おっさん異世界物語 ~物理魔法と「鉄の理」。愛欲と硝煙に塗(まみ)れた男が、やがて神を殺すに至る覇道戦記~

眠れる森のおっさん

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第1章 グリム編

第14話 教会で魔法を盗め! 司祭様の『キュア』とおっさんの『キュアオール』

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 その後、昼飯を軽く済ませて冒険者ギルドへ向かった。
 昨日の少女が受付にいるので、どんな依頼があるのか聞いてみる。

「街中の仕事なら荷物の配達に土木工事、通りの掃除なんてよくありますね」
「掃除ってのは、あの道路の馬糞とかゴミとか?」
「はい、大きな桶で5杯分を街の外にある穴まで捨てると鉄貨5枚貰えます」

 桶1杯で鉄貨1枚か……安いな。
 まぁ高くてもやりたくないが。

「ちなみに、それはどんな奴らがよくやるんだ?」
「街の西側を流れるメリン川に橋がありますよね。
 その橋を渡った向こう岸に暮らす人たちです」
「ほう、メリン川というのか。
 橋の先というと城壁の外ではないのか?」
「うん、市外区域です。
 貧しい人たちが沢山暮らしてるんです」
「なるほどな」

 川の向こう側に市外区域というのがあるのか。
 今度、見に行ってみるか。

「それじゃ魔物狩りの依頼なんてのはあるか?」
「今は魔物の討伐依頼は出ていませんね。
 常設依頼になります」
「ふむ。ではその常設依頼というのを教えてくれ」
「常設依頼というのはですね。
 魔の森はそのままだと魔物が溢れてしまうから、魔物の間引き依頼が常に出てるんですよ」
「ほう、間引き依頼か」
「魔石の大きさで討伐報酬が決まってるんです。
 例えばゴブリンクラスの魔石なら討伐報酬で銅貨2枚。
 魔石も銀貨1枚で買取してるから、あわせて銀貨1枚と銅貨2枚って感じです。
 ちなみにゴブリンは買取できませんよ。持ってこないでね!」
「ゴブリンは食べないってことか。
 ならゴブリンの上になると?」
「ポイズンスネークのような大物です!
 グレイトボアなんかもそうだけど、討伐報酬と魔石をあわせて銀貨2枚と銅貨5枚になってます。
 ただ本体の買取が高額だから大きな金額になることが多いんですよね」
「そうか。では魔物を狩れたら持ってこよう」
「ぜひ! 待ってますので、大物!!」

 おいーどうなってんだ、この子の頭の中は。
 大声出すなって言ってんだろうが。
 まぁ大体は分かったな。
 魔物を適当に狩ってくれば査定して買取ってくれると。

「ところで教会に行きたいんだが、どこだろうか?」
「教会なら広場に面した大きな建物ありますよね、あれです」
「そうか」

 やはり昨日見かけた教会っぽい建物で正解だったようだ。

 冒険者ギルドを出て、教会に行ってみる。
 教会の建物に入ると、地球の教会と似たような造りになっていた。
 職員が歩いていたので話しかけてみる。

「やあ、ここは教会かな?」
「ええ、そうですよ」
「魔物に受けた毒を治療して貰えると聞いてきたんだが。
 魔法で癒してくれるのだろうか?」
「毒の治癒魔法ですね。
 ええ、確かに教会で治療しておりますよ」
「そうか。治療して貰うのに謝礼は必要だろうか?」
「毒の治療でしたら金貨1枚からの寄付を頂戴しておりますわ」

 1回で金貨1枚か、高いな。
 気軽には受けられないが、今の俺には受けたい理由がある。

「なるほど。ではお願いできるかな」
「はい? あなたが毒を受けておられるのですか?」
「数日前にかすり傷を負ってしまって。
 念のため用心にと思ってね」
「ああ、そういうことですか。
 では司祭様をお呼びしてきますわ。
 こちらの個室へどうぞ」
「すまない」

 個室で待っていると司祭がやってきた。
 白い顎髭を生やした爺さんだ。
 この爺さんからは、他の人間よりもほんの少しだけ大きな魔力を感じる。
 この魔力量は街ですれ違った金持ちの後ろにいた女と同じ位だ。
 あの女も魔法を使えるのかもしれないな。

「毒の治療をしたいというのは、あなたかな?」
「ああ。お願いしたい」
「では、教会に寄付をよろしいですかな」

 金貨1枚を手渡す。

「これで良いだろうか」
「確かに。それでは早速治療しましょう」

 そう言って司祭は目を閉じた。瞑想しているようだ。
 爺さんが何か喋りだした。

「聖なる滋養の力は、神の祝福の息吹……」

 俺は爺さんの魔力の動きに集中する。
 小さな動きでも見逃さない。
 心臓を中心に、魔力が胴体へと広がっていっているのが分かる。
 広がった魔力が右腕の方に集まっていく。
 更に腕の先へと移動させている。
 右手に魔力が集まってきた。

「この者の体を蝕む一切を取り払わん……」

 爺さんが唱えながら右手を前に伸ばすと、魔力が手のひらから外に放出されていく。
 手のひらから10センチほど離れた中空に、サッカーボール位の魔力が浮遊している。

 ――うん?

 よく注意してみると、爺さんの体内と体外の魔力が糸のように繋がっている。
 魔力を繋いでコントロールしているんだろう。
 爺さんが右手を俺の胸に近づけてくる。
 右手の前に浮遊していた魔力が俺の体を包み込んでいく。

 爺さんがカッと目を見開いた。

「『キュア』」

 体を包んでいた魔力が沁み込んでいくように消えた。
 俺のヒールみたいに特に光ったりはしないんだな。

「これで毒は治療されました。
 あなたに神の御導きがあらんことを」
「どうもありがとう。助かったよ」

 礼を言って教会を出ていく。

 この世界の人間が魔法を使うところを初めて見た。
 毒の治癒魔法はキュアって言うんだな。
 大体分かった。
 あれなら俺にもできるんじゃないだろうか。
 毒や細菌とか体内の異物を浄化するイメージで良いだろう。

 宿の部屋に帰って、早速できるか試してみる。

「よし、行くぞ。『キュア』」

 とりあえずイメージを固めて唱えてみると、俺の体を薄い光の膜が包み込んだ。
 何故かヒールと同じように光ってしまう。
 爺さんは光らなかったんだが。
 これでできているとは思うんだが、毒にかかってないから効果があるかは分からない。

 あの爺さんは心臓にある魔力で魔法を使っていた。
 何かそれっぽい言葉を唱えながら瞑想して、小っこい魔力を活性化させていた。
 俺は唱えなくても出来るんだが、あれって必要なのか?
 試しに、小っこい魔力でやってみるか。

「『キュア』」

 今度は体が光らなかった。
 あの爺さんみたいにできた気がする。
 どうやら使ってる魔力量が少な過ぎると光らないみたいだな。
 俺の光る魔法の方が凄そうだ。
 光るのは『キュアオール』とでも呼ぶか。

 それにしても爺さんは魔法発動に30秒近くもかかっていた。
 かなり遅いぞ。
 あの調子なら他の魔法も発動に時間がかかりそうだ。
 あの爺さんが特別遅いってことはないだろう。
 仮にも司祭様なんだからな。
 ペーペーじゃあるまいし。

 俺は『キュア』も『キュアオール』でも10秒かからない。
 トレーニングすれば、もっと早く発動できるようになるだろう。
 アイスバレットは2秒で発射できるしな。

 この魔法が存在する世界でも、俺の力は異端だってことか。
 これが分かったのは大きい。
 金貨1枚は痛い出費だが、お値段以上の価値はあった。
 司祭の爺さんに感謝だな。

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Web検索、またはノクターンノベルズのサイト内で
『 おっさん異世界物語 』
と検索してください。
(※作者名『眠れる森のおっさん』で検索しても見つかります)
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