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第1章 グリム編
第11話 銅貨5枚の宿屋生活 異世界通貨の価値と『冒険者ギルド』への道
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門番お勧めの宿屋を探して広場の外周を歩く。
広場に面した宿屋なら、どれでも外れは無いらしいからな。
家の絵が描かれている看板の建物が宿屋のようだ。
どれも3階建て。
どれが良いのか分からないので適当に入ってみる。
「いらっしゃいませ」
ドアを開けるとカウンターの女に声を掛けられた。
一見して南国の田舎にいそうなおばちゃんって感じだ。
「やあ。ここは宿屋かな?」
「はい、ブルームの宿屋へようこそ。
泊まりですか?それとも食事ですか?」
「泊まりでお願いしたいんだが」
「それでしたら朝食付きで銅貨5枚、夕食ご希望なら銅貨1枚の追加になります」
「そうか、では夕食付きで頼む」
「1泊でよろしいですか?」
銅貨5枚だから5000円、夕食付で6000円か。
結構するな。とりあえず1泊で様子を見るか。
「後から延泊っていうのは可能だろうか?」
「今日中に言っていただければ。最後の1部屋になりますので」
「分かった。じゃあ延泊する時は早めに伝えるよ」
「はい。水桶は銅貨1枚になりますが、どうなさいますか?」
「水桶? 飲み水のことか?」
「いえいえ、お客様。
うちは飲み水なんて高価な物はお出し出来ませんよ。
体を清める水桶のほうです」
「ああ、そっちか、すまんすまん。
では頼もうかな」
高級宿でも提供できないほど飲み水が高価らしい。
この世界では水が貴重なのか。その水桶の水は飲んではいけないな。
「後で部屋にお持ちしますね。
それでは合わせて銅貨7枚いただきます」
「銀貨でも良いかな?」
「大丈夫ですよ。銅貨3枚のお釣りになりますね」
なるほど、銀貨1枚=銅貨10枚ってことか。
すると日本円に換算すると、銀貨1枚=1万円。
1泊朝夕付きで7000円だから、30泊すると21万円ってことか。
高いな。
今の全財産では30泊が限界だ。
これで高級宿なんだろうか。
現代日本人の俺からすると木造賃貸アパートって感じなんだが。
まあ確かに床も綺麗に掃除が行き届いている気はするか。
それでも匂っているが、何とか息はできるレベルだ。
「食堂は1階になります。
夕食は17時の鐘が鳴ったらお越しくださいね」
「分かった。
――ああ、そうだ。ところで今は何時だったかな?」
「もうすぐ12時の鐘が鳴ると思いますよ」
「ほう、そうだったか。
そうだ、朝食はいつ来れば良いのかな?」
「朝は6時の鐘が鳴ったら、いつ来ていただても大丈夫ですよ」
「そうか。分かった」
「お部屋は階段を上がって突き当りの左手の部屋になります。
鍵はこちらです。
厠は庭を出たところにありますよ」
「どうも」
なるほど、6時と12時と17時に鐘が鳴るのか。
この世界でも時間の概念はあるらしい。
1日何時間か気になるところだが、それは聞けないな。
それよりも先立つものは金だ。
仕事の情報を聞いておきたい。
「あーそうだ。
あと一つ聞きたいんだが、この街で仕事を斡旋している所はあるだろうか?」
「え? ああ、冒険者ギルドのことでしょうか?」
「そう、それそれ。どこにあるのかな?」
「冒険者ギルドでしたら広場を挟んで向かいにありますよ」
「そうか、ありがとう」
礼を言って階段を上がる。
突き当たって左の部屋のドアの鍵を開けて中に入る。
部屋の中は6畳1間のスペースにベッド1つとテーブル1つに椅子が2つ。
3段の衣装ケースもある。
全部木造りだ。
「狭いな。ワンルームって感じか。
――まぁ贅沢は言えないか。木の上で寝ることを考えれば個室で寝られるだけ有難いってもんだ」
窓が小さいから部屋の中は暗い。
窓にはガラスなんてものはない。
木製の引き戸のような板で開け閉めするだけだ。
テーブルにはロウソク台にロウソクと、その横に石がある。
火打石だろうか。
使い方が分からん。
魔法でロウソクに火を灯すと少し部屋が明るくなった。
「なんか臭いな」
肉の脂を燃やしているような匂いがする。
ロウソクが脂で作られているようだ。
臭いのでロウソクの火を消して、部屋の中央に魔法で小さな炎を浮かせて照明にする。
魔法の炎は放っておいても消えないから照明代わりに使えるな。
ベルトを外して荷物をテーブルに置き、ベッドに寝転がる。
クッション性は悪くないが、どうにも背中がチクチクする。
シーツがガサガサしているので、それかと思ったらそうじゃない。
シーツを捲ってみると、マット代わりに藁が敷き詰められている。
「マットじゃないのか……」
藁って虫とか大丈夫なんだろうか。
そうこうしているとドアがノックされた。
「水桶をお持ちしました。ここに置いておきます」
「すまんな」
宿屋の少年が部屋の隅に水桶を置いていった。
水桶は高さ20センチ位、ランドセルを縦にしてギリギリ置ける位の小さい桶だ。
その桶に7分目くらいまで水が入っている。
見た目は透明の水で普通なんだが、飲めないってことは汚いんだろうな。
鐘の音が聞こえてくる。12時の鐘が鳴ったようだ。
ベッドに寝転がって空中の炎を眺めながら思案する。
何はともあれ安全な寝床を手に入れることができた。
部屋のドアは木製だから侵入者が外からこじ開けることも可能だろうが、それでも防御する時間くらいは稼げるだろう。
この街は金さえあれば飢え死にすることはなさそうだな。
金を稼ぐための手段が必要だ。
金を稼いで生活基盤を安定させなければ。
だが、この世界は思った以上に危険だな。
街ですれ違った男は大抵が剣やナイフを腰に下げて武装していた。
武装していない奴もいるが、そういう奴には護衛が傍にいる。
非武装なのは女子供と奴隷。あとは貧民もか。
すれ違う人間が皆武器を持っている。
ふいに攻撃されたら防ぎようがない。そこで俺の人生は終わってしまう。
今はほとんど無防備に近い。
身を守る手段が必要だなぁ。
ようやく落ち着いて色々やれる場所が出来たんだ。
まずは自分に起きたことを知ることからだな。
敵を知り己を知れば百戦危うからずってな。
3日前、俺は帰宅中に電車で寝ている所を異世界に連れてこられた。
一体あの時に何が起こったのか全く分からない。
寝ていたのが心底悔やまれる。
あの森では地球人に出会わなかった。
俺だけ飛ばされた可能性が高い。
誰が何のために呼んだのか。
周りには誰もいなかったが、どこかに俺を異世界に召喚した奴がいるのかも知れない。
今のところ日本に帰還するための手がかりは2つか。
1つ目はあの森の目覚めた場所。
だが、あそこは何の痕跡も見当たらなかった。
2つ目は魔法だな。
日本に帰還する術があるかも知れない。
その魔法の術を探ることが目標か。
家族の元へ帰らなくては。
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『 おっさん異世界物語 』
と検索してください。
(※作者名『眠れる森のおっさん』で検索しても見つかります)
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「やあ。ここは宿屋かな?」
「はい、ブルームの宿屋へようこそ。
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「水桶? 飲み水のことか?」
「いえいえ、お客様。
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「ああ、そっちか、すまんすまん。
では頼もうかな」
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この世界では水が貴重なのか。その水桶の水は飲んではいけないな。
「後で部屋にお持ちしますね。
それでは合わせて銅貨7枚いただきます」
「銀貨でも良いかな?」
「大丈夫ですよ。銅貨3枚のお釣りになりますね」
なるほど、銀貨1枚=銅貨10枚ってことか。
すると日本円に換算すると、銀貨1枚=1万円。
1泊朝夕付きで7000円だから、30泊すると21万円ってことか。
高いな。
今の全財産では30泊が限界だ。
これで高級宿なんだろうか。
現代日本人の俺からすると木造賃貸アパートって感じなんだが。
まあ確かに床も綺麗に掃除が行き届いている気はするか。
それでも匂っているが、何とか息はできるレベルだ。
「食堂は1階になります。
夕食は17時の鐘が鳴ったらお越しくださいね」
「分かった。
――ああ、そうだ。ところで今は何時だったかな?」
「もうすぐ12時の鐘が鳴ると思いますよ」
「ほう、そうだったか。
そうだ、朝食はいつ来れば良いのかな?」
「朝は6時の鐘が鳴ったら、いつ来ていただても大丈夫ですよ」
「そうか。分かった」
「お部屋は階段を上がって突き当りの左手の部屋になります。
鍵はこちらです。
厠は庭を出たところにありますよ」
「どうも」
なるほど、6時と12時と17時に鐘が鳴るのか。
この世界でも時間の概念はあるらしい。
1日何時間か気になるところだが、それは聞けないな。
それよりも先立つものは金だ。
仕事の情報を聞いておきたい。
「あーそうだ。
あと一つ聞きたいんだが、この街で仕事を斡旋している所はあるだろうか?」
「え? ああ、冒険者ギルドのことでしょうか?」
「そう、それそれ。どこにあるのかな?」
「冒険者ギルドでしたら広場を挟んで向かいにありますよ」
「そうか、ありがとう」
礼を言って階段を上がる。
突き当たって左の部屋のドアの鍵を開けて中に入る。
部屋の中は6畳1間のスペースにベッド1つとテーブル1つに椅子が2つ。
3段の衣装ケースもある。
全部木造りだ。
「狭いな。ワンルームって感じか。
――まぁ贅沢は言えないか。木の上で寝ることを考えれば個室で寝られるだけ有難いってもんだ」
窓が小さいから部屋の中は暗い。
窓にはガラスなんてものはない。
木製の引き戸のような板で開け閉めするだけだ。
テーブルにはロウソク台にロウソクと、その横に石がある。
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使い方が分からん。
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「なんか臭いな」
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誰が何のために呼んだのか。
周りには誰もいなかったが、どこかに俺を異世界に召喚した奴がいるのかも知れない。
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