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第六章 奪還
第三十五話 闇
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準備が整い、出発が告げられる。
グランツはアステールの姿に驚きはしたものの、直ぐにその参加を認めた。
今は一人でも戦力が欲しいところ。それがアステールなら尚更だった。
それに、ソアレの側を離れたくはないと言う、アステールの思いを汲んでの事もある。
皆が集まったのは揚陸艇の離着陸場。
もう空にも陸にも敵はいない。このまま直接、城へつける予定だ。
そこにフォンセの姿を認めたアステールは警戒の色を強める。
グランツがフォンセも行くのだと告げると、眉を顰めはしたものの、頷いただけで何も口にはしなかった。
ただ、傍らにいたソアレの腕を強く引き寄せると。
「俺の傍を離れるな…」
ソアレにしか聞こえない低い声でそう口にした。
「ん…」
アステールの中ではフォンセも敵の内に入るのだろう。
ソアレ自身も快くは思わないが、自分には危害を加えた事はない。そこは安心はしているのだが。
「フォンセは何を考えているのか分からない。アウィスも警戒している。例え身内だからと言って、気を許すな」
「フォンセは…、危険か?」
アステールは視線を先へと向ける。そこには揚陸艇に乗り込むフォンセの姿があった。
ソアレの問いにアステールは頷くと。
「危険だ。今までの行いからではなく、俺の中の何かがそう告げる…。単なる思い込みや嫉妬からではない」
「…わかった。お前がそこまで言うなら、気をつける」
「ソアレ」
アステールの声のトーンが幾分、打ち解けたものに変った。
「俺は必ずお前を守る。お前も無理をしないと誓ってくれ」
請うような表情に、ソアレは心に思うところはあっても頷く事しかできない。
「…ああ。無理はしない。さっさと終わらせて帰ってこよう」
笑ってアステールの肩に手を置いた。
+++
その少し前、ヴェントら怪我人が眠るテントへ、一人の男が姿を現す。
そういった天幕はいくつかあった。重傷度に合わせて分かれているのだ。
ヴェントが眠るのは、一番治療が必要な者たちを集めた場所。先ほどまでソアレとアステールが眠っていた場所だ。
個別に衝立が立てられ、そこへ回復用のカプセルが置かれている。それぞれの状態をモニターで専属の隊員が監視していた。
男がそこへ現れたと同時、なぜかモニターを見ていたはずの隊員の頭がガクリと前のめりに倒れこみ、眠ってしまった。
男は気にせず近づくと、ヴェントのモニターを見つめる。
「ああ…。ほんと、かなり重傷だね? 生きているのが不思議なくらいだ…」
カルドも口にした通り、かなりの重傷だった。意識もなく重体と言ってもいい。
次にヴェントが眠るカプセルを覗き込んだ後、愛おしそうにそこへ手を触れさせ。
「君も回復して、ソアレを手伝いたいよね? こんな状態では何も出来ない…」
ヴェントが答える筈もなく。眠りから覚める気配はない。触れた手を離し、再び傍らに置かれたモニターへと向かう。
置かれたパネルへと手を伸ばし、操作すると中の溶液が抜かれていく。
「私は彼が欲しい。…だから、君の手助けが必要なんだ」
全ての溶液が抜かれると、自動で扉が開く。
まだろくに再生仕切れていない傷口が白く浮く身体は、痛々しい姿を晒している。その濡れたヴェントの額へひたりと手を置くと。
「君を生き返らせてあげるよ。…特別だ」
艶のある唇に笑みを浮かべて見せた。
+++
城内は静まり返っていた。物音ひとつしない。
城の最上部にある離着陸場から階下へ降りる際中、敵兵が潜伏しているものと思われたのだが、誰一人現れない。まるで無人だった。
グランツらの手配で、すでに他の棟へ囚われている家族らは解放されていた。今頃、兵士達は家族や愛する者たちと抱き合って喜んでいる頃だろう。
ソアレは黒光りする廊下に踏み出す。この先は王の間だ。
いつもそこには、王らしく威厳に満ちたレーゲンが玉座に座りこちらを見下ろしていた。今も扉を開ければ、そこにいるのではと思える。
「待て。ソアレ」
グランツは、先へ進もうとしたソアレの前へ制するように立つ。
「テネーブルがいるなら、この先だろう。…闇の神子もな。俺が先に行く」
「闇の神子?」
フォンセは初耳だったのか、聞き返してきた。グランツは視線を広間へ通じる分厚い扉へと向けたまま答える。
「フードを被った男の正体だ。『闇の神子』、闇を操る者らしい…。モンスターもここ最近の不穏な空気もすべて奴が原因だ」
「へぇ…。知ってたんだ…」
「フォンセ?」
ソアレが聞き返すと、にこりと笑んで。
「僕も無知じゃない。ある程度は調べていたさ。ソアレをこんな状況に追い込んだ原因はなんなのか、知りたいと思うのは当然だろう?」
「…フォンセはどこまで知っているんだ?」
ソアレは眉をひそめ問う。その問いに考え込む様にして。
「どこまで…。そうだね。ほら、いつか君に見せた事があったでしょ? 君の大切なアステールやヴェント、カルド。皆が倒れていた…。あれが関係しているんだ」
「やっぱり、あれは過去の──」
「そうだよ。君の気を引くため、少し手を加えさせてもらったけどね。ソアレの思うように、あれは未来ではなく僕らの前世での出来事だよ」
「俺達やフォンセの?」
フォンセは静かに頷くが、ソアレは堪らず返す。
「でも、それが闇の神子とどんな関係が?」
フォンセは遠い目をした後、ソアレを振り返り。
「昔ばなしをしようか?」
「昔ばなし?」
「そう。遥かな昔、この世は闇と光とが混じり合う混沌とした世界だった。モンスターも亜種人種も普通に存在していたんだ。…そこへ蔓延る闇を完全に払うため、神の力を宿した神子が遣わされた。神の分身。人とは異なる存在だよ。それが過去の僕や君だ」
フォンセはひたとソアレを見つめる。
「光の神子…」
「そう人は呼んだね。僕たちはまず闇を知るため、闇の神子へ近づいた。しかし、近づき過ぎたんだ…。そこで君はひとりの闇の神子と親密な関係となり契りを結んだ」
「…って、それは…」
問いに答えず、フォンセの視線はソアレから、背後に立つアステールへと流れた。しかし、それも直ぐに反らされ。
「君は闇と戦い、人間の仲間もその契った相手も失った。悲しみの中、最後の力を振り絞り、闇を一身に受け自身の内に留めると、光の力で闇を払った。──はずだった…」
「はず…とは?」
そこにいる皆を見渡した後、王の間に続く扉へ向かって歩きだした。大理石の上を歩く靴音が響く。
「器がもたなかったんだよ。すでにかなり体力を消耗していた…。それで、私の出番だ」
「フォンセ?」
フッと笑んだフォンセに今までと違う表情が浮かぶ。暗い影がその姿を覆った様に見えた。フォンセは重い扉に手を掛けると。
「私は亡骸となった君に代わり、闇を払ったのさ…。君がしたように闇を自分の身に全て引き受け、自身ごと光を受け闇を滅した。…しかし、未練を残した私の心に僅かな闇が取り憑いた。その闇が魂を侵し、時が満ち『僕』が生まれた…。闇の神子、それは──」
フォンセが扉をゆっくりと押し開いた。軋む音が静まり返った広間に響く。
「私の話は終わりだ。ほら…お待ちかねだよ」
ちらと視線がソアレの背後にピタリとつくアステールに向けられる。にぃっと口の端に嫌な笑みが浮かんだ。はっとしたその時。
「見ろ…!」
グランツの声に我に返って、前方に目を向けた。そこには玉座に座るテネーブルの姿があった。
「ああ…。来たのか? ソアレ…」
確かに声はテネーブルだったが、それと分かるのは顔だけで、身体は蜘蛛の様に変化していた。思わず息をのむ。
何十本とある手足は触手と言ってもいいだろう。数十メートル四方に伸ばされ、何かを待つように絶え間なく動いていた。
その先には鋭い鎌のような爪が生えているものもある。
皆、テネーブルの異様な姿に、目が釘付けとなった。
「テネーブル…」
ソアレがその名を口にすると。
「ずっと、待っていたよ…。美しく成長したね…。あの時、無理にでも私のものにしておけば良かった…」
ひきつる様な声でクツクツと笑う。
「…なんて、事だ…」
グランツは言葉を失くす。アステールは既にソアレの前へ庇うように立って剣を構えていた。
ブリエは眉間にしわを寄せながらも、同じくソアレの前に進み出る。アウィスはため息をつき。
「なかなかの状態だね…。あれを倒さないといけないんだよね?」
「ああ。だな…」
アウィスのやや緊張感に欠けた言葉に、グランツは気を取り直すと。
「ソアレ、守護の魔法は使えるか?」
「ああ…」
ソアレは直ぐに守護の力で皆を守ると、剣を構えた。
「アウィスとフォンセ様は魔法で奴を一度叩いてもらえますか?」
「いいよ…」
フォンセはすらりとした手を天に掲げると、その手に魔力を集めだした。途端に白い電撃が塊となって現れる。
フォンセの姿を認めると、テネーブルの身体が震えだした。恐怖ではなく怒りからの様だった。
もう人の声を発することはせず、口をぱくぱくと開いては閉じを繰り返している。
代わりにその下にある蜘蛛の口が、シューシューと黒い煙を吐き出しながら威嚇した。
「私も微力ながら──」
アウィスの魔法は風を操るらしい。辺りに大きな渦ができ始める。
「アステールはソアレを援護しろ。ブリエは俺に続け。先に奴の手足を削ぐ。いいか?」
「いつでも」
グランツの問いにアステールはテネーブルから視線を外さず答える。
「はっ」
ブリエもいつでもやれる様、体勢を整えた。
「じゃあ、行くね…」
フォンセは皆が整ったのを見て取ると、玉座を動こうとしないテネーブルに向け、雷を放った。
それに続いて、アウィスも切り裂くような風をテネーブルに向ける。
「ギィイイイ──!」
魔法が直撃し叫び声をあげる。痛みに身体を痙攣させながら、怒りにむやみやたらと触手を振り回し始めた。
「行くぞ!」
グランツが直ぐ傍に迫った、一番長い触手を叩き切る。
テネーブルの身体は分厚い装甲の様な殻で覆われていたが、それを節から砕いた。
声にならない叫び声をテネーブルが上げる。
ブリエもグランツに続き触手を叩き切る。
ソアレは手近な触手を切付け、アステールはソアレを狙う触手を薙ぎ払った。
しかし、その攻撃に弱ることもなく、次々に残された触手が皆を襲う。一方を避ければもう一方から直ぐ別の触手が襲い掛かり。
切れたのは初めの内だけで、避けるのが精一杯。あまりに早い動きに皆、手を焼いた。
「っとに、魔法が使えないな…!」
アウィスも苦手と言っていた剣を手に、テネーブルに斬りかかっていた。そうは言いながらも、剣さばきはアステールにも劣らない。
フォンセもいつの間にか剣を手に、触手を打ち払っていた。
魔法を使いたい所だったが、下手に放てば皆を巻き込む。一旦離れなければ魔法をぶつけることができなかったが、テネーブルはその離れる隙を与えない。
なんとしても爪で切り裂こうと触手を振り回してくる。
ソアレの守護の力がある為、服が裂ける程度で済んでいるものの、なければかなりの切り傷を負った事だろう。
それに、やはり当たれば衝撃を受けるのは避けられない。
「くそ…っ!」
ソアレも剣を手に挑んでいたが、埒があかない。
どうすればいいか──。
目に入った汗を腕で拭っていると、唐突に横合いから触手が襲いかかって来た。
「っ…!」
剣を翳し避けようとするが、襲いかかると思われた長い触手が、ソアレの足首を捕らえた。
「くっ…!」
衝撃で身体が横倒しになる。
引きずられながらその触手を断ち切ろうとするが、動くせいで剣の刃がうまく入らなかった。
「ソアレ!」
アステールが襲いかかる触手を避けながら駆けつけようとするが、テネーブルがその隙を作らせない。
「大丈夫だ…! 何とか──」
ガッと刃が触手に入る。そこから黒い液体が飛び散った。
これで行ける──!
もう一度、そう思い振り上げた右手に突然、硬い毛に覆われた黒い触手が絡んだ。
強い力に思わず剣を取り落とす。
「っ!?」
あっという間に身体が宙を舞い、テネーブルの顔の正面へと連れて行かれた。
両手の自由を奪われ吊り上げられると、足にも更に触手が絡みつく。
黒い胴体に白く浮かぶ顔にはニヤリとした笑みが浮かんだ。
なぜ笑うのかと訝しめば、次に起きた動きにその意図を知る。
触手が裂けた服の布地の間から入り込み、感触を楽しむ様に這い始めたのだ。
明らかに意図を持って蠢くそれに、鳥肌が立った。どろりとした粘液が素肌を伝う。
「っく…っ! ざけんなっ!」
必死に身を捩るが、びくともしない。
逆に締め付けがきつくなり、手首や足に痛みが走る。その間にも楽しむ様に触手が身体中を這い回った。歯を食い縛り、気持ち悪さに耐える。
この…っ、人を何だと思ってる…!
「ソアレ…!」
アステールが跳んで、身体を這いずっていた触手を元から叩き切る。テネーブルがソアレに集中した為、攻撃の手が緩んだのだ。
フォンセは口の端に冷たい笑みを浮かべると。
「テネーブル…。調子に乗りすぎだ。僕を怒らせたね…」
フォンセが右手を掲げ、雷を剣の形に変える。それをソアレの足を拘束していた触手目掛け放った。
「グォォォ…!」
見事命中し、テネーブルは負った痛みにソアレを放し悲鳴をあげた。
「ソアレ…!」
宙に放り出されたソアレを、アステールが床に落ちる寸前に抱き止める。
「大丈夫か?」
「…ん。平気だ。何ともない」
気持ち悪さは残るが、手足に赤いアザがついたくらいだ。
テネーブルは苦しげな声をあげた後、先ほどより更に暴れだした。
悔しかったのか諦めきれないのか、残った触手をソアレに伸ばしてくる。
「させるか…!」
アステールが伸ばされた触手を叩き切り、フォンセが更に雷の刃を放つ。
アウィスの剣が閃き、グランツの重い剣が刃の付いた触手を叩き切った。
ブリエはソアレの後方で、隙あれば襲いかかろうとする触手を叩き落としていた。
テネーブルは叫び声を上げ、ぐわりと闇が増した。その身体が浮腫んだ様に更に巨大化する。
ソアレに向かって伸ばされた触手が、邪魔なアステールを払い除け様とした。
避けきれず、鋭い刃がアステールの脇腹を突き、身体を弾き飛ばす。
「っ!」
アステールが壁に打ち付けられた。
「この…っ!」
皆が離れた僅かな隙に、守りの力を思い切りテネーブルの本体にぶつけた。
それはテネーブルの胴体に命中し、その身体が痙攣しだした。
殺らせない──!
放った後、強い力が内に湧く。力が溢れるように集まるのを感じた。
なんだ? これは──。
不思議に思いながらも、今とばかりに湧き上がる力を次々とテネーブルにぶつけた。
そのたびに胴体は痙攣し次第に触手の動きが弱まっていく。
「よし! 今だ!」
グランツを先頭に、立ち上がったアステールと、ブリエ、アウィスが次々と残された触手を切り落としていく。
「ソアレ! 力を多用するな!」
アステールが触手を切り落としながら諌めるが、ソアレは聞かずに力をその手に溜める。
「平気だ! 力が、勝手に湧くんだ…!」
既に触手はあと数本を残すのみ。
胴体はビクリビクリと痙攣を繰り返し、頭部についた顔は苦痛に歪んでいた。
その目からは、血の涙が流れ出している。
それを目にとめ、思わず手が止まった。
「…テネーブル」
テネーブルとて、途中までは優しい叔父だったのだ。
こんな事になりさえしなければ──。
叔父は今も田舎で穏やかに過ごしていたはず。闇に心を囚われなければ。
と、躊躇いを見せたソアレの肩に、ふわりと手が置かれた。
振り返れば笑んだフォンセがそこにいた。
ソアレに顔を寄せると、その耳元へ囁く。
「…彼がレーゲン王を倒したんだよ。あの、鋭い爪でね」
「フォンセ?」
ソアレは驚き、フォンセの顔を見つめた。
グランツはアステールの姿に驚きはしたものの、直ぐにその参加を認めた。
今は一人でも戦力が欲しいところ。それがアステールなら尚更だった。
それに、ソアレの側を離れたくはないと言う、アステールの思いを汲んでの事もある。
皆が集まったのは揚陸艇の離着陸場。
もう空にも陸にも敵はいない。このまま直接、城へつける予定だ。
そこにフォンセの姿を認めたアステールは警戒の色を強める。
グランツがフォンセも行くのだと告げると、眉を顰めはしたものの、頷いただけで何も口にはしなかった。
ただ、傍らにいたソアレの腕を強く引き寄せると。
「俺の傍を離れるな…」
ソアレにしか聞こえない低い声でそう口にした。
「ん…」
アステールの中ではフォンセも敵の内に入るのだろう。
ソアレ自身も快くは思わないが、自分には危害を加えた事はない。そこは安心はしているのだが。
「フォンセは何を考えているのか分からない。アウィスも警戒している。例え身内だからと言って、気を許すな」
「フォンセは…、危険か?」
アステールは視線を先へと向ける。そこには揚陸艇に乗り込むフォンセの姿があった。
ソアレの問いにアステールは頷くと。
「危険だ。今までの行いからではなく、俺の中の何かがそう告げる…。単なる思い込みや嫉妬からではない」
「…わかった。お前がそこまで言うなら、気をつける」
「ソアレ」
アステールの声のトーンが幾分、打ち解けたものに変った。
「俺は必ずお前を守る。お前も無理をしないと誓ってくれ」
請うような表情に、ソアレは心に思うところはあっても頷く事しかできない。
「…ああ。無理はしない。さっさと終わらせて帰ってこよう」
笑ってアステールの肩に手を置いた。
+++
その少し前、ヴェントら怪我人が眠るテントへ、一人の男が姿を現す。
そういった天幕はいくつかあった。重傷度に合わせて分かれているのだ。
ヴェントが眠るのは、一番治療が必要な者たちを集めた場所。先ほどまでソアレとアステールが眠っていた場所だ。
個別に衝立が立てられ、そこへ回復用のカプセルが置かれている。それぞれの状態をモニターで専属の隊員が監視していた。
男がそこへ現れたと同時、なぜかモニターを見ていたはずの隊員の頭がガクリと前のめりに倒れこみ、眠ってしまった。
男は気にせず近づくと、ヴェントのモニターを見つめる。
「ああ…。ほんと、かなり重傷だね? 生きているのが不思議なくらいだ…」
カルドも口にした通り、かなりの重傷だった。意識もなく重体と言ってもいい。
次にヴェントが眠るカプセルを覗き込んだ後、愛おしそうにそこへ手を触れさせ。
「君も回復して、ソアレを手伝いたいよね? こんな状態では何も出来ない…」
ヴェントが答える筈もなく。眠りから覚める気配はない。触れた手を離し、再び傍らに置かれたモニターへと向かう。
置かれたパネルへと手を伸ばし、操作すると中の溶液が抜かれていく。
「私は彼が欲しい。…だから、君の手助けが必要なんだ」
全ての溶液が抜かれると、自動で扉が開く。
まだろくに再生仕切れていない傷口が白く浮く身体は、痛々しい姿を晒している。その濡れたヴェントの額へひたりと手を置くと。
「君を生き返らせてあげるよ。…特別だ」
艶のある唇に笑みを浮かべて見せた。
+++
城内は静まり返っていた。物音ひとつしない。
城の最上部にある離着陸場から階下へ降りる際中、敵兵が潜伏しているものと思われたのだが、誰一人現れない。まるで無人だった。
グランツらの手配で、すでに他の棟へ囚われている家族らは解放されていた。今頃、兵士達は家族や愛する者たちと抱き合って喜んでいる頃だろう。
ソアレは黒光りする廊下に踏み出す。この先は王の間だ。
いつもそこには、王らしく威厳に満ちたレーゲンが玉座に座りこちらを見下ろしていた。今も扉を開ければ、そこにいるのではと思える。
「待て。ソアレ」
グランツは、先へ進もうとしたソアレの前へ制するように立つ。
「テネーブルがいるなら、この先だろう。…闇の神子もな。俺が先に行く」
「闇の神子?」
フォンセは初耳だったのか、聞き返してきた。グランツは視線を広間へ通じる分厚い扉へと向けたまま答える。
「フードを被った男の正体だ。『闇の神子』、闇を操る者らしい…。モンスターもここ最近の不穏な空気もすべて奴が原因だ」
「へぇ…。知ってたんだ…」
「フォンセ?」
ソアレが聞き返すと、にこりと笑んで。
「僕も無知じゃない。ある程度は調べていたさ。ソアレをこんな状況に追い込んだ原因はなんなのか、知りたいと思うのは当然だろう?」
「…フォンセはどこまで知っているんだ?」
ソアレは眉をひそめ問う。その問いに考え込む様にして。
「どこまで…。そうだね。ほら、いつか君に見せた事があったでしょ? 君の大切なアステールやヴェント、カルド。皆が倒れていた…。あれが関係しているんだ」
「やっぱり、あれは過去の──」
「そうだよ。君の気を引くため、少し手を加えさせてもらったけどね。ソアレの思うように、あれは未来ではなく僕らの前世での出来事だよ」
「俺達やフォンセの?」
フォンセは静かに頷くが、ソアレは堪らず返す。
「でも、それが闇の神子とどんな関係が?」
フォンセは遠い目をした後、ソアレを振り返り。
「昔ばなしをしようか?」
「昔ばなし?」
「そう。遥かな昔、この世は闇と光とが混じり合う混沌とした世界だった。モンスターも亜種人種も普通に存在していたんだ。…そこへ蔓延る闇を完全に払うため、神の力を宿した神子が遣わされた。神の分身。人とは異なる存在だよ。それが過去の僕や君だ」
フォンセはひたとソアレを見つめる。
「光の神子…」
「そう人は呼んだね。僕たちはまず闇を知るため、闇の神子へ近づいた。しかし、近づき過ぎたんだ…。そこで君はひとりの闇の神子と親密な関係となり契りを結んだ」
「…って、それは…」
問いに答えず、フォンセの視線はソアレから、背後に立つアステールへと流れた。しかし、それも直ぐに反らされ。
「君は闇と戦い、人間の仲間もその契った相手も失った。悲しみの中、最後の力を振り絞り、闇を一身に受け自身の内に留めると、光の力で闇を払った。──はずだった…」
「はず…とは?」
そこにいる皆を見渡した後、王の間に続く扉へ向かって歩きだした。大理石の上を歩く靴音が響く。
「器がもたなかったんだよ。すでにかなり体力を消耗していた…。それで、私の出番だ」
「フォンセ?」
フッと笑んだフォンセに今までと違う表情が浮かぶ。暗い影がその姿を覆った様に見えた。フォンセは重い扉に手を掛けると。
「私は亡骸となった君に代わり、闇を払ったのさ…。君がしたように闇を自分の身に全て引き受け、自身ごと光を受け闇を滅した。…しかし、未練を残した私の心に僅かな闇が取り憑いた。その闇が魂を侵し、時が満ち『僕』が生まれた…。闇の神子、それは──」
フォンセが扉をゆっくりと押し開いた。軋む音が静まり返った広間に響く。
「私の話は終わりだ。ほら…お待ちかねだよ」
ちらと視線がソアレの背後にピタリとつくアステールに向けられる。にぃっと口の端に嫌な笑みが浮かんだ。はっとしたその時。
「見ろ…!」
グランツの声に我に返って、前方に目を向けた。そこには玉座に座るテネーブルの姿があった。
「ああ…。来たのか? ソアレ…」
確かに声はテネーブルだったが、それと分かるのは顔だけで、身体は蜘蛛の様に変化していた。思わず息をのむ。
何十本とある手足は触手と言ってもいいだろう。数十メートル四方に伸ばされ、何かを待つように絶え間なく動いていた。
その先には鋭い鎌のような爪が生えているものもある。
皆、テネーブルの異様な姿に、目が釘付けとなった。
「テネーブル…」
ソアレがその名を口にすると。
「ずっと、待っていたよ…。美しく成長したね…。あの時、無理にでも私のものにしておけば良かった…」
ひきつる様な声でクツクツと笑う。
「…なんて、事だ…」
グランツは言葉を失くす。アステールは既にソアレの前へ庇うように立って剣を構えていた。
ブリエは眉間にしわを寄せながらも、同じくソアレの前に進み出る。アウィスはため息をつき。
「なかなかの状態だね…。あれを倒さないといけないんだよね?」
「ああ。だな…」
アウィスのやや緊張感に欠けた言葉に、グランツは気を取り直すと。
「ソアレ、守護の魔法は使えるか?」
「ああ…」
ソアレは直ぐに守護の力で皆を守ると、剣を構えた。
「アウィスとフォンセ様は魔法で奴を一度叩いてもらえますか?」
「いいよ…」
フォンセはすらりとした手を天に掲げると、その手に魔力を集めだした。途端に白い電撃が塊となって現れる。
フォンセの姿を認めると、テネーブルの身体が震えだした。恐怖ではなく怒りからの様だった。
もう人の声を発することはせず、口をぱくぱくと開いては閉じを繰り返している。
代わりにその下にある蜘蛛の口が、シューシューと黒い煙を吐き出しながら威嚇した。
「私も微力ながら──」
アウィスの魔法は風を操るらしい。辺りに大きな渦ができ始める。
「アステールはソアレを援護しろ。ブリエは俺に続け。先に奴の手足を削ぐ。いいか?」
「いつでも」
グランツの問いにアステールはテネーブルから視線を外さず答える。
「はっ」
ブリエもいつでもやれる様、体勢を整えた。
「じゃあ、行くね…」
フォンセは皆が整ったのを見て取ると、玉座を動こうとしないテネーブルに向け、雷を放った。
それに続いて、アウィスも切り裂くような風をテネーブルに向ける。
「ギィイイイ──!」
魔法が直撃し叫び声をあげる。痛みに身体を痙攣させながら、怒りにむやみやたらと触手を振り回し始めた。
「行くぞ!」
グランツが直ぐ傍に迫った、一番長い触手を叩き切る。
テネーブルの身体は分厚い装甲の様な殻で覆われていたが、それを節から砕いた。
声にならない叫び声をテネーブルが上げる。
ブリエもグランツに続き触手を叩き切る。
ソアレは手近な触手を切付け、アステールはソアレを狙う触手を薙ぎ払った。
しかし、その攻撃に弱ることもなく、次々に残された触手が皆を襲う。一方を避ければもう一方から直ぐ別の触手が襲い掛かり。
切れたのは初めの内だけで、避けるのが精一杯。あまりに早い動きに皆、手を焼いた。
「っとに、魔法が使えないな…!」
アウィスも苦手と言っていた剣を手に、テネーブルに斬りかかっていた。そうは言いながらも、剣さばきはアステールにも劣らない。
フォンセもいつの間にか剣を手に、触手を打ち払っていた。
魔法を使いたい所だったが、下手に放てば皆を巻き込む。一旦離れなければ魔法をぶつけることができなかったが、テネーブルはその離れる隙を与えない。
なんとしても爪で切り裂こうと触手を振り回してくる。
ソアレの守護の力がある為、服が裂ける程度で済んでいるものの、なければかなりの切り傷を負った事だろう。
それに、やはり当たれば衝撃を受けるのは避けられない。
「くそ…っ!」
ソアレも剣を手に挑んでいたが、埒があかない。
どうすればいいか──。
目に入った汗を腕で拭っていると、唐突に横合いから触手が襲いかかって来た。
「っ…!」
剣を翳し避けようとするが、襲いかかると思われた長い触手が、ソアレの足首を捕らえた。
「くっ…!」
衝撃で身体が横倒しになる。
引きずられながらその触手を断ち切ろうとするが、動くせいで剣の刃がうまく入らなかった。
「ソアレ!」
アステールが襲いかかる触手を避けながら駆けつけようとするが、テネーブルがその隙を作らせない。
「大丈夫だ…! 何とか──」
ガッと刃が触手に入る。そこから黒い液体が飛び散った。
これで行ける──!
もう一度、そう思い振り上げた右手に突然、硬い毛に覆われた黒い触手が絡んだ。
強い力に思わず剣を取り落とす。
「っ!?」
あっという間に身体が宙を舞い、テネーブルの顔の正面へと連れて行かれた。
両手の自由を奪われ吊り上げられると、足にも更に触手が絡みつく。
黒い胴体に白く浮かぶ顔にはニヤリとした笑みが浮かんだ。
なぜ笑うのかと訝しめば、次に起きた動きにその意図を知る。
触手が裂けた服の布地の間から入り込み、感触を楽しむ様に這い始めたのだ。
明らかに意図を持って蠢くそれに、鳥肌が立った。どろりとした粘液が素肌を伝う。
「っく…っ! ざけんなっ!」
必死に身を捩るが、びくともしない。
逆に締め付けがきつくなり、手首や足に痛みが走る。その間にも楽しむ様に触手が身体中を這い回った。歯を食い縛り、気持ち悪さに耐える。
この…っ、人を何だと思ってる…!
「ソアレ…!」
アステールが跳んで、身体を這いずっていた触手を元から叩き切る。テネーブルがソアレに集中した為、攻撃の手が緩んだのだ。
フォンセは口の端に冷たい笑みを浮かべると。
「テネーブル…。調子に乗りすぎだ。僕を怒らせたね…」
フォンセが右手を掲げ、雷を剣の形に変える。それをソアレの足を拘束していた触手目掛け放った。
「グォォォ…!」
見事命中し、テネーブルは負った痛みにソアレを放し悲鳴をあげた。
「ソアレ…!」
宙に放り出されたソアレを、アステールが床に落ちる寸前に抱き止める。
「大丈夫か?」
「…ん。平気だ。何ともない」
気持ち悪さは残るが、手足に赤いアザがついたくらいだ。
テネーブルは苦しげな声をあげた後、先ほどより更に暴れだした。
悔しかったのか諦めきれないのか、残った触手をソアレに伸ばしてくる。
「させるか…!」
アステールが伸ばされた触手を叩き切り、フォンセが更に雷の刃を放つ。
アウィスの剣が閃き、グランツの重い剣が刃の付いた触手を叩き切った。
ブリエはソアレの後方で、隙あれば襲いかかろうとする触手を叩き落としていた。
テネーブルは叫び声を上げ、ぐわりと闇が増した。その身体が浮腫んだ様に更に巨大化する。
ソアレに向かって伸ばされた触手が、邪魔なアステールを払い除け様とした。
避けきれず、鋭い刃がアステールの脇腹を突き、身体を弾き飛ばす。
「っ!」
アステールが壁に打ち付けられた。
「この…っ!」
皆が離れた僅かな隙に、守りの力を思い切りテネーブルの本体にぶつけた。
それはテネーブルの胴体に命中し、その身体が痙攣しだした。
殺らせない──!
放った後、強い力が内に湧く。力が溢れるように集まるのを感じた。
なんだ? これは──。
不思議に思いながらも、今とばかりに湧き上がる力を次々とテネーブルにぶつけた。
そのたびに胴体は痙攣し次第に触手の動きが弱まっていく。
「よし! 今だ!」
グランツを先頭に、立ち上がったアステールと、ブリエ、アウィスが次々と残された触手を切り落としていく。
「ソアレ! 力を多用するな!」
アステールが触手を切り落としながら諌めるが、ソアレは聞かずに力をその手に溜める。
「平気だ! 力が、勝手に湧くんだ…!」
既に触手はあと数本を残すのみ。
胴体はビクリビクリと痙攣を繰り返し、頭部についた顔は苦痛に歪んでいた。
その目からは、血の涙が流れ出している。
それを目にとめ、思わず手が止まった。
「…テネーブル」
テネーブルとて、途中までは優しい叔父だったのだ。
こんな事になりさえしなければ──。
叔父は今も田舎で穏やかに過ごしていたはず。闇に心を囚われなければ。
と、躊躇いを見せたソアレの肩に、ふわりと手が置かれた。
振り返れば笑んだフォンセがそこにいた。
ソアレに顔を寄せると、その耳元へ囁く。
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ソアレは驚き、フォンセの顔を見つめた。
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