滅炎のイフリート アルティメット・ヒガン(Re)僕の二度目の機神大戦

ゼノ

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離別。それから。

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 「それで、なに?」
 「あ、あの……」

 放課後、僕は彼女の友人達に連れられ校舎裏のゴミ焼却場に集まった。
 面子は大地と緑という少女。
 そこに葵を加え、僕との4人での会合と相成った。

 「僕、忙しいんだけど用件なら早く言ってよね」
 「う、うん…… あの、えっと、ね……」

 放課後、そこに至るまで僕は彼女をひたすらに無視し続けた。
 声を掛けられても反応せず、名前を呼ばれても反応しない。
 それで彼女が諦めてくれれば良かったが、どうやらこの葵と言う少女は
 まだ「幼馴染」という「ロール」に未練があるようだった。

 (それも「役割」の一つだから)

 その行動に理解を示しつつも、彼氏持ちである筈の彼女が。
 幼馴染の異性に執着を見せるという行動に嫌悪感を覚える。

 彼氏彼女の関係を構築した相手が居るのなら今後はその関係に終始すべきだ。
 あれこれと目標を散らばらせるのは良い選択とは言えない。
 幸いここは戦場ではない。ならば致命傷にはならない筈だが。
 だがそれだけに彼女のその浮ついた気持ちに腹が立った。

 でも同時に憐れみも覚える。そう、それが。

 (コンセプター、だしな……)

 苛立ちからこわばりそうになる顔を必死に整え、僕は彼女の言葉を待つ。

 「あ、あの…… ね? 星火、その……」
 「あの……」

 「あの、ね……」
 「………………………………」

 「あの…………」
 

 煮え切らない。
 彼女の言葉を待つ僕だったが、彼女の様子がどうにも煮え切らない。
 モジモジと指遊びをしながらばつが悪そうに言葉に詰まる。
 正直言いたい事があるならはっきり言って欲しかった。
 命令ははっきり明確に。そうじゃないと伝わらないじゃないか。

 「ほ、ほら 葵、ね?」
 「だ、大丈夫だから」

 言葉に詰まる葵。そしてそんな彼女に大地と緑の二人が背中を押し言葉を促している。
 それでも葵はモジモジと冷や汗を流しながら何も発しない。

 「……………………」
 
 限界だった。

 「なぁ、葵さん。彼氏はもう良いのか?」
 「え?」

 「え、じゃないだろ?」
 「暁ユウヤくん、君の彼氏だろ?」
 「彼の事は良いのか?」

 「あ、あの子の事は」
 「行ってやれよ 心配してるかもしれないだろ」

 「あ……」
 「あ、あのっ!!」

 「もう関わるなって言っただろ?」
 「え…………」

 「葵さん、君はもう新しい相手を見つけたんだ」
 「だったら、僕に関わるメリットはもう無いだろ?」

 「え、えっと…… だから…… ね」
 「彼はただの」
 「迷惑なんだよ」


 「え?」
 「彼氏持ちの異性の幼馴染と一緒に居るなんて。そんなの相手にも失礼じゃないか」

 「あ、あの…… それは」
 「正直」

 「めざわりなんだよ」


 

 「…………え?」

 「もう彼氏が居るならそいつに付き合って貰えば良いだろ?」
 「だ、だからそれは……」

 「僕はユウヤ君に恨まれるのごめんなんだけど」
 「新しい関係が出来たならそれに注視すれば良い」

 「僕は善意で君から離れたつもりだ。なのに付きまとわれて迷惑してるんだよ」
 「…………え」

 口癖なのだろうか。この子は「え、」しか言わない。
 だが今はそんな事どうでも良い。今はただ言いたい事を伝えるだけだ。

 「めざわりだって言ったろ?」
 「…………え」

 「僕はただ君が幼馴染で付き合いが長いから仕方なく付き合ってただけ」
 「正直君と居ると苦痛だし、でもその関係を切る意味がなかったからそうしてただけ」

 「え」

 ここでまた道筋が外れた事を言えば彼女の逡巡(しゅんじゅん)のリールは再び回る。
 だからもうここではっきりと言わなければならない。

 「お前の事、昔から嫌いだったんだ」

 「え」

 「お前の友達も、お前の交友関係に付き合わされる僕も」
 「それが全部、何もかも嫌いだった」

 「………………」

 「え」

 「でもそれを切るだけの薄情さが無かったってだけ」
 「悪いけど、新しい相手を見つけたならそいつを頼って生きてくれよ」

 「「幼馴染」ってだけで付きまとわれるのはもう沢山だ」
 「俺はお前の事が」

 「大っ嫌いなんだよ」




 
 
 「え」
 

 その言葉には多くの嘘が含まれている。別に彼女の事は嫌いではない。
 だが30年という日々を重ねた自分は彼女と釣り合える存在ではない。
 それに彼女は「幼馴染」というロールを自ら捨て、新たな道筋を自ら見つけたのだ。
 そしてそれには相手が居る。密かにキスを重ねるような関係ならそれ以上もあるだろう。

 だったらもはや有象無象となった僕と関わる意味はないだろう。
 だが彼女もコンセプター。
 元は人ではない存在が人の振りをしているのが僕達コンセプターだ。
 だからこそコンセプターは「役割」という物に大きな執着を見せる事が多い。

 仕事だったり家庭だったり。一度何らかの役割を得たコンセプターはそれに執着を見せる事が多い。
 僕もそうだった。やりたくはなかったメタルナイトパイロットも、それが「役割」だからと続けた。

 その結果がこの有様。僕は訳の分からない状況に巻き込まれ迷走している。
 それでも現状で見つけた「和解を成す」という役割を見つけた瞬間、心の平穏を取り戻した。

 「役割」「役目」それは僕達何物でもなかった存在にとって何よりの麻薬。
 だからこそ分かる。彼女は今まであった。
 「異性の幼馴染との付き合い」という役割が無くなるを恐れているだけだ。

 だからこそ、そこに僕は居ない。彼女にとって必要だったのはその役割だけだ。
 でも彼氏彼女という新たな役割を得た彼女にとってそれは捨て去らなければいけないものだろう。

 だからこそはっきりと言わないといけない。

 「僕はお前の事が嫌いだ。二度と話しかけるな」
 「せ、星火……」

 「初めて会った時からずっと」

 好きだった。多分。

 「お前の事が嫌いだったんだ」





 「え」


 
 「せ、星火くんっ!!」
 「ちょ、ちょっと星火くんっ!!」

 僕の言葉を聞いて取り巻きの二人も流石に色めきだった。
 酷すぎる言葉。そう思ったのだろう。だが彼女の執着を消すにはこうするしかないだろう。
 色々と遺恨は残るだろう。
 だがこうする事で彼女も僕という役割から解放され新たな関係に集中する事が出来るし。
 僕にとっても一人の時間が増える事でこの世界での立ち振る舞いを考える時間が増える。

 一見酷いように見えるが長い目で見れば一挙両得。
 大丈夫。すぐ忘れる。これで良いのだ。

 「それと君達二人も僕にもう話しかけてこないでくれよな」
 「君は葵さんの友達だろ? 正直うざったかったんだよね君達と話すのも」

 「は?」
 「なにそれ」

 だから。

 「もう関わらないでくれよ。目障りだからさ」

 これが僕の本音だ。心からの。

 「せ、星火くん。あんたは……」
 「葵の気持ちをなんだとっ!!」

 「さよなら凍さん」
 「今後は彼氏くんと帰ってくださいね」

 「僕にもう関わないでください」
 
 そう告げた後、僕はその場を早々と後にする。
 過去の世界で行動する上で、どうしたってこの幼馴染との関係は邪魔になる。
 好悪関係なく、これはやらなければいけなかった。

 だけど他人に悪意を伝える事はどうしたって嫌な気持ちになる。
 もっと別の伝え方があったのではとも考えるが、きっぱりと縁を切った方がやはり後々の為になる。

 ならば下手に後ろ髪を引くような態度を見せるよりもこっちの方が誠実のように思えた。
 大丈夫。彼女は明るく優しい。快活で美しい少女だ。
 だったら新しい「役割」も得る事は容易いだろう。

 そう考えて、ふと過去の自分の交流関係を思い出す。
 葵を失い、学友を失い、それから自分は何を得たっけ?

 そう考えて……。

 「ああ、そうだった」
 「みんな、死んじゃったよな……」

 過去の大戦で生き残ったメタルナイトパイロットは自分だけ。
 他はみんな居なくなってしまった。
 それでも守れた世界はあった。戦う事に意味だってあった。
 だが今そんな事を考えても誰もそれを知らない。
 かつての友人や知り合いも、この世界では全て他人であり。
 かつての自分を知る者は居ない。
 
 僕は、僕という存在は……。

 「…………………………」

 ふと、思考が止まる。そして止まったまま歩き続ける。
 向かう先は我が家。母が待つ我が家。自分の家。
 何もかも。失った物は全て戻ってきた。でも。
 それよりも失った物の方が大きいような気がした。

 何も失っていない筈なのに喪失感ばかりだ。
 でも、それでも。

 ここに僕が居る事に意味があるなら。

「僕は……」

「な、なぁ……」
「うん?」

 空虚な心。それを再び満たすべく決意を固めようとした矢先。
 止まった足。瞬間強烈な臭気。
 アンモニア混じりの激しい異臭が僕の鼻を刺激する。

 何事かと振り向くと、そこに。居た。

 「な、なぁあんた……。な、何か食い物持ってないか?」
 「な、なんでも良いんだ……。お腹減って……」
 「な、なぁ……」

 そこに「彼女」は居た。ああ、こんな所に居たのか。

 「なっあっ!?」

 僕は彼女の手を掴むと、そのまま路地を出て進んだ。

「な、なんだよっ!! は、離せっ!! ああ、力が出ない……」
「くそっ!! くそっ!!」
「くそぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 その懐かしい声を聞いて、すり減った心が少し和らいだ気がした。
 
 
 
 
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