47 / 56
第1章 グリム編
第46話 新たなる魔法を求めて! 『戦術級魔法』の開発実験
しおりを挟む――翌日。
朝食を食ったあと、1人で魔の森へとやってきた。
今はメリン川を渡って少し奥に行った場所にいる。
ここなら冒険者が来ることもないだろう。
先日のオークとの苦戦を踏まえて、この場所で魔法の特訓をする。
異次元空間でも特訓できるが、何もない暗黒の世界ではどうしてもやれることが限られてしまう。
特訓の目標は2つ。
マルチタスクの習得と、新魔法の開発だ。
マルチタスク。
まだ魔法の同時発動に慣れていない。
オークとの戦いでもフライで素早く飛び回りながら多彩な攻撃魔法を放てていれば、そこまで苦戦しなかったはずだ。
複数種類の魔法を同時並行で処理できるようになることが目標だ。
これは屋敷にいる時にも小さい魔法で練習していく。
新魔法。
オーククラスの頑丈な魔物を確実に仕留められる威力が最低条件だ。
オーク以上の魔物もいるはずだ。
想像を絶する化物もいるかも知れない。
より高威力の魔法、より広範囲の魔法を開発する。
それと強力な防御魔法が必要だ。
強力な魔法は使えても所詮は生身の人間だからな。
ジョンとレイナにニーアたちの護衛を任せて、昼間はこの場所でひたすら特訓する。
近寄ってくる魔物を特訓がてら次々に仕留めていく。
小遣い稼ぎも兼ねているのだ。
――1週間後。
いくつかの新魔法が仕上がった。
単体攻撃魔法。
直径10センチの円錐状をした岩を作り出す。
前方1メートル先に浮かせて回転を加えていく。
シュルルルと風切り音をさせながら高速回転している岩弾を大木に向かって発射する。
「『ストーンバレット』」
バァンと大きな音を立てて大木を貫通した。
氷から岩に変更して、更に回転を加えた分だけアイスバレットよりも高威力だ。
岩弾の着弾地点まで近づいていく。
別の大木に突き刺さって止まった岩弾を発見する。
「消えろ」
大木に突き刺さった岩弾がザラァッと消えて無くなった。
魔法で作り出した現象は、消滅させることも自由自在であることが分かった。
俺を離れて飛んでいくと制御を失うが、近づけばまた制御を取り戻す。
例えば戦闘中に相手の鎧だけを瞬時に消し去り、無防備にさせることも可能かもしれない。
次。
円錐状の岩弾を作って1メートル先に浮かせる。
岩弾を溶け出す一歩手前まで赤熱させる。
真っ赤になった岩弾から熱が放出されて周囲が暑くなる。
十分に高速回転させてから、大木に向かって打ち込む。
「『溶岩弾』」
バババアァンッと音がして、射線上にあったいくつもの大木に大穴が空いた。
溶岩弾の通った跡がブスブスと音を立てながら焼け焦げている。
勢いを失った溶岩弾が最後に突き刺さった大木がメラメラと燃え始めている。
実戦ではもっと小さくて小回りのきく方が良いかも知れない。
銃弾程度の大きさでも頭に喰らったら死は免れないだろうからな。
既に開発済のアイスバレット。
液体の熱を奪って氷を作れるということは、物質の熱を操作できるということだ。
その仮説は正しかった。
魔法で作り出した岩に熱を加えることもできたし、空気を熱することも可能だった。
防御魔法。
地面にあぐらをかいて座る。
「『アイススフィア』」
自分を中心として、厚さ20センチでできた分厚い氷の球体を作り出す。
球体が衝撃を分散するからオークの棍棒程度ならびくともしない防御力を誇る。
座っている地面の土ごと抉り取るように作るから、氷の中にいても尻が冷たくない。
あぐらをかいたまま氷の球体を浮かび上がらせる。
全く空気の入っていない氷は透明度が高く、外の様子がよく見える。
全周防御しながら飛行できる新魔法だ。
範囲攻撃魔法。
アイススフィアのままフライで浮き上がった状態から発動する。
「『竜巻』」
氷の球体を中心にして円を描くように暴風を作り出す。
吹き荒れる暴風を高温に熱していくにつれて、激しい上昇気流が巻き起こる。
天まで伸びた竜巻の渦が、周囲に存在する全てを空高くへ連れ去って行く。
竜巻が過ぎ去った後には何も残らない。
アイススフィアを解除して地面に降り立つ。
「『ファイアブレス』」
直径1メートルの巨大な火炎放射が30メートル先まで悉く焼き尽くす。
火炎放射を受けた木々が轟々と燃え盛る。
「『ウォーターブレス』」
今度は直径1メートルのジェット水流が燃え盛る森を消火していく。
強烈な水流を受けた大木がメキメキと軋みを上げる。
「『エスケープ』」
後方に異次元魔法を発動する。
後ろから前に動かして異次元空間に自分を退避させる。
一連の動作は一瞬だ。
周囲の人間や魔物からすれば、忽然と消え失せたように見えるだろう。
どんな強力な攻撃だろうが、次元を超越して俺の支配する異次元空間に届くことはない。
まさに絶対防御魔法だ。
異次元空間に緊急避難した俺の目の前には、ドアの形をした出入り口がある。
真っ暗な部屋の中で大画面のテレビを見ているかのように、異次元空間から異世界の景色が見えている。
自分を中心とした半径3メートル以内であれば、異次元空間の中から異世界の魔素をコントロールすることも可能である事が分かった。
「『メルトダウンボール』」
異次元空間の外。
異世界側にサッカーボール大の岩石を作り出して、それを加熱していく。
すぐに赤熱した岩石は、融点を超えて次第に溶け始め、真っ赤に輝く灼熱のマグマへと変わっていく。
俺は全く熱くない。
テレビの中の風景を眺めている感じだ。
向こう側で生じた物理現象は、俺の支配する異次元空間には一切届かない。
俺はマグマの温度を際限なく上げていく。
灼熱のマグマが太陽のように白く眩い輝きを放ち始める。
推定数千度まで熱されたマグマの塊。
それを地面に向けて撃ち放つ。
マグマは地面に吸い込まれて、ポッカリと空いた穴だけが残った。
しばらくして、異世界の景色が一瞬にして粉塵に包まれた。
それを確認して、アイススフィアとフライを発動して身を守りながら異世界に戻る。
粉塵によって1メートル先も見えない中を飛行する。
少しすると粉塵を抜けた。
振り返って見上げると、立ち込める粉塵から大きなキノコ雲が空高くまで立ち上っていた。
粉塵が収まる頃、そこには50メートルの大きなクレーターが出来ていた。
そこにあったはずの一切のものが、地面すら消し飛んで無くなっている。
「水蒸気爆発を起こしたか」
地面を溶かしながら地下深くまで落ちていったマグマが地下水脈に接触して水蒸気爆発が起きたんだろう。
実験程度の威力に抑えてすらこれだ。
やろうと思えばグリム市くらいの都市も、一瞬にして煤塵に帰すことができる。
超広範囲攻撃魔法の開発に成功した瞬間だった。
もちろん単体攻撃に使用する事だってできる。
その場合は弾丸程度の大きさで良いだろう。
さしずめメルトダウンバレットだ。
その直撃を食らって生きていられるとしたら、マグマに生息する生物位のものだろう。そんなのいるか分からんが。
ひと通りの実験を終えたところで、森の奥をアイススフィアで飛行しながらオークを探索する。
――いた。
2体のオークが、巨大な体躯を揺らしながら、こちらに向かって歩いている。
30メートルの距離まで近づく。
「ブオオオオッ」
オーク共が俺に気づいて大声を上げた。
丸太のような大木を振り回して走り出した。
20メートルの距離。
アイススフィアで前後左右に飛行して撹乱しながら、狙い易いポジション取りをする。
「『ストーンバレット』」
アイススフィア越しに、先頭を走るオークの頭へ向けて撃ち放つ。
岩弾がシュルルルと音を立てて高速回転しながら飛んでいく。
ボゴッと音を立ててオークの頭部が吹き飛んだ。
司令塔を失った巨体がゴロゴロと地面を転がっていく。
先頭のオークが消えて、後ろを走るオークの姿を捉えた。
「『溶岩弾』」
オークの頭に向けて、小さめに作った赤熱する岩弾を撃ち放つ。
パァァンッと小気味の良い音がすると同時にオークが膝から崩れ落ちた。
頭に空いた穴から煙と湯気が立ち上る。
一撃で脳を焼き尽くし、即死させたようだ。
あれほど苦戦したオークを難なく仕留める事ができた。
もうオークは俺の敵ではない。
これでようやく、魔の森で魔物狩りを再開する事ができる。
仕留めたオークを収納して、街へと帰って行く。
この1週間で狩った獲物は、まだ何も売却していない。
あまりに大量の獲物を狩ったから、これを売りに出したら大騒ぎになりそうだ。
さて、どうするかな。
そんな事を考えながら屋敷に戻ると、ニーアが走り寄って抱きついてきた。
「ご主人様! ミアの行方の手がかりが……! 掴めたそうです!」
ヒルベルトに頼んでおいたミアの捜索が、進展を見せたのだった。
--------------------------------------------------
★【R18完全版】のご案内★
本作は「ノクターンノベルズ」にて、ここには書けない過激な描写(18禁シーン)を全て収録した
『R18完全版(オリジナル版)』
を連載中です。
カットされた「夜の営み」や「リューイチの容赦ない制裁」を楽しみたい方は、ぜひそちらをご覧ください。
激しいシーンを、遠慮なく細部に渡って克明に描写しております。
【探し方】
Web検索、またはノクターンノベルズのサイト内で
『 おっさん異世界物語 』
と検索してください。
(※作者名『眠れる森のおっさん』で検索しても見つかります)
--------------------------------------------------
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
世界最強の七賢者がお世話係の俺にだけはデレデレすぎる件
Y.
恋愛
国の頂点に君臨し、神にも等しい力を持つ『七賢者』。
火・水・風・土・光・闇・氷の属性を極めた彼女たちは、畏怖の対象として国民から崇められていた。
――だが、その「聖域」の扉を一枚隔てた先では、とんでもない光景が広がっていた。
「アルトぉ、この服脱がせてー。熱いから魔法で燃やしちゃった」
「……アルトが隣にいないと、私、一生布団から出ないから」
「いいじゃない、減るもんじゃないし。さあ、私と混ざり合いましょう?」
彼女たちの正体は、私生活が壊滅的にポンコツで、特定の一人に依存しきったデレデレな美少女たちだった!
魔法の才能ゼロの雑用係・アルトは、世界で唯一「彼女たちの暴走魔力に耐えられる」という理由で、24時間体制の身の回りのお世話をすることに。
着替え、食事の介助、添い寝(!?)まで……。
世界最強の7人に取り合われ、振り回され、いじり倒される。
胃袋と心根をガッチリ掴んだお世話係と、愛が重すぎる最強ヒロインたちによる、至福の異世界ハーレムラブコメ、開幕!
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる
仙道
ファンタジー
気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
12/23 HOT男性向け1位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる