カーマン・ライン

マン太

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第2章 流転

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『アレク様、そろそろお時間です』

 モニター越しのユラナスの声に、背を預けていた椅子から身体を起こす。

「分かった」

 答えてモニターを切ると、眼前に広がる宇宙に目を向けた。大きく取られた窓からは周囲を航行する艦隊と共に星々が輝く。
 これから連合軍に対する新たな攻撃に向けての作戦会議が開かれるのだ。
 二年の間にアレクの率いる部隊は働きを皇帝エドガーに認められ、正式に帝国軍へ迎えられた。
 アレクの階級も大尉から中佐、そして今回、大佐へと昇進する。
 元々持っていた自軍の他に、連隊も任され、指揮する部隊が数千人と増し艦隊も応じて増した。
 その部隊を率いて、今回同盟のもつ施設への攻撃を加える。
 これは極秘で進められていたことだった。内部にさえ知るものは少ない。それはアレク自身の提案で決まったものだった。
 辺境地域にある同盟の施設を叩く。
 そこは密かに帝国へ攻撃を加えようとしていた同盟の補給基地でもあった。
 その情報を得て、先に叩き同盟の動きを遅らせるのが目的。

 そしてもう一つ。

 ここには、同盟の第十七艦隊が滞在場所としているのだ。彼らはここで補給を得て、各戦場へと向かっている。

 ソルが出てこられない以上、こちらが迎えに行くしかない。

 補給基地を叩く事を決めた際、幾つか上がった候補地にこの場所があった。迷わず一番先に当たる場所に定める。

 二年は…長かった。

 既に艦内でのソルの状況は把握済みだった。ソルがどこに配属され、どんな用務についているかも。
 実際、半月ほど前、第十七艦隊の旗艦ブランカが寄港した港へ、下調べと称して自ら忍んで行ったこともある。
 ひとときの休暇を得て、ソルが下船した際、その姿を遠目で確認した。
 こちらには気づいていない。
 以前より大人びたソルに目を細める思いだった。
 赤毛で癖のある髪も鳶色の瞳も変わらないのに、その眼差しが大人びている。

 あの時も、こどもの目だとは思わなかったが──。

 初めて見た時、ずいぶんと落ち着いていると思った。静かで湖面のような瞳。覗き込むと吸い込まれそうで。
 あの瞳をまた、間近で覗き込みたかった。
 しかし、その時は連れ出すことはできず。
 自身に時間がなかったのもあるが、ソルもなかなか一人になることがなく。無理やり拉致しては大事に成りかねない。
 その時は諦めたが、今回はそうはいかない。諦めるつもりはなかった。
 ユラナスも薄々は勘づいているが、何も口にはしない。
 ユラナスはソルに気を向ける自分に否定的なのは理解している。しかし、これはアレク自身の問題であり、誰にも口出しさせるつもりはなかった。

 彼は私に必要な存在なのだ。

 彼と過ごした時間は、自分にとって貴重なもので。
 何を自分が必要としていたのか、彼と過ごした事ではっきりとした。
 十九才の自分が出会ったのは、ただの十五才の子どもではなく、自分の将来を左右する存在だったのだ。

 かならず、この手に取り戻す。

 アレクは、そこにソルの温もりを感じ取りながら、そっと手を握り締めた。

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