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第三章 再会
第十四話 フォンセの力
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隣の部屋へ抱き抱えられたまま向かうと、早速ヴェントが駆け寄ってきた。
「ソアレ! 大丈夫か?」
頬に手を添え顔を覗き込んで来る。アステールはその背後にいた。その表情がどこか打ち沈んで見えるのは気のせいか。
フォンセはアステールが開けたベッドへとソアレを降ろしてくれた。
「もう、大丈夫だ。──フォンセが救ってくれた」
「僕は少し、力を貸しただけだよ」
フォンセは笑んでそう言うと、ヴェントにその場を譲る。
「ちゃんと、息している…。さっきまで呼吸もしてなかったってのに…」
ヴェントは信じられないと言った表情だ。
「今は呼吸もしているし、生きてる…。心配かけてすまなかった」
言いながらちらと視線をアステールに向ける。先ほどから何も言わず、ただじっとソアレを見つめていた。
アステール──。
ヴェントはソアレの手を取ると。
「…良かった。一時はどうなるかと。お前のお陰でカルドもアステールも回復した。事にカルドは──死にかけてた…。ありがとう。ソアレ…」
俯くヴェントにソアレは笑うと。
「俺が勝手にやったことだし。回復するかは分からなかった。あんな力を使ったのは初めてだったから…。父親に聞いておいて良かった」
「ソアレ! ありがとう…。俺、これからはソアレの為に生きる。ソアレに救われた命だから…」
カルドが傍らのベッドから、泣きそうになりながらそう口にする。
「いいって。大げさだな? お前はやりたいこともあるんだろ? 俺の為なんかじゃなくて、自分の為に生きろ。その方が俺も嬉しい」
「ソアレ…」
カルドは拳を握るとぐっと唇を噛みしめた。そんなカルドの頭に、ヴェントは軽く叩く様にして手を置くと。
「何はともあれ、救われた命だ。大事にしろって事だ。アステールもな?」
それまで黙っていたアステールは僅かに俯き視線を落とすと。
「…そうだな。あのままであれば、私は剣も使えなくなっていただろう。そうなれば、ソアレの側にいる資格もなかった──。ここにこうしていられるのも、ソアレのお陰だ。ありがとう、ソアレ…」
アステールはそう言って笑みを浮かべたが、どこか悲しい色が見える。
「とりあえず、ソアレはこのまま私の屋敷に先に連れて行くよ。まだ万全とは言えないから、元通りになるよう整えなければならない…。皆は後から来てくれ。警護に私の部下をつけよう」
フォンセは一段落したのを見て、そう声をかけてきた。
「それは助かります。しかし、フォンセ様。いったいどうやってソアレを蘇生させたのですか?」
ヴェントの問いにフォンセは少し首をかしげて見せ。
「…詳しくは語れないけれど、私もソアレと似た力を持っているんだよ。私の母の家系らしいのだけど、詳しいことは…。幼いころ母を亡くしたから、覚えていなくてね」
柔らかい物腰でそう答えると、ソアレの頬に触れ。
「やはり…まだ、身体に馴染んでいないようだ…。直ぐに出発の準備するから、暫くここで休んでいてくれ」
そう言うとフォンセはさっと踵を返し、部屋を出ていった。
フォンセが出て行ったあと、ヴェントはグランツにもこの事態を報告してくると、すっかり歩くこともできるようになったカルドと共に部屋を出て行く。ヴェントが気を使ったのが分かった。
二人きりになって、ソアレは漸くアステールと相対する。どう声をかけようか躊躇った後、思いきって口を開いた。
「…アステ。心配かけてすまなかった。俺、お前には生きて欲しくて…。だから──」
「ソアレ」
遮る様にアステールが口を開く。
そのままベッドサイドへ腰かけ、ソアレの頬に触れた。まだ少し冷たいアステールの指先が、体調が万全でないことを知らせてくる。
「ソアレ…。俺は──お前のいない世界では生きられない…」
「…アステ?」
「お前は俺を生かして満足だっただろうが、それくらいなら、共に死んだ方がましだ…。今後、もし同じ様なことが起こったとしても、自分を犠牲にしてまで俺を生かそうとするな。──俺の為にも…」
「……でも」
と、不意にアステールが肩を抱き、腕の中にソアレを閉じ込めた。アステールの温もりが直に伝わって、胸が高鳴る。
「…頼む」
絞りだされた声は泣き出しそうにも聞こえ。そんな声を聞いてしまえば、否とは答えられない。
でも、俺はそれでもアステールに生きて欲しいと思う。生きて幸せになって欲しいと願う。
けれど、今はそれを口にはしなかった。
「…分かった。アステ」
僅かに顔を上げ、アステールを見上げると、同じく見下ろす視線とぶつかった。
悲しみと熱が入り混じった、なんとも言えない目をしている。
「アステ。──好きだ…」
思わず言葉が溢れた。
そう、言わずにはいられなかった。二度と後悔しないために。
今、伝えておかなければ──。俺はあの時、そう誓ったのだから。
アステールの瞳が見開かれる。
冴えた月の光の様な色を湛えた、アイスグレーの瞳。この瞳をもう一度見たかったのだ。
本当は、死にたい訳ではなかった。アステールとともに、この先も生きたかった。
でも、どちらか一つしか望めないのだとしたら。
俺はまた、迷わずアステールを生かすことを選択するだろう。
それが、どんなにアステールを悲しみ突き落とすと分かっていても。その先にはきっと光があると信じているから。
「ソアレ──」
アステールの指先が頬を滑り頭に回ると、そのまま逃がさない様に抱えられキスが落とされた。
今までにない、激しいキスにソアレは思考を絡めとられる。
「ん──っ…」
アステール…。
いつの間にか、アステールの背に腕を回し自ら抱きついていた。アステールが求めるように、自分も求めていることに気づく。
「は…っ──ぁ…」
「…ソアレ、好きだ──」
漸く唇が離れ、息を次ぐと額を合わせるようにして、そうアステールが口にする。
「ん…。好き──俺も──」
合わせるように言葉が流れ出る。
もう一度、唇を重ねあって、互いの熱を確かめて。漸く一息ついた。
「…離れがたいな」
アステ―ルの腕が強くソアレの腰を引き寄せる。
胸元に頬を寄せると、アステールの鼓動が速くなっているのが分かった。それはソアレも同じで。
「直ぐに会える…。先に行って待ってるから…」
額にキスが落とされアステールが微かに笑んだ気配。
「そうだな。直ぐに会える。──そういえば、いったい、フォンセ様に何をされた? お前のその状態から、大体の想像はつくが…」
軽く前を止めただけの着衣からは、何が行われたのか大体の想像はつくのだろう。
「なっ、これはただ、脱がされただけでっ…。気が付いたら裸だったんだ。それで──この方が力が馴染むって…」
「フォンセ様の力は──お前と同じなのか?」
アステールが顔を起こして見下ろしてくる。ソアレは言われた事を思い出しながら。
「…いや、質が違うって言ってた。俺の力は自分自身の身を削るけど、フォンセの力は相手の力を生かしながら同化して増幅させるって…。回復というより、精神を蘇らせるのに特化しているって、言ってたな…」
「聞いたこともないな…」
確かにただの魔法とは違う気がした。普通は自身の持っている力を使う。だから、それなりの器がなければ、大きな魔法も使えない。
それを相手の力と同化し増幅させるなど、聞いたこともなかった。それだけ、特異な家系だったということか。
そうこうしていれば、部屋のドアをノックするものがいた。
「そろそろ出発したいのだけれど。──お邪魔かな?」
扉の向こうに柔らかいフォンセの声が聞こえる。ソアレは慌てて居住まいを正すと。
「いいえ…。どうぞ」
フォンセが入室してくると云うのに、アステールはソアレから離れようとはしない。
そのままベッドサイドに腰かけている。腕を離す気配もなくその距離は近かった。
アステ?
知らずに部屋に入って来たフォンセは、それを見るなり、ああ、と嘆息し。
「…アステールにはお邪魔だったようだ。すまないね? これから暫くはソアレを私に任せてもらえるかな?」
「私たちが屋敷に着くまでの間、よろしくお願いいたします…」
アステールの視線が険しいものになる。
警戒と敵意。
それはやはり、フォンセの行った行為の所為だろうか。
「ソアレを盗られると思っているのかな? ──まあ、君はしがない側付だ。私の命令一つでソアレの傍から外すこともできる…」
「フォンセ?」
ソアレが非難の声を上げると、肩をすくめて見せ。
「…冗談だよ。君が悲しむ顔は見たくない。けれど──ソアレ。君の気持ちが変わったならいつでも言ってくれ。すぐにこの男を傍から外そう」
「そんなこと、思わない。フォンセ、一体どうしてそんなこと──」
困惑して見返せば、
「ちょっとふざけただけさ。さあ、行こうソアレ」
言うとベッドからソアレを抱き上げようと腕を伸ばしたが、その手を横からアステールが止めた。
「ソアレの側付は私です。車まで運びます」
「そう──。じゃあ、お願いするよ」
一瞬、鋭い視線を投げかけたが、それもすぐ収め、フォンセは踵を返すと部屋の出口に向かった。その背を見送りながら。
「アステ、どうしたんだ?」
「…別に。売られた喧嘩を買ったまでだ」
「?」
「さあ、行こう。──ソアレ」
アステールの腕がしっかりとソアレを抱え上げる。
「うん…」
しばらく会えなくなるのだと思うと、この温もりが貴重なものに思え。ソアレはそっと頭をアステールの胸元に寄せた。
+++
何が気に食わないと言うのでもない。
ただ、フォンセの何かが以前と違って、引っかかる気がした。
昔と同様、物腰の柔らかいのは変わらない。
ただ、そのソアレに対する態度に今までにないものを感じていた。
執着、とでも言うのだろうか?
視線、言葉、行動。何もかも、ソアレに向けられるすべてが絡みつくように感じられた。
それに、あの力。実際に目にした訳ではないが、異様ではある。
ソアレが危機にあったのをどうやって知ったのか。それも不思議だった。
そこはソアレと同質の力を持っていると言うことなのか。
調べる必要があるかもしれない──。
アステールは腕に収まるソアレを見下ろし、そう思った。
ソアレの敵ではないだろうが、完全に自分たちの味方とも思えなくなっていた。
そんな男にソアレを託すのは不安ではある。このまま自分もついて行きたい所ではあったが、それをフォンセは許さないだろう。
何か、嫌な予感がする──。
「ソアレ。何かあれば直ぐに連絡を入れろ? ──いや、何もなくとも毎日だ。端末は離さず持っていろ」
「分かった。って、アステールそんなに心配しなくても──」
「ソアレ。身近にいる者でさえ、裏切る世の中だ。それを過去の記憶だけで以前と変わらないと思うな。──用心するに越したことはない」
アステールの真剣な眼差しにソアレは根負けしたのか。
「分かった…。端末も離さないし、ちゃんと毎日連絡もする。──ってか、本当はこのままお前についてきて欲しいけれど…。それは無理そうだもんな?」
「直ぐに迎えに行く」
「迎えって。──でも、待ってる」
人目があるため、キスはしてこなかったが、代わりに額を胸元にすり寄せ甘えてくる。
好きだと口にして、遠慮がなくなったのだろう。それを素直に愛しいと思う。
「…ああ」
目を閉じて、その温もりを感じた。
+++
フォンセの住む城は広大な敷地の中にあった。
周囲を深い森に囲まれ、その木々は敷地の至る所に入り込んでいる。母屋となる邸宅の外に、幾つかその森の中にも屋敷が点在している様だった。
深い霧に包まれ、木々の合間に一際大きな石造りの城がぼんやりと浮かぶ。
五年前、来た時となんらかわりなく、そこにあった。記憶のままだ。
母が生まれ過ごした場所。そしていまは叔父のフォンセが住まう。
「ここは相変わらず寒い場所だろう? 一人でいると、憂鬱にもなるんだよ」
フォンセは先に車から降りると、手を差し出し、エスコートする様にソアレを導く。
車が到着したのは母屋の前。中央に噴水が置かれた広場の向こうに大きな扉が控えていた。
今はそこに執事らが立ち、出迎えている。
「ソアレ、君の部屋は温室だよ。そこの方がよく眠れるはずだ」
「温室?」
人が眠れるような場所なのだろうかと不思議に思えば。
「姉が好んで過ごしていた場所だよ。前にも一度来たことがあるはずだ。──覚えていないかい? 姉の好きな薄紫の花が咲いていた…」
そこで過去の記憶が思い起こされる。
確かに、五年前。フォンセに案内されて見せられた気がする。薄紫の花が所狭しと咲き乱れていて──。
「あそこを改装して、人が過ごせる場所にしたんだ。──きっと気に入る…」
フォンセはソアレの手を取ったまま、母屋の広い廊下を通り過ぎ、一旦外へ出ると、点々と続く石畳を越え、庭の一角に案内した。
そこは離れの様を呈していて、居住部分もガラス張りの温室となっている。
それも小さなものでなく、二階まで届くほどの高い天井が全てガラス張りになっている巨大なものだった。
しかも室内も室外も、壁際は全て植物で覆われていて、容易に中を覗くことは出来ない。
中に案内されると、日差しの弱い地方であるのに、ここは暖かな光に満ちていた。確かに気に入る。
「──あれは…」
ソアレは視線の先に薄紫の花の蕾を見つけた。それは鉢の中で生き生きと緑の葉を伸ばしている。
「そう。まだ咲き乱れるのはこれからだけどね。姉の好きだったアイテ―ルの花…。君も好きだと言ったね?」
「ん。…俺も好きだ」
写真で見る母の印象と重なるそれは、生前の彼女を見るようだった。と、フォンセがその傍らに立ち。
「この奥に部屋がある。そこを使うといい。──私以外に今まで使わせたことはないんだが、君は特別だ…」
フォンセが白い指先を伸ばし頬に触れてくる。
「──それにまだ、続きをしないとね…」
「続き?」
「君の身体に私の魔力が馴染んでいないんだよ。気を付けないとまた、君の魂が離れてしまう…。──いいかな?」
「って、その、それって…」
瞬時に顔が熱くなる。
馴染ませると言うことは──。
裸で抱き合ったあの行為を思い出す。
すると、フォンセは笑んでソアレの耳元へ唇を寄せて。
「ここへは誰も来ない。──大丈夫だよ。これは治療の一環だからね」
「……っ」
やはり、同じことをするのだ。
幾ら叔父とは言え、裸で抱き合うのは流石に恥ずかしい。
「何もしない。ただ、私の力を君へ馴染ませるだけ…。──おいで」
ソアレの思いを察して、フォンセはそう口にした。
手を引かれ奥へと連れていかれる。
ガラス張りの入り口を抜けると、天井の高い居室があった。部屋の中央には真っ白なシーツの広がるベッドがあり、その傍らに小さな円卓が置かれ椅子が二脚あった。
ガラスの窓際には、白いクッションの置かれたソファがあったが、それだけだ。あとは緑とガラス張りの壁から差し込む日の光のみ。
それでも奥にはキッチンと、シャワールームもあるようだった。
「そこへ座って。先にお茶を飲もう」
フォンセはソファへとソアレを導くと、自分はお茶を淹れる為、キッチンへと立った。
「って、俺、でも──」
「いいから。君の大切な臣下達はまだ到着に時間がかかる。──あと、三日はかかるだろう。それまでは私の傍にいて欲しい。これは、治療の為だけじゃない…」
ソアレが乗せられた車は、通常より早く走らせることができるらしい。ほとんど地表を滑るようにしてここまで来た。
お茶を淹れる手を止め、フォンセはソアレを見つめてくる。その目は懇願する様でもあり。
母、エストレアを好いていたというのは本当なのだろう。その眼差しに頷かないわけにはいかなくなった。
けれど──。
「分かった…。ここにいる。──けど、ここに留まるのは治療の為だけだ。俺は──、母の代わりにはなれない…」
今だけなら傍にいてもいい。けれど、アステールが到着すればそこで終わりだ。
俺はアステールが好きだ。
その彼を裏切る様な行為はしたくない。
するとフォンセは察したのか、少し寂しげに笑んで。
「いいよ…。君には大切な人がいるって分かっているからね。──それに、君の事はエストレア姉様の代わりだとは思っていない…。一緒にいるのは彼らが来るまでの間でいい。君がそう望むなら…」
フォンセはそう言うと、手元の茶器に目を落とす。茶葉が透明な茶器を通してお湯に揺れるのが目に入った。ハーブなのかいい香りが漂う。
「これを飲むと、疲れも取れるし落ち着くはずだ。──どうぞ」
「ありがとう…」
確かにほっと落ち着く香りがした。すっかり飲み干す頃には、緊張もだいぶほぐれていた。どこかフワフワとした心地がする。
すると、ソアレの傍らに座ったフォンセが頬に手を触れさせ、その手をそのまま首筋へと滑らせてきた。
「…フォンセ?」
「大丈夫。馴染ませるだけ──だから…」
そのままソアレの肩を一方の手でつかんで押し倒す。柔らかいクッションが背に当たった。
フォンセは紫の瞳で見下ろしてくる。幾分熱を含んでいるように見えるのは気のせいか。
頭が──ぼんやりする…。
「ねえ、ソアレ──。君はもう、ここから出ない方がいい…」
「どう、して?」
フォンセの手がソアレの来ているシャツのボタンを一つ一つ外していく。
「君がここを出ていけば、必ず争いが起こる。そうすれば──君は大切なものを、今度は確実に失くす。それは──君も分かっているはずだよ?」
「…それ、は──」
「分かっているでしょ? 今回はモンスターだけだったけれど、次はテネーブルが力に物を言わせて襲い掛かってくる──。彼はモンスターも扱うって知っているよね? 今回のモンスターと同レベルのものがどれだけいるか…。それに対して君たちの戦力はどれほどあるのかな? 私の持つ戦力を足しても、残念だけど勝つのは難しい…。王都奪還など上手くいくかどうか。──例えそれが叶ったとしても、君の後ろにはきっと誰もいない…」
あ──。
「なんで…それを──」
それはソアレがずっと思っていたことだった。自分が動くことで確実に誰かは命を落とす。
それが、怖くて──。
「今回は大切なお友達のカルドも、愛するアステールも救えたけれど、次はこんなものでは済まない。彼らの命などひとたまりもないだろう。それ以上に、あまたの血が流されることになる…」
露になったソアレの肌にフォンセは指を滑らす。その滑らかさを確かめるように、何度も往復させた。
嫌だ──。そんなのは──。
「でも、それでも皆は──立てという…。俺は、もう誰も失くしなくないのに…!」
頬に涙が零れ落ちた。それを手で覆うと、その腕をフォンセが捉えて。
「君に──特別なものを見せてあげよう。きっと、それが答えだ」
言うと、フォンセは涙の止まらないソアレをそっと支えるように抱き起し、ソファから立ち上がらせると、シャツがはだけたままのソアレの手を引いて、部屋の奥へと向かった。
「ソアレ! 大丈夫か?」
頬に手を添え顔を覗き込んで来る。アステールはその背後にいた。その表情がどこか打ち沈んで見えるのは気のせいか。
フォンセはアステールが開けたベッドへとソアレを降ろしてくれた。
「もう、大丈夫だ。──フォンセが救ってくれた」
「僕は少し、力を貸しただけだよ」
フォンセは笑んでそう言うと、ヴェントにその場を譲る。
「ちゃんと、息している…。さっきまで呼吸もしてなかったってのに…」
ヴェントは信じられないと言った表情だ。
「今は呼吸もしているし、生きてる…。心配かけてすまなかった」
言いながらちらと視線をアステールに向ける。先ほどから何も言わず、ただじっとソアレを見つめていた。
アステール──。
ヴェントはソアレの手を取ると。
「…良かった。一時はどうなるかと。お前のお陰でカルドもアステールも回復した。事にカルドは──死にかけてた…。ありがとう。ソアレ…」
俯くヴェントにソアレは笑うと。
「俺が勝手にやったことだし。回復するかは分からなかった。あんな力を使ったのは初めてだったから…。父親に聞いておいて良かった」
「ソアレ! ありがとう…。俺、これからはソアレの為に生きる。ソアレに救われた命だから…」
カルドが傍らのベッドから、泣きそうになりながらそう口にする。
「いいって。大げさだな? お前はやりたいこともあるんだろ? 俺の為なんかじゃなくて、自分の為に生きろ。その方が俺も嬉しい」
「ソアレ…」
カルドは拳を握るとぐっと唇を噛みしめた。そんなカルドの頭に、ヴェントは軽く叩く様にして手を置くと。
「何はともあれ、救われた命だ。大事にしろって事だ。アステールもな?」
それまで黙っていたアステールは僅かに俯き視線を落とすと。
「…そうだな。あのままであれば、私は剣も使えなくなっていただろう。そうなれば、ソアレの側にいる資格もなかった──。ここにこうしていられるのも、ソアレのお陰だ。ありがとう、ソアレ…」
アステールはそう言って笑みを浮かべたが、どこか悲しい色が見える。
「とりあえず、ソアレはこのまま私の屋敷に先に連れて行くよ。まだ万全とは言えないから、元通りになるよう整えなければならない…。皆は後から来てくれ。警護に私の部下をつけよう」
フォンセは一段落したのを見て、そう声をかけてきた。
「それは助かります。しかし、フォンセ様。いったいどうやってソアレを蘇生させたのですか?」
ヴェントの問いにフォンセは少し首をかしげて見せ。
「…詳しくは語れないけれど、私もソアレと似た力を持っているんだよ。私の母の家系らしいのだけど、詳しいことは…。幼いころ母を亡くしたから、覚えていなくてね」
柔らかい物腰でそう答えると、ソアレの頬に触れ。
「やはり…まだ、身体に馴染んでいないようだ…。直ぐに出発の準備するから、暫くここで休んでいてくれ」
そう言うとフォンセはさっと踵を返し、部屋を出ていった。
フォンセが出て行ったあと、ヴェントはグランツにもこの事態を報告してくると、すっかり歩くこともできるようになったカルドと共に部屋を出て行く。ヴェントが気を使ったのが分かった。
二人きりになって、ソアレは漸くアステールと相対する。どう声をかけようか躊躇った後、思いきって口を開いた。
「…アステ。心配かけてすまなかった。俺、お前には生きて欲しくて…。だから──」
「ソアレ」
遮る様にアステールが口を開く。
そのままベッドサイドへ腰かけ、ソアレの頬に触れた。まだ少し冷たいアステールの指先が、体調が万全でないことを知らせてくる。
「ソアレ…。俺は──お前のいない世界では生きられない…」
「…アステ?」
「お前は俺を生かして満足だっただろうが、それくらいなら、共に死んだ方がましだ…。今後、もし同じ様なことが起こったとしても、自分を犠牲にしてまで俺を生かそうとするな。──俺の為にも…」
「……でも」
と、不意にアステールが肩を抱き、腕の中にソアレを閉じ込めた。アステールの温もりが直に伝わって、胸が高鳴る。
「…頼む」
絞りだされた声は泣き出しそうにも聞こえ。そんな声を聞いてしまえば、否とは答えられない。
でも、俺はそれでもアステールに生きて欲しいと思う。生きて幸せになって欲しいと願う。
けれど、今はそれを口にはしなかった。
「…分かった。アステ」
僅かに顔を上げ、アステールを見上げると、同じく見下ろす視線とぶつかった。
悲しみと熱が入り混じった、なんとも言えない目をしている。
「アステ。──好きだ…」
思わず言葉が溢れた。
そう、言わずにはいられなかった。二度と後悔しないために。
今、伝えておかなければ──。俺はあの時、そう誓ったのだから。
アステールの瞳が見開かれる。
冴えた月の光の様な色を湛えた、アイスグレーの瞳。この瞳をもう一度見たかったのだ。
本当は、死にたい訳ではなかった。アステールとともに、この先も生きたかった。
でも、どちらか一つしか望めないのだとしたら。
俺はまた、迷わずアステールを生かすことを選択するだろう。
それが、どんなにアステールを悲しみ突き落とすと分かっていても。その先にはきっと光があると信じているから。
「ソアレ──」
アステールの指先が頬を滑り頭に回ると、そのまま逃がさない様に抱えられキスが落とされた。
今までにない、激しいキスにソアレは思考を絡めとられる。
「ん──っ…」
アステール…。
いつの間にか、アステールの背に腕を回し自ら抱きついていた。アステールが求めるように、自分も求めていることに気づく。
「は…っ──ぁ…」
「…ソアレ、好きだ──」
漸く唇が離れ、息を次ぐと額を合わせるようにして、そうアステールが口にする。
「ん…。好き──俺も──」
合わせるように言葉が流れ出る。
もう一度、唇を重ねあって、互いの熱を確かめて。漸く一息ついた。
「…離れがたいな」
アステ―ルの腕が強くソアレの腰を引き寄せる。
胸元に頬を寄せると、アステールの鼓動が速くなっているのが分かった。それはソアレも同じで。
「直ぐに会える…。先に行って待ってるから…」
額にキスが落とされアステールが微かに笑んだ気配。
「そうだな。直ぐに会える。──そういえば、いったい、フォンセ様に何をされた? お前のその状態から、大体の想像はつくが…」
軽く前を止めただけの着衣からは、何が行われたのか大体の想像はつくのだろう。
「なっ、これはただ、脱がされただけでっ…。気が付いたら裸だったんだ。それで──この方が力が馴染むって…」
「フォンセ様の力は──お前と同じなのか?」
アステールが顔を起こして見下ろしてくる。ソアレは言われた事を思い出しながら。
「…いや、質が違うって言ってた。俺の力は自分自身の身を削るけど、フォンセの力は相手の力を生かしながら同化して増幅させるって…。回復というより、精神を蘇らせるのに特化しているって、言ってたな…」
「聞いたこともないな…」
確かにただの魔法とは違う気がした。普通は自身の持っている力を使う。だから、それなりの器がなければ、大きな魔法も使えない。
それを相手の力と同化し増幅させるなど、聞いたこともなかった。それだけ、特異な家系だったということか。
そうこうしていれば、部屋のドアをノックするものがいた。
「そろそろ出発したいのだけれど。──お邪魔かな?」
扉の向こうに柔らかいフォンセの声が聞こえる。ソアレは慌てて居住まいを正すと。
「いいえ…。どうぞ」
フォンセが入室してくると云うのに、アステールはソアレから離れようとはしない。
そのままベッドサイドに腰かけている。腕を離す気配もなくその距離は近かった。
アステ?
知らずに部屋に入って来たフォンセは、それを見るなり、ああ、と嘆息し。
「…アステールにはお邪魔だったようだ。すまないね? これから暫くはソアレを私に任せてもらえるかな?」
「私たちが屋敷に着くまでの間、よろしくお願いいたします…」
アステールの視線が険しいものになる。
警戒と敵意。
それはやはり、フォンセの行った行為の所為だろうか。
「ソアレを盗られると思っているのかな? ──まあ、君はしがない側付だ。私の命令一つでソアレの傍から外すこともできる…」
「フォンセ?」
ソアレが非難の声を上げると、肩をすくめて見せ。
「…冗談だよ。君が悲しむ顔は見たくない。けれど──ソアレ。君の気持ちが変わったならいつでも言ってくれ。すぐにこの男を傍から外そう」
「そんなこと、思わない。フォンセ、一体どうしてそんなこと──」
困惑して見返せば、
「ちょっとふざけただけさ。さあ、行こうソアレ」
言うとベッドからソアレを抱き上げようと腕を伸ばしたが、その手を横からアステールが止めた。
「ソアレの側付は私です。車まで運びます」
「そう──。じゃあ、お願いするよ」
一瞬、鋭い視線を投げかけたが、それもすぐ収め、フォンセは踵を返すと部屋の出口に向かった。その背を見送りながら。
「アステ、どうしたんだ?」
「…別に。売られた喧嘩を買ったまでだ」
「?」
「さあ、行こう。──ソアレ」
アステールの腕がしっかりとソアレを抱え上げる。
「うん…」
しばらく会えなくなるのだと思うと、この温もりが貴重なものに思え。ソアレはそっと頭をアステールの胸元に寄せた。
+++
何が気に食わないと言うのでもない。
ただ、フォンセの何かが以前と違って、引っかかる気がした。
昔と同様、物腰の柔らかいのは変わらない。
ただ、そのソアレに対する態度に今までにないものを感じていた。
執着、とでも言うのだろうか?
視線、言葉、行動。何もかも、ソアレに向けられるすべてが絡みつくように感じられた。
それに、あの力。実際に目にした訳ではないが、異様ではある。
ソアレが危機にあったのをどうやって知ったのか。それも不思議だった。
そこはソアレと同質の力を持っていると言うことなのか。
調べる必要があるかもしれない──。
アステールは腕に収まるソアレを見下ろし、そう思った。
ソアレの敵ではないだろうが、完全に自分たちの味方とも思えなくなっていた。
そんな男にソアレを託すのは不安ではある。このまま自分もついて行きたい所ではあったが、それをフォンセは許さないだろう。
何か、嫌な予感がする──。
「ソアレ。何かあれば直ぐに連絡を入れろ? ──いや、何もなくとも毎日だ。端末は離さず持っていろ」
「分かった。って、アステールそんなに心配しなくても──」
「ソアレ。身近にいる者でさえ、裏切る世の中だ。それを過去の記憶だけで以前と変わらないと思うな。──用心するに越したことはない」
アステールの真剣な眼差しにソアレは根負けしたのか。
「分かった…。端末も離さないし、ちゃんと毎日連絡もする。──ってか、本当はこのままお前についてきて欲しいけれど…。それは無理そうだもんな?」
「直ぐに迎えに行く」
「迎えって。──でも、待ってる」
人目があるため、キスはしてこなかったが、代わりに額を胸元にすり寄せ甘えてくる。
好きだと口にして、遠慮がなくなったのだろう。それを素直に愛しいと思う。
「…ああ」
目を閉じて、その温もりを感じた。
+++
フォンセの住む城は広大な敷地の中にあった。
周囲を深い森に囲まれ、その木々は敷地の至る所に入り込んでいる。母屋となる邸宅の外に、幾つかその森の中にも屋敷が点在している様だった。
深い霧に包まれ、木々の合間に一際大きな石造りの城がぼんやりと浮かぶ。
五年前、来た時となんらかわりなく、そこにあった。記憶のままだ。
母が生まれ過ごした場所。そしていまは叔父のフォンセが住まう。
「ここは相変わらず寒い場所だろう? 一人でいると、憂鬱にもなるんだよ」
フォンセは先に車から降りると、手を差し出し、エスコートする様にソアレを導く。
車が到着したのは母屋の前。中央に噴水が置かれた広場の向こうに大きな扉が控えていた。
今はそこに執事らが立ち、出迎えている。
「ソアレ、君の部屋は温室だよ。そこの方がよく眠れるはずだ」
「温室?」
人が眠れるような場所なのだろうかと不思議に思えば。
「姉が好んで過ごしていた場所だよ。前にも一度来たことがあるはずだ。──覚えていないかい? 姉の好きな薄紫の花が咲いていた…」
そこで過去の記憶が思い起こされる。
確かに、五年前。フォンセに案内されて見せられた気がする。薄紫の花が所狭しと咲き乱れていて──。
「あそこを改装して、人が過ごせる場所にしたんだ。──きっと気に入る…」
フォンセはソアレの手を取ったまま、母屋の広い廊下を通り過ぎ、一旦外へ出ると、点々と続く石畳を越え、庭の一角に案内した。
そこは離れの様を呈していて、居住部分もガラス張りの温室となっている。
それも小さなものでなく、二階まで届くほどの高い天井が全てガラス張りになっている巨大なものだった。
しかも室内も室外も、壁際は全て植物で覆われていて、容易に中を覗くことは出来ない。
中に案内されると、日差しの弱い地方であるのに、ここは暖かな光に満ちていた。確かに気に入る。
「──あれは…」
ソアレは視線の先に薄紫の花の蕾を見つけた。それは鉢の中で生き生きと緑の葉を伸ばしている。
「そう。まだ咲き乱れるのはこれからだけどね。姉の好きだったアイテ―ルの花…。君も好きだと言ったね?」
「ん。…俺も好きだ」
写真で見る母の印象と重なるそれは、生前の彼女を見るようだった。と、フォンセがその傍らに立ち。
「この奥に部屋がある。そこを使うといい。──私以外に今まで使わせたことはないんだが、君は特別だ…」
フォンセが白い指先を伸ばし頬に触れてくる。
「──それにまだ、続きをしないとね…」
「続き?」
「君の身体に私の魔力が馴染んでいないんだよ。気を付けないとまた、君の魂が離れてしまう…。──いいかな?」
「って、その、それって…」
瞬時に顔が熱くなる。
馴染ませると言うことは──。
裸で抱き合ったあの行為を思い出す。
すると、フォンセは笑んでソアレの耳元へ唇を寄せて。
「ここへは誰も来ない。──大丈夫だよ。これは治療の一環だからね」
「……っ」
やはり、同じことをするのだ。
幾ら叔父とは言え、裸で抱き合うのは流石に恥ずかしい。
「何もしない。ただ、私の力を君へ馴染ませるだけ…。──おいで」
ソアレの思いを察して、フォンセはそう口にした。
手を引かれ奥へと連れていかれる。
ガラス張りの入り口を抜けると、天井の高い居室があった。部屋の中央には真っ白なシーツの広がるベッドがあり、その傍らに小さな円卓が置かれ椅子が二脚あった。
ガラスの窓際には、白いクッションの置かれたソファがあったが、それだけだ。あとは緑とガラス張りの壁から差し込む日の光のみ。
それでも奥にはキッチンと、シャワールームもあるようだった。
「そこへ座って。先にお茶を飲もう」
フォンセはソファへとソアレを導くと、自分はお茶を淹れる為、キッチンへと立った。
「って、俺、でも──」
「いいから。君の大切な臣下達はまだ到着に時間がかかる。──あと、三日はかかるだろう。それまでは私の傍にいて欲しい。これは、治療の為だけじゃない…」
ソアレが乗せられた車は、通常より早く走らせることができるらしい。ほとんど地表を滑るようにしてここまで来た。
お茶を淹れる手を止め、フォンセはソアレを見つめてくる。その目は懇願する様でもあり。
母、エストレアを好いていたというのは本当なのだろう。その眼差しに頷かないわけにはいかなくなった。
けれど──。
「分かった…。ここにいる。──けど、ここに留まるのは治療の為だけだ。俺は──、母の代わりにはなれない…」
今だけなら傍にいてもいい。けれど、アステールが到着すればそこで終わりだ。
俺はアステールが好きだ。
その彼を裏切る様な行為はしたくない。
するとフォンセは察したのか、少し寂しげに笑んで。
「いいよ…。君には大切な人がいるって分かっているからね。──それに、君の事はエストレア姉様の代わりだとは思っていない…。一緒にいるのは彼らが来るまでの間でいい。君がそう望むなら…」
フォンセはそう言うと、手元の茶器に目を落とす。茶葉が透明な茶器を通してお湯に揺れるのが目に入った。ハーブなのかいい香りが漂う。
「これを飲むと、疲れも取れるし落ち着くはずだ。──どうぞ」
「ありがとう…」
確かにほっと落ち着く香りがした。すっかり飲み干す頃には、緊張もだいぶほぐれていた。どこかフワフワとした心地がする。
すると、ソアレの傍らに座ったフォンセが頬に手を触れさせ、その手をそのまま首筋へと滑らせてきた。
「…フォンセ?」
「大丈夫。馴染ませるだけ──だから…」
そのままソアレの肩を一方の手でつかんで押し倒す。柔らかいクッションが背に当たった。
フォンセは紫の瞳で見下ろしてくる。幾分熱を含んでいるように見えるのは気のせいか。
頭が──ぼんやりする…。
「ねえ、ソアレ──。君はもう、ここから出ない方がいい…」
「どう、して?」
フォンセの手がソアレの来ているシャツのボタンを一つ一つ外していく。
「君がここを出ていけば、必ず争いが起こる。そうすれば──君は大切なものを、今度は確実に失くす。それは──君も分かっているはずだよ?」
「…それ、は──」
「分かっているでしょ? 今回はモンスターだけだったけれど、次はテネーブルが力に物を言わせて襲い掛かってくる──。彼はモンスターも扱うって知っているよね? 今回のモンスターと同レベルのものがどれだけいるか…。それに対して君たちの戦力はどれほどあるのかな? 私の持つ戦力を足しても、残念だけど勝つのは難しい…。王都奪還など上手くいくかどうか。──例えそれが叶ったとしても、君の後ろにはきっと誰もいない…」
あ──。
「なんで…それを──」
それはソアレがずっと思っていたことだった。自分が動くことで確実に誰かは命を落とす。
それが、怖くて──。
「今回は大切なお友達のカルドも、愛するアステールも救えたけれど、次はこんなものでは済まない。彼らの命などひとたまりもないだろう。それ以上に、あまたの血が流されることになる…」
露になったソアレの肌にフォンセは指を滑らす。その滑らかさを確かめるように、何度も往復させた。
嫌だ──。そんなのは──。
「でも、それでも皆は──立てという…。俺は、もう誰も失くしなくないのに…!」
頬に涙が零れ落ちた。それを手で覆うと、その腕をフォンセが捉えて。
「君に──特別なものを見せてあげよう。きっと、それが答えだ」
言うと、フォンセは涙の止まらないソアレをそっと支えるように抱き起し、ソファから立ち上がらせると、シャツがはだけたままのソアレの手を引いて、部屋の奥へと向かった。
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