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第1章 グリム編
第39話 まるで北欧の美少女!? ヘルガの正体と食い意地事情
しおりを挟む湯浴みを終えて汚れが落ちたヘルガは、色素が抜けたような白い肌をしていた。
クシャクシャの茶髪だった髪の毛が、腰まで届きそうな綺麗なブロンド色になって、夕陽を受けてキラキラと輝いている。
尖るような顎先と造形の整った顔立ち。
切れ長の眉に、ぱっちりした目に銀色の瞳。
桜のような小さな唇。
「はい……まるで…お人形みたい」
「まさか、ここまで変わるとはな」
同じ事をニーアも感じたようだ。
北欧系美少女。
まるで全身が精巧に作られた人形のようだ。
脂肪の少ない引き締まった身体。すらりとした手足。
ニーアも美しいが、ヘルガはむしろ整い過ぎた造形美を感じさせる。
彼女は湯上りの肌に大きな布を巻き付けただけの姿だが、それでも隠しきれない輝きを放っていた。
「おい、ヘルガ。
ちょっと笑ってみろ」
「はあい。あはっあはははっ!」
「ほう……」
無邪気に笑うその姿は、先ほどまでの薄汚れた小娘と同一人物とは思えない。
門扉の方に目を向けると、何人かの通行人が足を止めてヘルガを眺めていた。
こんな美少女が庭に立っていたら、そりゃあ目立つだろうな。
「よし。もういいぞ。
中に入っていい」
「やったあ! すっごいお家だあ!」
ヘルガを屋敷の中に入れてやる。
「じゃあ、ニーア。ヘルガと一緒に夕飯の支度をしてくれ。
ヘルガには適当な服を着せてやってくれ」
「はい、ご主人様」
ニーアがヘルガを連れてキッチンへ行く。
しばらくすると料理が出来がったようだ。
ニーアのお下がりの服を着たヘルガが、嬉しそうに皿を運んでくる。
テーブルを挟んで2人を向かいに座らせる。
「ご主人様、オークのお肉でステーキを作ってみましたっ!」
「おお、これは旨そうだな。よし、食ってみるか」
「やったあ! いただきまあす!」
オーク肉のステーキは、ほどよく霜が降っていた。
日本で言う所の高級国産牛ほどには美味い。
何故あんな野生で育った雑食っぽいオークが美味なのか。体内の魔石が影響しているのか。
「どうだ、ニーア。美味いか?」
「うぅっ……こんなに美味しい食事をできるなんて……ありがとうございます」
「はぐはぐ……あたしも! すっごくおいしい!」
「オーク肉は沢山あるからな。これから毎日食えるぞ」
ニーアが感涙にむせぶ横で、ヘルガは元気よくがっついている。
「ヘルガ。お前はアホなのによ。
どうやったら冒険者ギルドの受付なんかに採用されたんだ?」
「もぐもぐ…ゴキュッ…。
ギルドマスターに拾って貰ったんです~」
「道端でか?」
「はい、見た目がいいから働いてみるか?って」
「なるほどな。で、どの位やってたんだ?」
「1年位!」
「それだけ働いて、何であんなボロ服着てるんだよ。
給料はどうした?」
「すぐ無くなっちゃうんです。
だから洋服買うお金も無くって」
「何だ? 冒険者ギルドの受付ってのは給料安いのか?」
「月に銀貨5枚だから普通なんですけど。
いっつも食費に消えちゃって。あはっ」
「ほう……飯代に消えるのか」
「それでもお腹すくから仕事帰りはいっつも道路掃除して、おかず代を稼いでたんですよ~。あはっあははっ」
「お前それでいつ見ても薄汚れてたのかよ。それでよくギルドにいられたもんだな。
……そういえばお前、俺に大物持って来いとか喚いて煩かったよな?」
「あ、あれは……大物の買取札を担当すると臨時ボーナス貰えるから……もう1品おかず食べたくって。あはっ」
「……じゃあ、道端で俺に責任とれとか喚いてたのは?」
「あの時は~お腹すいてて。
ついでにご飯食べさせて貰えないかな~……なんて。えへっ」
こいつ……飯に全振りのアホだな。
こいつの脳みそ飯の事しか頭にないぞ。
それが裏目に回りまくっているパターンだ。
「おい。ヘルガ。よく聞けよ。
お前は俺がきっちり食わしてやるからな。
その代わり、もう余計なことは一切考えるな」
「やったあ! はあい!」
「俺とニーアの言うことを何でも素直に聞け。
そうすれば、お前は飯がたらふく食える。
だから、お前は俺たちを喜ばすことだけ考える。
いいか?」
「はあい! リューイチ様とニーア様のことだけ考える! あたしが喜ばす!」
「言うこと聞かないと、分かるな?
飯を食わしてやらないからな」
「ひいいっ……ガチガチガチガチ」
ヘルガが幽霊でも見たかのように青ざめて指の爪を噛んでいる。
その様子を隣に座ったニーアが目を細めてつぶさに観察している。
飯を食い終わるとニーアがヘルガを連れて3階へ上がっていった。
俺は居室に戻って暖炉の薪に火をつける。
ベッドに横になって今後の事を考える。
この異世界はどこに悪意が潜んでいるか分からない。
ニーアを1人にさせるのは危険だ。
屋敷内だって安全とは限らない。
彼女に護衛をつけたいが、そもそも護衛を雇っても、そいつ自体が信用できない。
誰かのスパイなんて事もあり得る。
やはり俺が一緒にいて守ってやるしかない。
だが、そうすると俺が何も出来なくなるんだよな。
まぁ懐に余裕もできたことだし、屋敷でゆっくり過ごしながら考えるか。
ガンズ達から巻き上げた財布を取り出して中身を改める。
ガンズが金貨6枚以上、残り3人が金貨3枚弱。
合計すると金貨9枚以上の金があった。
現金だけでオーク1体分の儲けだな。
持ち物も売ればもっと金になる。
これって、また結果的にはヘルガのお陰か?
――いやいや、ナイナイ。あいつのせいで散々な目にあったしな。迷惑料だ。
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