おっさん異世界物語 ~物理魔法と「鉄の理」。愛欲と硝煙に塗(まみ)れた男が、やがて神を殺すに至る覇道戦記~

眠れる森のおっさん

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第2章 ニベール編

第55話 蹂躙する炎と貴族の娘 ~殺戮の果てに~

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 それじゃ、始めるとするか。

「『ファイアアロー』」

 瞬時に炎の矢を頭上に作り出して撃ち放った。
 ゴウッと音を立てて馬車に群がる盗賊へ飛んで行く。
 背中に直撃を受けた盗賊が爆風で吹き飛び、周囲の数人も巻き込まれて地面を転がった。
 爆発音が鳴り響く。

 盗賊どもが何事かと一斉に振り返って俺の方を見た。
 何人か女っぽい奴もいるな。

「もうちょい上かな」

 距離が離れているから着弾地点が狙った場所より頭ひとつ分下がってしまう。
 左右にはブレないから、あまり風は無いようだ。

 次々と頭上に炎の矢を作り出して撃ち放つ。
 馬車の周辺で爆発音が鳴り響く。
 着弾地点を見ながら誤差を修正していく。
 段々と狙いが定まって来た。

 炎の矢はロケットランチャーのように飛んで行く。
 100メートル先の目標に着弾するまで1秒もかからない。
 盗賊からすれば遠くで何か光ったと思ったら自分が爆発している感じだろう。

「ぐああっ!」
「ぎゃああ」
「誰かアイツをやれえ!」
「弓で狙えー!」

 何本か矢が飛んできた。

「『ウィンドシールド』」

 自分を中心に左巻きの暴風を作り出す。
 矢が暴風に弾かれて地面に落ちた。
 出発前にレイナの弓で矢を弾く風魔法を開発しておいたのだ。

 お返しに炎の矢を放つ。
 射手たちが炎に包まれて吹き飛んだ。

 盗賊が4人こっちに走って来る。
 そいつらに向けて炎の矢を連射する。
 一息で放たれた4本の矢が着弾し、4人は為す術もなく絶命した。

 引き続き馬車に群がる盗賊たちへ炎の矢を放っていると、すぐに立っている者は半分もいなくなった。

「バ、バケモンだあ!」
「逃げろー!」
「邪魔だ! どけえ!」
「ひいええ!」

 誰かが逃げろと言ったのを皮切りに、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
 俺は逃げる盗賊に向けて炎の矢を放って追い散らす。

 少しすると、あれだけ沢山いた盗賊が1人もいなくなった。

 馬車の方へと歩いて行く。
 そこかしこでうめき声がする。
 死に損なって苦しんでいる奴にアイスバレットを撃ち込んで息の根を止めてやる。

 馬車の前までやってきた。
 辺りを見回す。
 動くものはない。
 死体で溢れている。

 何十人殺したか分からない。
 沢山殺したな。大量殺戮だ。

 人間を殺すことにも慣れたもんだ。
 何の罪悪感も忌避感も湧かない。

 人間の死体にも随分と慣れた。
 胃もムカムカしなくなった。
 血と泥の混ざり合った異臭だけは未だにキツイがな。

 殺し合いの連続だ。
 魔物を殺し、動物を殺し、人間を殺す。
 もう1ヶ月半以上もこんなことばかり繰り返してる。

 人間的な感情が麻痺しちまったのか?
 いや、だとしたらむしろ人間的になったのかもな。
 なんせ人類の歴史はほとんどが殺し合いの歴史なんだからな。

 この異世界に来てから俺は変わっちまった。
 今さら全てを忘れて元の自分に戻ることなんて出来っこないし、戻る気もない。
 ここでは非情になれなきゃ殺される。
 俺は殺される側じゃない。
 俺は常に殺す側だ。
 絶対に生き抜いて家族の元へ帰るんだ。
 その為なら鬼にだって悪魔にだってなってやる。

 自ら築いた死の世界に囲まれながら、俺はそんな事を考えていた。

 ---

 さて、そろそろジョン達を呼ぶか。
 上空にファイアボールを放って合図をする。

「うっ……凄まじいですね」
「なんだこりゃー……」

 ジョンたちが馬車でやってきた。

「来たか、レイナは周囲を警戒しろ。
 逃げた盗賊どもが戻って来るかも知れんからな」

「はい、リュウ様」

「ジョンはヘルガと金目の物を剥ぎ取っておけ。
 盗賊の分は財布だけでいいぞ。
 生きてる奴がいたら止めを刺しておけよ」

「おう。分かったぜ」

 ジョンたちが剥ぎ取っている間に、俺は襲われてた馬車を覗く。

 すると馬車の中に生き残りが2人いた。
 若い女と年増女が床にへたり込んでいる。
 衣服は乱れているが、まだ乱暴まではされていなかったようだ。

 他には男の死体が2つ。
 1つの死体から魔力を感じるから、こいつがファイアボールを放った魔術師だな。

「ご、ご助力ありがとうございます」

「……別に助力した訳じゃない。
 たまたまだ。勘違いするな」

 若い女が礼を述べてきた。
 盗賊に殺されるか攫われるはずだった所を、うっかり助けちまったようだ。

「そ、そうなのですか?
 私の家人も護衛も死んでしまいました。
 どうかご助力頂けませんでしょうか」

 若い女が助けを求めてきた。

 俺にこいつを助ける義理などない。
 無言で馬車に入って男の死体を外に放り投げる。

「ジョン。これも身包み剥いでおけ」

「おう」

「なっ……」

 ジョンに持ち物の回収を指示する。
 年増女が俺の所作に驚愕の表情を浮かべている。

 馬車の中を物色していると南京錠のような鍵のかかった鉄製の箱がある。
 如何にもお宝が入ってそうだ。
 他にも精巧な蝋燭台に綺麗なローソク、それに銀製っぽい食器や小物。
 女物の服が入ったケースや食料品なんかもある。
 本も数冊ある。色々あるな。

「あの……もし?
 こ、高名な魔術師様とお見受けしました。
 どうか私共をお助け願えませんでしょうか」

 若い女が椅子に座り直して、また話しかけてきた。

 面倒臭えなぁ。
 時間も惜しいってのに。
 仕方ない。
 少しだけ話を聞いてやるか。

「……見返りは?」

「……し、失礼しました。
 助けて頂くお礼に、馬車にある物は全て差し上げます。
 ただ……これだけはお見逃し下さい」

 南京錠のかかった鉄箱を指差している。
 これにはやはり相当なお宝が入ってそうだ。

「……話にならんな。
 お前なんぞに言われなくても俺の物だ。
 その鉄箱もな」

「…………」

「なっ! この無礼者め!
 ミラ様に向かって何という口のききかたを!」

「イソベル、控えなさい」

「ですが、お嬢様……」

 イソベルと呼ばれた年増女が眉を吊り上げて俺を睨んでいる。

「俺が来なけりゃ死んでたし、積荷は盗賊が奪った。
 死人が無い物を見返りにするとはな。
 笑わせてくれるぜ」

「…………確かに。
 貴方様の仰ることはごもっともです。
 それでは、せめて私共をニベールまで連れて行っては下さらないでしょうか。
 相応の謝礼をお支払いしますので」

「ほう、謝礼か。例えばどんな?」

「貴方様の望みに応じて……私の命に見合うだけの物を」

「お嬢様いけません!」

「イソベル、貴女は黙っていなさい」

「命に見合う物だと?
 お前の命に一体どんな価値があるってんだ?」

「これは名乗りもせずに失礼をしました。
 私はニベールの貴族、ブルック・テイラー家の次女。
 ミラ・ブルック・テイラーと申します。
 貴方様のお名前を伺っても?」

「……リューイチだ」

「リューイチ様、必ず父のロマンから相応の謝礼を支払うとお約束します」

 益々面倒臭いことになってきた。
 俺は偶然にも貴族の娘が盗賊に襲われているところを助けてしまったらしい。


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本作の「マイルド版」の更新はここまでとなります。 
ここから先、主人公が突き進む「愛欲と硝煙」の真の物語は、規制のない本家(ノクターンノベルズ)にて解禁されています。
ぜひそちらをご覧ください。

【探し方】
Web検索、またはノクターンノベルズのサイト内で
『 おっさん異世界物語 』
と検索してください。
(※作者名『眠れる森のおっさん』で検索しても見つかります)
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