だが一週間が過ぎ現状にも慣れてきて、ようやく今新しい日常が始まっているという実感が湧いてきたのだ。
当時謳歌出来なかった学生時代。そんな気恥しいものが今更楽しめるのかは分からなかった。
だけど。
(それでも、それを得る事が「当然」なんだとしたら……)
それを得たいと思う。それが良いか悪いかは何度も考えた。でも今はそれをする事がベストなのだ。
だから。
(学生服……。こんな物をまた着る事になるなんてな)
「星火?」
「え?」
感慨深げに佇む自分の変化に戸惑いを感じたのか、母が語り掛けてくる。
「ああ、なんでもない。ただようやく学校が始まるんだなって考えると」
「今ある幸せがどれだけ幸福か。それが分かった気がしたんだ」
「なんだか年寄り臭い言葉ねー」
正解。心の中でそう微笑しつつ僕は玄関の扉を開け飛び出していった。
戸のその重さがなんだか慣れなくて、己の中にある年月が感じ少し戸惑った。
でも……。だけどそう、ここが僕の。
「せ、星火っ!!」
「彼氏くんを大事にしろって言っただろ」
「あっ……」
「ま、待って星火っ!!」
こうして僕は新しい日常へ飛び出していった。
全てが変わった日。全てがまだそこにある日常。
失った筈の全てが守れた事を実感しつつ、僕は日常へと戻る。
今は分からない事が多いけど、いずれそれが分かる日も来るのなら。
(僕は、どうなるんだろうな……)
不安とも期待とも取れる心のざわめきを心に秘めつつ、僕は向かう。
学園へ。かつて僕が通う筈だったあの場所へ。
きっとそこに。
(未来の答えがあると良いな)
足取りは軽い。ああ、15歳って。
その思考の続きを待たず、僕は全速力で向かっていった。
「星火……」
今日の朝日はいつにも増して眩しかった。
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