おっさん異世界物語 ~物理魔法と「鉄の理」。愛欲と硝煙に塗(まみ)れた男が、やがて神を殺すに至る覇道戦記~

眠れる森のおっさん

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第1章 グリム編

第46話 新たなる魔法を求めて! 『戦術級魔法』の開発実験

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 ――翌日。

 朝食を食ったあと、1人で魔の森へとやってきた。
 今はメリン川を渡って少し奥に行った場所にいる。
 ここなら冒険者が来ることもないだろう。

 先日のオークとの苦戦を踏まえて、この場所で魔法の特訓をする。
 異次元空間でも特訓できるが、何もない暗黒の世界ではどうしてもやれることが限られてしまう。

 特訓の目標は2つ。
 マルチタスクの習得と、新魔法の開発だ。

 マルチタスク。
 まだ魔法の同時発動に慣れていない。
 オークとの戦いでもフライで素早く飛び回りながら多彩な攻撃魔法を放てていれば、そこまで苦戦しなかったはずだ。
 複数種類の魔法を同時並行で処理できるようになることが目標だ。
 これは屋敷にいる時にも小さい魔法で練習していく。

 新魔法。
 オーククラスの頑丈な魔物を確実に仕留められる威力が最低条件だ。
 オーク以上の魔物もいるはずだ。
 想像を絶する化物もいるかも知れない。
 より高威力の魔法、より広範囲の魔法を開発する。
 それと強力な防御魔法が必要だ。
 強力な魔法は使えても所詮は生身の人間だからな。

 ジョンとレイナにニーアたちの護衛を任せて、昼間はこの場所でひたすら特訓する。
 近寄ってくる魔物を特訓がてら次々に仕留めていく。
 小遣い稼ぎも兼ねているのだ。

 ――1週間後。

 いくつかの新魔法が仕上がった。

 単体攻撃魔法。

 直径10センチの円錐状をした岩を作り出す。
 前方1メートル先に浮かせて回転を加えていく。
 シュルルルと風切り音をさせながら高速回転している岩弾を大木に向かって発射する。

「『ストーンバレット』」

 バァンと大きな音を立てて大木を貫通した。
 氷から岩に変更して、更に回転を加えた分だけアイスバレットよりも高威力だ。

 岩弾の着弾地点まで近づいていく。
 別の大木に突き刺さって止まった岩弾を発見する。

「消えろ」

 大木に突き刺さった岩弾がザラァッと消えて無くなった。
 魔法で作り出した現象は、消滅させることも自由自在であることが分かった。
 俺を離れて飛んでいくと制御を失うが、近づけばまた制御を取り戻す。

 例えば戦闘中に相手の鎧だけを瞬時に消し去り、無防備にさせることも可能かもしれない。

 次。

 円錐状の岩弾を作って1メートル先に浮かせる。
 岩弾を溶け出す一歩手前まで赤熱させる。
 真っ赤になった岩弾から熱が放出されて周囲が暑くなる。
 十分に高速回転させてから、大木に向かって打ち込む。

「『溶岩弾』」

 バババアァンッと音がして、射線上にあったいくつもの大木に大穴が空いた。
 溶岩弾の通った跡がブスブスと音を立てながら焼け焦げている。
 勢いを失った溶岩弾が最後に突き刺さった大木がメラメラと燃え始めている。

 実戦ではもっと小さくて小回りのきく方が良いかも知れない。
 銃弾程度の大きさでも頭に喰らったら死は免れないだろうからな。

 既に開発済のアイスバレット。
 液体の熱を奪って氷を作れるということは、物質の熱を操作できるということだ。
 その仮説は正しかった。
 魔法で作り出した岩に熱を加えることもできたし、空気を熱することも可能だった。

 防御魔法。

 地面にあぐらをかいて座る。

「『アイススフィア』」

 自分を中心として、厚さ20センチでできた分厚い氷の球体を作り出す。
 球体が衝撃を分散するからオークの棍棒程度ならびくともしない防御力を誇る。
 座っている地面の土ごと抉り取るように作るから、氷の中にいても尻が冷たくない。

 あぐらをかいたまま氷の球体を浮かび上がらせる。
 全く空気の入っていない氷は透明度が高く、外の様子がよく見える。
 全周防御しながら飛行できる新魔法だ。

 範囲攻撃魔法。

 アイススフィアのままフライで浮き上がった状態から発動する。

「『竜巻』」

 氷の球体を中心にして円を描くように暴風を作り出す。
 吹き荒れる暴風を高温に熱していくにつれて、激しい上昇気流が巻き起こる。
 天まで伸びた竜巻の渦が、周囲に存在する全てを空高くへ連れ去って行く。
 竜巻が過ぎ去った後には何も残らない。

 アイススフィアを解除して地面に降り立つ。

「『ファイアブレス』」

 直径1メートルの巨大な火炎放射が30メートル先まで悉く焼き尽くす。
 火炎放射を受けた木々が轟々と燃え盛る。

「『ウォーターブレス』」

 今度は直径1メートルのジェット水流が燃え盛る森を消火していく。
 強烈な水流を受けた大木がメキメキと軋みを上げる。

「『エスケープ』」

 後方に異次元魔法を発動する。
 後ろから前に動かして異次元空間に自分を退避させる。
 一連の動作は一瞬だ。
 周囲の人間や魔物からすれば、忽然と消え失せたように見えるだろう。
 どんな強力な攻撃だろうが、次元を超越して俺の支配する異次元空間に届くことはない。
 まさに絶対防御魔法だ。

 異次元空間に緊急避難した俺の目の前には、ドアの形をした出入り口がある。
 真っ暗な部屋の中で大画面のテレビを見ているかのように、異次元空間から異世界の景色が見えている。

 自分を中心とした半径3メートル以内であれば、異次元空間の中から異世界の魔素をコントロールすることも可能である事が分かった。

「『メルトダウンボール』」

 異次元空間の外。
 異世界側にサッカーボール大の岩石を作り出して、それを加熱していく。
 すぐに赤熱した岩石は、融点を超えて次第に溶け始め、真っ赤に輝く灼熱のマグマへと変わっていく。
 俺は全く熱くない。
 テレビの中の風景を眺めている感じだ。
 向こう側で生じた物理現象は、俺の支配する異次元空間には一切届かない。

 俺はマグマの温度を際限なく上げていく。
 灼熱のマグマが太陽のように白く眩い輝きを放ち始める。
 推定数千度まで熱されたマグマの塊。
 それを地面に向けて撃ち放つ。

 マグマは地面に吸い込まれて、ポッカリと空いた穴だけが残った。

 しばらくして、異世界の景色が一瞬にして粉塵に包まれた。

 それを確認して、アイススフィアとフライを発動して身を守りながら異世界に戻る。

 粉塵によって1メートル先も見えない中を飛行する。
 少しすると粉塵を抜けた。
 振り返って見上げると、立ち込める粉塵から大きなキノコ雲が空高くまで立ち上っていた。

 粉塵が収まる頃、そこには50メートルの大きなクレーターが出来ていた。
 そこにあったはずの一切のものが、地面すら消し飛んで無くなっている。

「水蒸気爆発を起こしたか」

 地面を溶かしながら地下深くまで落ちていったマグマが地下水脈に接触して水蒸気爆発が起きたんだろう。
 実験程度の威力に抑えてすらこれだ。
 やろうと思えばグリム市くらいの都市も、一瞬にして煤塵はいじんに帰すことができる。
 超広範囲攻撃魔法の開発に成功した瞬間だった。

 もちろん単体攻撃に使用する事だってできる。
 その場合は弾丸程度の大きさで良いだろう。
 さしずめメルトダウンバレットだ。
 その直撃を食らって生きていられるとしたら、マグマに生息する生物位のものだろう。そんなのいるか分からんが。

 ひと通りの実験を終えたところで、森の奥をアイススフィアで飛行しながらオークを探索する。

 ――いた。

 2体のオークが、巨大な体躯を揺らしながら、こちらに向かって歩いている。

 30メートルの距離まで近づく。

「ブオオオオッ」

 オーク共が俺に気づいて大声を上げた。
 丸太のような大木を振り回して走り出した。

 20メートルの距離。
 アイススフィアで前後左右に飛行して撹乱しながら、狙い易いポジション取りをする。

「『ストーンバレット』」

 アイススフィア越しに、先頭を走るオークの頭へ向けて撃ち放つ。
 岩弾がシュルルルと音を立てて高速回転しながら飛んでいく。
 ボゴッと音を立ててオークの頭部が吹き飛んだ。
 司令塔を失った巨体がゴロゴロと地面を転がっていく。

 先頭のオークが消えて、後ろを走るオークの姿を捉えた。

「『溶岩弾』」

 オークの頭に向けて、小さめに作った赤熱する岩弾を撃ち放つ。
 パァァンッと小気味の良い音がすると同時にオークが膝から崩れ落ちた。
 頭に空いた穴から煙と湯気が立ち上る。
 一撃で脳を焼き尽くし、即死させたようだ。

 あれほど苦戦したオークを難なく仕留める事ができた。
 もうオークは俺の敵ではない。
 これでようやく、魔の森で魔物狩りを再開する事ができる。

 仕留めたオークを収納して、街へと帰って行く。
 この1週間で狩った獲物は、まだ何も売却していない。
 あまりに大量の獲物を狩ったから、これを売りに出したら大騒ぎになりそうだ。
 さて、どうするかな。

 そんな事を考えながら屋敷に戻ると、ニーアが走り寄って抱きついてきた。

「ご主人様! ミアの行方の手がかりが……! 掴めたそうです!」

 ヒルベルトに頼んでおいたミアの捜索が、進展を見せたのだった。

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