おっさん異世界物語 ~物理魔法と「鉄の理」。愛欲と硝煙に塗(まみ)れた男が、やがて神を殺すに至る覇道戦記~

眠れる森のおっさん

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第1章 グリム編

第41話 魔法で作る露天風呂! そして明かされる『言葉』の秘密

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 庭に風呂を作ってみるかな。
 場所は建物に向かって左側の側面。
 居室の窓から顔を出した所の真下だ。
 外壁と塀の間に10メートルの間隔がある。
 そこに風呂を作ることにする。

 作り方は簡単だ。
 魔法で岩を作り出して加工する。

 重量が相当なものになるから屋内には作れない。この屋敷の建築水準では重さに耐えられない。
 勝手に屋敷の骨組みを補強なんかしたら怒られるしな。
 だから屋外に作るしかない。

 まず四角形の岩を作り出す。大型のユニットバス位のサイズだ。

 次は異次元魔法を発動して岩の内部をくり抜いていく。
 まずは出入り口を作る。
 後から扉を取り付けられるような大きさにしておく。
 通気口は……いらないか。
 内部の空洞を綺麗に仕上げていく。
 異次元魔法で削り取られた部分は、鏡面仕上げのようにツルツルだ。

 同じ要領で今度は浴槽を作る。
 物を置く台と、椅子も作っておく。
 全て石造り、ならぬ岩造りだ。
 魔法で出来た岩の種類が何なのかは分からない。
 大理石のような明るいグレーの色をしている。かなり強度はありそうだ。

 出来上がったので、早速バスタブに湯を張って入ってみる。

「っはああ~。あったかいなぁ。
 最高だ……バシャバシャッ……ふうっ……い~い、湯っだっなっ。あははん」

 湯に浸かって気持ち良くなると、この歌を歌いたくなる。
 久しぶりの風呂は最高だった。
 出入り口しか穴はないとは言え、立派な露天風呂だしな。
 湯上がりのビールと行きたいところだが、この異世界の不味いエールは飲む気がしない。

 ニーア達も呼んでくる。

「ご主人様っ!? こ、これは何ですか!?」
「ええ!? なにこれ~!?」
「ニーア。これが前に話した風呂だ。
 さあ、皆で一緒に入るか」

 3人で湯船に浸かる。
 湯船は大きく作ってあるから3人位なら余裕だ。
 ニーアの背中を流してやりながら、ゆっくりと湯に浸かる。
 ヘルガは俺の方を向いて正面に座らせる。

「ご主人様……まるで神の御許に来てしまったみたいです……」
「あ゛~。ぎぼぢい゛い゛~」

 ニーアが感動で目を潤ませている。
 ヘルガからオヤジのようなダミ声が出ている。

「ニーア。どうした?
 泣いているじゃないか」
「ごめんなさい……ミアのことを考えてしまって……」
「娘のことか。
 一体どこにいるんだろうなぁ」
「うぅっ……ひっ……ひっく……」

 ニーアが娘のことを思って涙を流している。
 彼女がたまにぼんやりしていることがあるのには気がついていた。
 俺の前では気丈に振る舞っているが、娘のことが頭から離れたことはないんだろう。
 何とかして娘を手に入れてやりたいが……何の手がかりもなく探し回って見つかるとも思えない。

「……ニーア。お前はジパーンの街でヒルベルトに買われたのか?」
「ぐすっ……いいえ、ニベールという都市にいる奴隷商に買われて、それからヒルベルト様に買われました」
「ミアも一緒にニベールの奴隷商に買われたのか?」
「分かりません……ミアとは別々にされていましたので……」
「なるほどな……なら餅は餅屋だ。
 ヒルベルトにミアの捜索を頼んでみるか」
「ええっ!?……嬉しいです、けど……でも」
「後で商館へ行ってみるか。お前もついてこい」
「はい……ありがとうございます……ぐすっ」

 咽び泣くニーアを後ろから抱き締めてやる。
 ヘルガはすっかりのぼせて、床に大の字になって寝そべっている。

 昼飯を食った後、早速ヒルベルトに会いに行ってきた。

 ヒルベルトもニーアの娘がどこにいるか皆目見当つかないそうだ。
 ニベールでニーアを買った奴隷商に、馬車便でミアの行方を問い合わせてくれるというので、頼むことにした。
 手数料に銀貨4枚を支払う。
 ニベールまでは馬車で4日の距離。
 結果が分かるのは早くて10日後。
 遅いと、もっとかかる。

 行方が分かる可能性は、半々か、それよりもっと低い。
 奴隷商と一口に言ってもピンからキリまでいる。
 ヒルベルトのように都市に拠点を持つ大店の商人もいれば、街や村を転々とする商人、ろくに台帳管理していない奴隷商、盗賊もどきの奴もいるそうだ。

 ヒルベルトに礼を言って商館を後にする。

「ニーア。ミアが見つかるといいな」
「はい……ありがとうございます……ご主人様のご温情に、どうやってお返しすればいいか……」
「じゃあ、もっと深く俺のことを信じてくれ。それでいい」
「ご主人様ったら……もう私の心は全て捧げているんですよ……」
「そうか。ニーア」

 屋敷に帰って居室に戻ると、ヘルガがベッドで遊び疲れて眠っていた。
 俺とニーアも寛げる格好になってベッドに横になり、少し昼寝をする。

 ---

 ――夜。

 夕飯を食った後に、ニーアに文字の読み書きを教えて貰う。
 いつまでも読めない書けないでは困るからな。

 大凡どの国でも共通語が通じるらしいので、共通語を教えて貰うことにする。

「ご主人様。あの……流暢な共通語とジパーン語を話されているのに、どうして読み書きだけできないんですか?」
「なに?……俺は2カ国語を喋っているのか?」
「え? 私と2人で話す時にはジパーン語ですし、他にも人がいれば共通語と使い分けていると思いますが……」

 話す相手によって聞こえている言語が違う……。
 その場にいる聞き手によって、自動的に最適な言語が選択されているってことか。
 これは……確かめないといけないか。

「ニーア……俺は今ジパーン語を喋っているのか?」
「え? はい、ジパーン語を話されていますが……」
「……俺の口の動きをよく見てみろ。
 不自然に感じないか? どうだ?
 俺はジパーン語を喋る時の口と舌の動きをしているか?」

 ――ガタッ

「……え?……ち、違う……口の動きが違うっ! ええっ!? ごっご主人様……これは一体!?」
「ニーア、落ち着け。落ち着くんだ。まず椅子に座れ」
「は、はい……」

 やはり俺だけではなかった。相手も同じだ。
 俺の言葉を聞く相手も、勝手に翻訳されて聞こえている。
 聞こえてくる言葉と口の動きが合っていない。

「やはり、そうだったか。
 ニーア。怖がらないで聞いてくれ」
「ご主人様は一体……」
「俺はな。
 実はジパーン語でも共通語でもない別の言葉で話しているんだ。
 それを相手の認識できる言葉で聞かせる力を持っている」
「そんな……!
 まさか、そんなことって……」
「この世界に俺のような力を持つ人間はいないのか?」
「……いません。
 ……こ、これは……まさしく神の御業では……」

 他には同じ力を持つ人間はいないのか。
 一体どういうことだ?
 この翻訳の力といい異次元魔法といい、俺だけに固有の能力が多い。

 異世界人からしたら、翻訳されるなんてあり得ないこと。
 本来あり得ない事だから、口と言葉が合っていないことに気づかないということか。
 そうだと疑って注意して見られるとバレてしまう。
 危険だな。
 今後は口元の動きを注視されないよう注意しなければ。

「違う。いや、ある意味では近いのかも知れないが。
 前にも言ったが、俺は遥か遠い世界からやってきた」
「遥か遠い……世界……遥か、神話の……」
「……この能力だけではない。
 お前も知ってるだろう? 俺の魔法の力を」
「……ご主人様の……魔法……神に等しき……」
「いや、違うんだが。まぁとにかく、周囲に俺の言葉の力が悟られないように気を配ってくれ」
「……はい、全てはご主人様の御心のままに……」

 ニーアが跪いて胸の前に手を組んで祈るような面持ちで俺を見上げる。
 どんどん違う方向へニーアの理解が進んでいっている気がする。

「まぁ、そういう訳でな。
 言葉は通じるが、読み書きができないんだ。
 だから教えてくれ」
「分かりました。それでは――」

 こうして、これからは夜に少しづつ共通語の勉強を続けていくことになった。

 ちなみに俺とニーアが話している間、ヘルガはベッドでぐっすりと眠りこけているから、俺たちの話は全く耳に入っていない。

 ヘルガは冒険者ギルドで使う文字は1年でひと通り覚えたそうだ。
 おつむは弱いのに、脳みそのスペックが異様に高いな。

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【探し方】
Web検索、またはノクターンノベルズのサイト内で
『 おっさん異世界物語 』
と検索してください。
(※作者名『眠れる森のおっさん』で検索しても見つかります)
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