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第4章 別離
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しおりを挟む「ソル! 敵は?」
「上方、二時! データ送ります!」
アレクの声に答えながら、データを送り直ぐに敵機へと飛ぶ。
どれほどの時間、戦ったのか。
アレクと二人、例えるなら雨の様に降り注ぐ敵機を撃ち落としてきた。
ほとんどの機体は戦闘不能となり、アレク達の前から消えて行く。
+++
ブラシノス連合軍とエテルノ帝国軍が本格的にぶつかったのは数時間前。
連合軍の本拠地を突く為の攻撃だった。
ブラシノス連合は小惑星が周回するその向こうに前線を張っている。連合が本部を置いている惑星ベルデが背後に控えていた。
そこへの攻撃が決まったのは、さらに数時間前に逆上る。攻撃の実行は、既に上層部では決定していた。
補給基地の殆どは、アレクを主とする部隊によって破壊または占拠され、その機能を失っている。それを待っての攻撃だった。
大佐であるアレクにその旨が伝えられるが、既に情報は漏れ伝わっており、アレク配下の部下達は皆情報を共有している。
「攻撃の情報など、既に敵にも知られている。後は力と力のぶつかり合いだ。ソル、準備は出来ているか?」
執務室での上官との打ち合わせが終わり通信を切った後、アレクはこちらに視線を向けてそう口にした。
アレクからの指示を受けたユラナスがそれを別室に集めてある士官らへ伝えに行く。
出ていく際、ユラナスは一度もこちらを見ようとはしなかった。
結局、アレクの私室へ入り浸ることが多い自分にユラナスの態度は硬化したままで。
それも仕方のないことだろう。しかし、それを分かっても、アレクの傍を離れたくはなかった。
「できてる…。アレクも出るのか?」
自分が出撃するという事は、そういう事なのだ。しかし、再度確かめる。
ユラナスの態度からも良く思っていないのは確かだった。
「エースのお前が出なくてどうする? 今回ばかりは余裕をかましてはいられないぞ」
「そうじゃない。俺じゃなく、アレクはもう出なくてもいいんじゃないのか? 指示を飛ばす側だ。もし、何かあったら…」
幾ら特殊な能力を持つ自分と組んでいるからと言って、上官自らが戦場に向かうなど、本来ありえない。
「ユラナスの様な事を言うな?」
アレクは笑むと、座るアレクの横に立ったソルの手を取る。指先をもて遊ぶ様に絡めながら。
「君と組めるのは私だけ。出ないわけには行かないだろう。戦力が半減する…」
「けど…」
「君が守ってくれるのだろう? だから何も心配してはいない。それに──」
ソルの腰に腕を回し、自分の元へ引き寄せると。
「どんな時もソルと共にいたい。私の願いだ」
「わかった…」
懇願するアレクに対してそれ以上何も言えない。
その後ラスターは順調に回復し、体調も万全に整っていた。
あれ以来、以前のような鋭い視線をソルに向けてはこない。憎まれ口は叩いてもそれだけだった。
「アレクの足手まといにならないようにな?」
搭乗前、ソルの傍らを通り過ぎたラスターがそう口にした。
「分かってる…。ラスターも気をつけて。無事を祈ってる」
するとその口元に苦笑が浮かび。
「勿論」
そのままザインの乗り込んだ機体へと搭乗した。アルバはすでにリーノと共に搭乗済みだった。
「ソル。全て出し切れ」
「はい」
アレクの声にソルは宇宙の深淵を見つめる。
行く先には無数の光が、待ち構えていた。
+++
連合軍との大規模な衝突は実に数十年ぶりだった。
これが成功すれば、連合の力を削ぐことができる。弱体化すれば帝国の思い通りに事を進めることが出来た。それは帝国が宇宙を統べる事を意味する。
今はそれでいい──。
アレクはそう思っていた。
帝国が力を持てば持つほど、壊し甲斐があると言うもの。
今は力を得ることが先決だった。頂点へ立つための力。そうでなければ、ここまで来た意味がない。
すべてを手に入れるため──。
アレクはソルとともに宇宙に飛び立った。
+++
そして、今に戻る。
今の所、帝国の圧勝だった。
せめぎあいはあったものの、やはり兵力の違いが響き。なにより、宇宙空域では帝国が圧倒していた。
その要因はソル達の存在だったことは言うまでもない。
たった数機で、そう思うだろう。
だが、その数機で戦艦の動きを止め、または撃沈し攻撃力を奪う。
邪魔をする戦闘機は次々と撃墜され、気が付けば味方が誰もいなくなる──と言う状態だった。
的確に敵艦のディフレクターシールドを破壊し、その回復するまでのほんの数分の間に、戦艦を動かすエンジン部分を破壊する。
艦隊が次々と宇宙の闇に消え去って行った。
それでも、ソルはもう動揺を示さない。アレクの声だけを耳に残した。
「ザイン、ここは任せる」
アレクの指示にザインが応答する。
『了解』
途端にザインとラスターの乗る機体がまるで彗星の如く敵艦へ突っ込んでいく。
そして見事、エンジンを攻撃し艦を航行不能に陥らせた。
もちろん、艦の奥深くにあるそこを破壊するのは相当難しく、操縦技術も必要だった。
だが、設計上の弱点を探り出していたソルたちは、そこだけを攻撃しミサイルを撃ち込む。
それで艦は動力の大半を失い、機能を停止し、または爆発を誘発した。
それは繊細な探知機でもなければ出来ない芸当だ。ソル達の能力があってこその攻撃。
連合はたった数機の戦闘機が現れるたび堕ちていく艦を、なすすべもなく見守る事しかできなかった。
雨あられの様に戦闘機をけしかけても、それをことごとく撃ち落とし攻撃を避け、目標地点に到達してしまうのだ。
既に帝国軍は惑星ベルデへと降り立ち、地上戦へと移っている。
想像以上に早く連合の本部は陥落しそうだった。抵抗もあと僅かだろう。
『これで、終わりか──』
アレクが感慨深げな声を漏らす。
二人の周囲に敵機の姿は見当たらなかった。
『ソル、帰還するぞ』
「はい──」
そう応答した矢先、突然、強い意志と殺意を感じた。
唐突な登場を許したのは、戦闘の終了に一瞬の気のゆるみがあった所為かもしれない。
誰だ?!
一筋の閃光が視界に迫る。それはアレクの搭乗する前方に向かっていた。
一瞬、ケイパーの顔が浮かぶ。
まさか──。
アレク!
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