おっさん異世界物語 ~物理魔法と「鉄の理」。愛欲と硝煙に塗(まみ)れた男が、やがて神を殺すに至る覇道戦記~

眠れる森のおっさん

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第1章 グリム編

第49話 馬車の入手と銀の証 ~ギルドマスターとの取引~

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 出発に向けて4人へ指示を飛ばしていく。

 ニーアとヘルガにはレイナを護衛につけて、旅路に必要な物資の調達だ。
 ついでにヘルガを誘拐した奴らから奪った持ち物を売却させる。
 それと3人に大量の料理を作らせて、異次元空間に収納しておく。
 こうしておけば旅先でも美味い飯が食えるからな。

 屋敷の家賃も3ヶ月分を先払いしておく。
 帰ってくるのが遅れるかも知れないからな。

 ジョンは俺と一緒に、魔の森で仕留めた獲物の売却だ。
 目の前で異次元空間から取り出す訳にはいかないから、魔の森から仕留めた獲物を運び込んだように見せかけるアリバイ工作をする。

 冒険者ギルドから借りた荷馬車をジョンに操縦させて魔の森まで行く。
 魔の森の入り口付近に、森から大物を何体も引きずってきたような跡を残しておく。
 良く見れば分かるチンケな工作だが、何もしないよりはマシだろう。

 異次元空間から適当に魔物を取り出して荷馬車に乗せる。

「すげー人だとは思ってたけど、ここまでとはな……」

 初めて異次元魔法を目の当たりにして驚愕している。
 もうジョンは俺の奴隷になったから本当の力を隠す必要はない。

 荷馬車に乗せた魔物に布を被せて覆い隠す。
 ジョンに荷馬車を操縦させて北門を通って屋敷へ運び込むフリをさせる。
 俺は魔の森で魔法の練習をしながら、ジョンが戻ってくるのを待つ。

 これを数往復した後、屋敷に戻って異次元空間から獲物を取り出して庭に並べる。
 ジョンに言って買取所のバランを呼びに行かせた。

「魔物がこんなに沢山……」
「どれも美味しそう~!」
「リ、リュウ様……すごいです」

 大物はワイルドボア3体、ビッグベア1体、オーク2体。
 その他には小物と大量の魔石。
 1週間の魔法の特訓で仕留めた獲物だ。

「レイナ。ゾンビも3体ほど仕留めたんだがな。
 ゾンビに噛まれるとゾンビ化するもんなのか?」

「そうですね。
 1日以内に教会でキュアをかけて貰わないとゾンビになってしまいます」

「やっぱりそうか。
 俺はキュアも出来るからな。噛まれたらすぐ言えよ」

「えっ、司祭様じゃないのにキュアをかけられるんですか……」

「でもね。子供はあっという間にゾンビになるんだって。ギルドで習ったよ」

「そういえば前にパーティ組んだ魔術師の人は、ゾンビに噛まれても数日は平気って言ってたかも」

 大人は1日、子供はすぐ、魔術師は数日か。
 魔力の多寡が、ゾンビ化の抵抗力に関係してると考えるのが自然だな。
 そうなると俺は魔術師より遥かに大きな魔力を持ってるから、噛まれてもゾンビになることはなさそうだな。

「ニーア。それならお前はゾンビに噛まれても数日は平気そうだな」

「……えっ? どうしてですか?」

「お前は魔術師並みの魔力を持っているぞ。
 自分で気づいてなかったのか?」

「そうなんですか……全く気づきませんでした」

「もしかすると俺が手伝ってやれば魔法を使えるようになるかもな」

「私が魔法を使えるように……」

 そんな話をしている内に買取所のバランが下働きを数人引き連れてやってきた。

「リューイチ! おめえって奴はホントにたまげた野郎だなあオイ!」

「まぁ運が良かっただけだ。
 ギルドに全部運んで査定して貰いたいんだが、まだ解体はしないでくれよ。
 ギルドマスターと話があるからな」

「おう。んじゃ概算の査定だけしておくか」

 何往復か行き来して獲物を全てギルドへ運び込んだ。
 俺もジョンと一緒にギルドへ行って概算の査定結果を聞く。

「それで査定結果はどうだった?」

「まだ査定に時間はかかるが、全部で金貨60枚くれえになりそうだ」

「なるほどな。
 ギルドマスターと話をしたい。呼んでくれるか?」

「ちょっと待ってろ」

 バランがギルドマスターのシスモンドを連れてやって来た。
 シスモンドの気難しそうな顔が、ギルドの庭に所狭しと並ぶ大物を見て気色満面に溢れる。

「これはリューイチさん!
 大物を一挙に仕留めるとは。前代未聞の快挙ですよ! はーっはっはっ」

「それなんだが、実はこの大物をギルドに卸そうか、他のツテを当たろうか迷っているんだ」

「なっ!……悪い冗談はやめてくださいよ。
 私とリューイチさんの仲じゃないですか」

「いや俺もギルドに卸したいのは山々なんだ。
 だが実は頭を抱えていることがあってなぁ」

「ほほう。それはどういった?」

「ニベールまで行くのに馬車を欲しいんだが、どうにもアテが無くってな」

「ふーむ……人が乗れる箱型の馬車で良いのですかな?」

「ああ、4~5人乗れれば充分だ。
 荷物は載せられなくても構わない」

「リューイチさんの頼みとあれば聞かない訳にはいきませんな。
 ……何なら冒険者ギルドが保有している馬車を融通することもやぶさかではありませんよ」

「おお、それは助かる。
 その馬車ってのを見せてくれないか?」

 シスモンドに案内されてギルドの厩に行くと、簡素だが頑丈そうな造りをした木製の箱型馬車があった。
 2頭立ての馬に、それを操縦する御者台。
 木製の大きな車輪が4つ。

 馬車の扉を開けて中に入ると、側面に備え付けられた椅子にそれぞれ3人ずつ、計6人が座れる十分なスペースがある。
 積荷を置けるスペースは限られているが、俺には異次元魔法があるから全く問題ない。
 天井もあるから雨が降っても直接濡れることはなさそうだ。

「ジョン。この馬車は操縦できそうか?」

「任せてくれ。俺もレイナも操縦できるぜ」

「この馬車でニベールまで行けそうか?」

「これなら十分だ。問題ないと思うぜ。
 ニベールには護衛で行ったこともあるし、道も分かってる」

「そうか」

 俺と奴隷だけが乗るこの馬車なら、魔法で馬を回復させてニベールへ急行することができそうだ。

「シスモンド、この馬車をいくらで譲ってくれるんだ?」

「これをもう一度調達しようとすれば、時間と労力、それに金貨20枚ほどかかるでしょうな。
 ……では、その金貨20枚ということでいかがでしょうかな?」

「それは有難い。
 いやあ、最初にあんたに相談して良かったよ。
 やはり持つべきものは友だな。
 もちろん、魔物は全てギルドに卸そう」

「それは良かった。
 持つべきものは友、言い得て妙ですなぁ。はっはっは。
 ……ところで、ニベールに行かれるとか。グリムには戻って来られるので?」

「ああ、そのうち戻ってくるつもりではいる」

「それは良かった。帰りをお待ちしておりますよ。
 ……ああ、そうだ。
 リューイチさんには私から銀プレートを発行させていただきましょう」

「銀プレート? それがあると何か良い事でもあるのか?」

「もちろんですとも。
 銀プレートともなれば、どの都市国家に行っても市民と同等の権利が保障されるのですからな。
 土地や建物を購入することも可能。
 揉め事になっても裁判を請求することが出来ますよ」

「なるほどな。
 良いことづくめのようだが、何かデメリットのようなものは無いのか?」

「毎年1月にグリム市へ金貨1枚の納税義務は生じますな。
 それと徴兵がかかることはありますが、それに応じるかは自由ですからデメリットにはならんでしょう」

「ほう。では金貨1枚は先に支払っておくとしよう。
 いやあ、シスモンドには色々と世話になるなぁ」

「なんのなんの。持つべきものは友ですからな。はっはっは」

 全ての魔物と魔石を売却した分と、馬車の代金と納税分を差し引きすると、金貨40枚と銅貨3枚が残った。

 譲り受けた馬車をジョンに操縦させて屋敷に帰る。

「ご主人様! 馬車を買えたんですか!?」

「冒険者ギルドマスターのシスモンドが融通を利かしてくれてな。
 これでニベールに向かえるな」

「これでニベールに……ミアの元へ……ううっ……ありがとうございます」

 馬の餌となる飼い葉に手入れ用具や掃除用具も必要になる。
 その辺りのことは農村の馬を世話していたヘルガに任せて買い出しを頼んでおく。

 その後も2日を旅の準備にあてて、ニベールへと出発したのは3日後のことだった。

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【探し方】
Web検索、またはノクターンノベルズのサイト内で
『 おっさん異世界物語 』
と検索してください。
(※作者名『眠れる森のおっさん』で検索しても見つかります)
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