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第2章 ニベール編
第54話 街道を塞ぐ盗賊団 ~冷徹なる静観~
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――出発から2日目。
今日も天候に恵まれている。
朝飯を済ませて、馬車を走らせ始めた所だ。
この辺りまで来ると、グリム市の近辺とは違って人家も農場もない。
草原に街道を1本だけ通したって感じだ。
脇道を行った先には各所に集落が点在しているそうだが、街道からは見えない。
「旦那。こっから先は盗賊が多いぜ」
「何かあったらすぐ呼びますね」
「ああ、警戒をしっかり頼むぞ」
街から遠い地は草原が広がっていて至る所に森がある。
そこに盗賊とかの無法者が住み着くって訳だな。
これは他の都市でも同じのようだ。
今日もジョンが御者をやっている。
基本的にジョンが御者をやって、弓を持つレイナが周囲を警戒することにした。
いつ弓矢が飛んでくるか分からないから、客車の側面の窓は閉めている。
その代わり御者台側の窓は開けっ放しだ。
『エア』で作り出した空気を『ウォーム』で暖めているから、窓を開けていても寒くないし、風も吹き込まない。
馬車は『フライ』で浮かせているから振動もない。
馬車を走らせていると、前方からグリム方面へ向かう馬車が見えてきた。
馬車の周りを何人かが歩いている。
御者台のレイナに声を掛ける。
「向こうから馬車が走って来るが、問題ないか?」
「あれは行商人の馬車だと思います。
周りを歩いてるのは多分冒険者の護衛ですね」
「そうか。だが油断はするなよ」
「はい」
対向の馬車が近づいてきた。
馬車の左右と後ろに合計3人、冒険者風の男女が護衛している様子がチラッと見える。
対向車とは特に何事もなくすれ違った。
「さっきの馬車は随分と速度が遅かったな」
「ご主人様、あんなものですよ。
歩きの護衛の速度に合わせているんです」
ニーアに聞くと、速くても人間が小走りする程度の速度しか出せないようだ。
それ以上速いと今度は馬が疲れてしまって、長時間は速く走れない。
だから結局は護衛の歩く速度に合わせて進むのが一番効率的なのだそうだ。
馬車の移動ってのは、思ったよりもずっと時間がかかる。
今日も街道を徒歩で移動している者はいない。
他の馬車は結局その1台しか見かけることは無かった。
狼や盗賊に襲われる事もなく、適当な場所で野営をして2日目を終えた。
---
――出発から3日目。
午後、街道を走っていると馬車が急停止した。
レイナに呼ばれて御者台に上がる。
「あそこです。
馬車が盗賊に襲われてます」
緩い下り坂を降り切った先、
遠くの方で1台の馬車が大勢の盗賊に包囲されている。
包囲網の内側で馬車の護衛と盗賊が戦っているようだ。
馬車を守る護衛は少なくない。
数人ではないな……10人以上いる。
だが、それ以上に盗賊が多い。
多過ぎる。
正確な人数は分からないが数十人はいそうだ。
「盗賊ってのは、あんなに数が多いものなのか?」
「いえ、おかしいですね……。
いくつかの盗賊集団が一緒になって襲ってるんじゃないですか?」
「だろーな。
ありゃ盗賊の奴らが手ぇ組んでるぜ」
「これ以上近づくのは危険です。
……どうしますか?」
街道沿いは腰の高さまで草が生い茂っている。
迂回するってのは難しそうだ。
見た感じは盗賊に包囲されている馬車が圧倒的に不利だ。
仮に盗賊どもが勝利したとして、「襲撃が終わったから後ろの馬車はどうぞ通って下さい」とはならんだろう。
当然、俺たちも襲われる羽目になる。
どうせやるなら先手を打った方がいいな。
よし、やるか。
「面倒だが盗賊どもを蹴散らすか。
俺が行ってくるから、お前たちはここで馬車を守っていろ」
「えっ、リ、リュウ様だけですか?」
「あの大人数だぜ?
流石の旦那でも無理なんじゃねーか?」
「まぁ何とかなるだろう。
あの程度の敵なら1人で問題ない」
「旦那がそう言うならいいけどよ……」
「リュウ様、危なくなったら助けに行ってもいいですか?」
「そうだな。その時は頼もうか」
2人にはニーアたちを護衛させておく。
大人数を相手するなら俺1人の方が気兼ねなく魔法を使えるしな。
ヘルガから聞いて異世界の魔法事情が大体理解できた。
上級魔法と同等か、それより少し強い魔法なら見せても構わないと今では思っている。
大火球を放つフレイムボールという魔法を5発撃てる位で、熟練の上級魔術師だそうだ。
それなら俺がファイアアローや氷魔法をぽんぽん連発する位なら、稀代の天才魔術師とかそんな程度の評価で済むだろう。
ファイアブレスとか竜巻なんかはちょっとやり過ぎな気がする。
下手すると魔物認定されるかも。
「終わったらファイアボールを空に放って合図する。
それを見たら馬車で来い」
「はい」「分かったぜ」
1人で街道を歩いて行く。
襲撃地点から100メートル位の距離まで近づくと、流石に騒がしくなってきた。
方々で怒号が飛び交っている。
100メートル離れた街道にぽつんと立って観戦する俺を、特に誰も気にする様子はない。
既に何人か馬車の護衛がやられている。
段々と盗賊の包囲も狭まって来ているようだ。
もう護衛が全滅するのも時間の問題だな。
馬車の連中が全員やられた頃を見計らって仕掛けるか。
盗賊を蹴散らしたら馬車の積荷は全部まとめて俺がいただこう。
おっ!
馬車の窓から火の玉が飛んでいった。
ファイアボール撃った奴がいるぞ。
何だか小学生のドッチボールみたいな感じだったな。
あんなんでも当たれば効くんだろうか。
まぁどっちにしても、あんな魔法じゃ焼石に水だけどな。
人数差があり過ぎる。
確かファイアボールを使えるのは中級魔術師なんだよな。
中級魔術師は貴重だ。
何せ1000人に1人だからな。
死体を回収しておきたい所だ。
その後も馬車側の防衛が1人、また1人と倒れていく。
ついに馬車のドアが開かれて盗賊が雪崩れ込んで行った。
馬車の連中は全員やられたようだ。
やっと勝敗がついたな。
思ったより護衛が粘った。
それじゃ、始めるとするか。
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「向こうから馬車が走って来るが、問題ないか?」
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「はい」
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それ以上速いと今度は馬が疲れてしまって、長時間は速く走れない。
だから結局は護衛の歩く速度に合わせて進むのが一番効率的なのだそうだ。
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今日も街道を徒歩で移動している者はいない。
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午後、街道を走っていると馬車が急停止した。
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「あそこです。
馬車が盗賊に襲われてます」
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遠くの方で1台の馬車が大勢の盗賊に包囲されている。
包囲網の内側で馬車の護衛と盗賊が戦っているようだ。
馬車を守る護衛は少なくない。
数人ではないな……10人以上いる。
だが、それ以上に盗賊が多い。
多過ぎる。
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「盗賊ってのは、あんなに数が多いものなのか?」
「いえ、おかしいですね……。
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